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21~30話
私はそれを知っている【中】
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悪心……たしか、『吐き気』という意味だったはずだ。おじいちゃんがたまに使っていた。
ダンス中に、吐き気に耐えきれなくなった。
それはつまり、衆人環視のダンスホールで…………。
「そんな……」
「王家からもできる限りの賠償はしたが、金で人の噂が消せるわけでもない。相手は社交界から姿を消し、婚約者候補の話も立ち消えた」
「…………」
「すべて俺の無配慮が招いたことだ。そんな俺と踊りたいなどと考える令嬢はいないし、俺にとってもその方が都合がいい。もう同じ過ちを繰り返さないために」
大きな手のひらをずらして、むくりと起き上がる。
「ヒナ?」
胸板の上をずんずんと歩いて鎖骨の中央に立つと、クロの顎に手をついて顔を覗き込んだ。
「もし私が体調を崩したときは、限界になる前にちゃんと言いますからね! クロはただ、私の話を聞いててくれれば大丈夫ですから!」
「…………」
「これでもかなり体力に自信はあるし、走り込みを重ねて自分の限界も把握してます! だから、安心して側にいてくださいね!」
ゆっくりと持ち上がった両手に、すっぽりと抱きしめられる。
クロは私を抱きしめたまま、愛おしげに頬を擦り寄せた。
「ヒナ……、どれほど俺を夢中にさせれば気が済むんだ」
すりすりと、頬擦りされる。
高い鼻先で頬をくすぐられ、熱い唇が腹部に――。
ちゅっ
「ひゃっ!? クロっ! 今お腹にキスしたでしょう!」
「さあ、触れてしまっただけじゃないか?」
「だって『ちゅっ』って……!」
「ヒナが可愛すぎるのがいけない」
「やっぱりわざとじゃないですか!!!」
やいやいと、夜は更けていく。
「こちら、頼まれていたお品です」
執務室を訪れたヤシュームは、執務机の上で雑用をこなす私にもペコリと会釈して、可愛らしくラッピングされた包みをクロの前に置いた。
私がドールハウスで使っているベッドくらいはありそうな、大きな包み。
しかしヤシュームからクロへのプレゼントにしては、ずいぶん乙女趣味というかなんというか……。
「ヒナ、開けてみてくれ」
「えっ」
ダンス中に、吐き気に耐えきれなくなった。
それはつまり、衆人環視のダンスホールで…………。
「そんな……」
「王家からもできる限りの賠償はしたが、金で人の噂が消せるわけでもない。相手は社交界から姿を消し、婚約者候補の話も立ち消えた」
「…………」
「すべて俺の無配慮が招いたことだ。そんな俺と踊りたいなどと考える令嬢はいないし、俺にとってもその方が都合がいい。もう同じ過ちを繰り返さないために」
大きな手のひらをずらして、むくりと起き上がる。
「ヒナ?」
胸板の上をずんずんと歩いて鎖骨の中央に立つと、クロの顎に手をついて顔を覗き込んだ。
「もし私が体調を崩したときは、限界になる前にちゃんと言いますからね! クロはただ、私の話を聞いててくれれば大丈夫ですから!」
「…………」
「これでもかなり体力に自信はあるし、走り込みを重ねて自分の限界も把握してます! だから、安心して側にいてくださいね!」
ゆっくりと持ち上がった両手に、すっぽりと抱きしめられる。
クロは私を抱きしめたまま、愛おしげに頬を擦り寄せた。
「ヒナ……、どれほど俺を夢中にさせれば気が済むんだ」
すりすりと、頬擦りされる。
高い鼻先で頬をくすぐられ、熱い唇が腹部に――。
ちゅっ
「ひゃっ!? クロっ! 今お腹にキスしたでしょう!」
「さあ、触れてしまっただけじゃないか?」
「だって『ちゅっ』って……!」
「ヒナが可愛すぎるのがいけない」
「やっぱりわざとじゃないですか!!!」
やいやいと、夜は更けていく。
「こちら、頼まれていたお品です」
執務室を訪れたヤシュームは、執務机の上で雑用をこなす私にもペコリと会釈して、可愛らしくラッピングされた包みをクロの前に置いた。
私がドールハウスで使っているベッドくらいはありそうな、大きな包み。
しかしヤシュームからクロへのプレゼントにしては、ずいぶん乙女趣味というかなんというか……。
「ヒナ、開けてみてくれ」
「えっ」
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