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31~40話
世界の始まりを迎える指輪【下】
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「この指輪の名は『宵明く光』。世界の始まりの光を意味している。――にも関わらず、宝石が闇色をしていることがずっと不思議だった」
とうとう話が指輪のことに及び、ぐっと身構える。
お腹に力を込めて、何を言い渡されても心臓が飛び出してしまわないよう歯も食いしばっておく。
「しかし、この透明になった宝石を見てようやくわかった。これこそがこの指輪の本来の姿なのだろう。――光の名を冠し、運命の相手へ導くという、闇色の指輪。それはつまり――」
ゴクリと、喉を鳴らしたのは誰だったろうか。
「運命の相手が触れることで、『世界の始まりを迎える』指輪だったということだ」
運命の相手。
世界の始まり。
本来の指輪の姿。
クロの言葉を頭の中で反芻しながら、まじまじとクロの持つ指輪を見つめる。
「………………つまり…………私より先に、誰かが指輪に触ってたってことですね……?」
「どうしてそうなる」
クロがじとりと私を見つめる。
うむ、やはりそう都合よく別の真犯人は出てこないか……。
「指輪はヒナが触れた瞬間変化したと言ったな」
「はい……、内側から光るみたいにパァッと……」
「ならば、俺の『運命の相手』は決まっているだろう」
「……?」
長引く緊張感に動きの鈍くなった思考をカタコトと巡らせながら、目の前に差し出された手のひらに無意識に乗り込む。
気が付けば、いつものようにクロの顔の高さへと持ち上げられて、じっと顔を覗き込まれていた。
「当事者の意思を度外視したような『運命』という言葉はあまり好きではないが……。やはり俺の相手は、ヒナしかいないということだ」
ちゅ、と頬に口づけが落ちると同時に、「ひゃっ」と小さな悲鳴が上がった。
クロの視線が、すいと悲鳴の主に移る。
「ヤシューム、父上と話がしたい」
「ひっ、はっ、はひ! かしこまりました! ただちに確認して参ります……っ!」
赤い顔をしたヤシュームは、転げるようにソファを下りて執務室を飛び出していった。
二人きりの部屋のなか、カタコト、カタコト、思考を回す。
「私が、クロの、『運命』……?」
「ああ」
「指輪の弁償は……?」
「ふっ、なぜそんなことをする必要がある。運命の相手が見つかり、しかもそれがヒナだったんだ。こんなに喜ばしいことはない」
「……私、死刑になりませんか……?」
「そんなことは絶対に起こりえない。例えヒナが、この指輪を壊していたのだとしてもだ」
その言葉を聞いた途端、ずっと張り詰めていた身体中の空気が抜けた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ…………よかった……」
とうとう話が指輪のことに及び、ぐっと身構える。
お腹に力を込めて、何を言い渡されても心臓が飛び出してしまわないよう歯も食いしばっておく。
「しかし、この透明になった宝石を見てようやくわかった。これこそがこの指輪の本来の姿なのだろう。――光の名を冠し、運命の相手へ導くという、闇色の指輪。それはつまり――」
ゴクリと、喉を鳴らしたのは誰だったろうか。
「運命の相手が触れることで、『世界の始まりを迎える』指輪だったということだ」
運命の相手。
世界の始まり。
本来の指輪の姿。
クロの言葉を頭の中で反芻しながら、まじまじとクロの持つ指輪を見つめる。
「………………つまり…………私より先に、誰かが指輪に触ってたってことですね……?」
「どうしてそうなる」
クロがじとりと私を見つめる。
うむ、やはりそう都合よく別の真犯人は出てこないか……。
「指輪はヒナが触れた瞬間変化したと言ったな」
「はい……、内側から光るみたいにパァッと……」
「ならば、俺の『運命の相手』は決まっているだろう」
「……?」
長引く緊張感に動きの鈍くなった思考をカタコトと巡らせながら、目の前に差し出された手のひらに無意識に乗り込む。
気が付けば、いつものようにクロの顔の高さへと持ち上げられて、じっと顔を覗き込まれていた。
「当事者の意思を度外視したような『運命』という言葉はあまり好きではないが……。やはり俺の相手は、ヒナしかいないということだ」
ちゅ、と頬に口づけが落ちると同時に、「ひゃっ」と小さな悲鳴が上がった。
クロの視線が、すいと悲鳴の主に移る。
「ヤシューム、父上と話がしたい」
「ひっ、はっ、はひ! かしこまりました! ただちに確認して参ります……っ!」
赤い顔をしたヤシュームは、転げるようにソファを下りて執務室を飛び出していった。
二人きりの部屋のなか、カタコト、カタコト、思考を回す。
「私が、クロの、『運命』……?」
「ああ」
「指輪の弁償は……?」
「ふっ、なぜそんなことをする必要がある。運命の相手が見つかり、しかもそれがヒナだったんだ。こんなに喜ばしいことはない」
「……私、死刑になりませんか……?」
「そんなことは絶対に起こりえない。例えヒナが、この指輪を壊していたのだとしてもだ」
その言葉を聞いた途端、ずっと張り詰めていた身体中の空気が抜けた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ…………よかった……」
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