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21~30話

私はそれを知っている【下】

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 私が開けてしまってもいいものなのだろうか?
 不安に思ってヤシュームを見上げれば、無言でコクリと頷いてくれる。

 それならばと、愛らしい花型のリボンに手をかけた。

「――――わっ、すごい! お洋服がいっぱい入ってますよ!!」

 包みの中から出てきたのは、私サイズの服の山。
 シャツにワンピース、帽子や靴の小物から、ドレスまである。

 フリルたっぷりの服でも甘すぎず、シンプルな服にも可愛らしさがあって、どれも素敵なデザインばかり。
 両手で摘まんで肩に当ててみれば、丈の長さもぴったりだ。

「これ全部、私が貰っちゃっていいんですか!?」

「ああ。いらないと言われても、俺には着られないしな」

 そんな冗談を言いながら、クロも嬉しそうに目を細めている。

「ありがとうございます……! どれもみんな可愛くて、とっても、とっっっっっても嬉しいです!!!」

「それはよかった」

 満面の笑みを浮かべ、クロと見つめ合う。
 しばらくそうして見つめ合っていると、コホンと咳払いが聞こえた。

「大変仲がおよろしいようで、結構なことでございます」

「……そう思うなら邪魔をするな」

「しかし殿下、もう期限は迫っております。早く例の物を見つけ、結婚相手を――」

「ヤシューム」

 凄むような低い声に、ビクリと言葉が途切れた。
 しかしそれも束の間。ヤシュームは意を決したようにキッとクロを見つめ返すと、思いの丈をぶつけるように言葉を続けた。

「私は貴方様に王になっていただきたいのです! 結婚の相手が見つからず廃太子になどされてほしくはないのです! 僅かでも可能性があるのならば諦めたくありません! どうか! どうか今一度、例のをお探しください!!」

 クロに歯向かうことへの緊張が大きいのだろう。ヤシュームが、ぜぇぜぇと肩で息をする。

「…………指輪?」

「……王家に伝わる秘宝だ。ただの迷信だろうが、『運命の相手へ導く』という言い伝えがある」

 指輪と聞いて、一瞬何かを思い出しかけたような……。
 なんだっただろう。喉の奥に引っ掛かっているようなもどかしさがある。

「……どんな指輪なんですか?」

「『よいく光』という名で、星を散らしたような黒い宝石いしが付いた金の指輪だ」

「へぇー……」

 星を散らしたような黒い宝石……。
 金の指輪……。

「――――――――あ゙っ」
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