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41~50話

くすぐったいものはくすぐったい【上】 ※

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 ぴちゃぴちゃという微かな水音が静寂に溶ける。

 全身を味わい尽くそうとするかのように這いまわるクロの舌に、背筋が浮き、身をよじれば、逃がさないとばかりにがっちりと抱きしめられて。
 鎖骨の窪みをもてあそんだ舌が再び胸元に差し掛かると、不意に下腹がきゅんと疼いた。

 ――ち、違うの! これは期待してるとかじゃなくって! そりゃあ確かに気持ちよかったけど、もう弄られすぎてじんじんしてるし……!

 頭の中で必死に言い訳を並べていると、あむあむと柔肉を食んだ唇がゆっくり先端に近づいて――――

 ちゅっ

「っ!」

 ついばむような口づけに、びくんと大袈裟に胸が跳ねた。

 さらなる刺激を期待するかのようにピンと張り詰めて待つ突起には気付かないまま、クロの唇が胸の下へと移動していく。

「ぁ……」

 ほっとしたような……、残念なような……って違う違う!

 快感の芯に触れそうで触れない、ゆるやかでもどかしい心地よさが身体の内にとぐろを巻く。
 いたずらにヘソをほじった舌がぬるりとわき腹へ下りると、私はたまらず声を上げた。

「待っ、ダメっ、そこ! くすぐっ――ふひゃっ、あはっ、あっははははは!」

 じたばたと身をよじってクロの舌を逃れる。

 わき腹はダメだ! 手で撫でられるのは耐えられたけど、舐められるのは無理! くすぐったすぎて無理!!

「わき腹が弱いのか?」

「そうみたいで――――へっ?」

 横向きに丸まってお腹を抱え、未だそわそわとまとわりつく余韻にひぃひぃと打ち震えていると、腰を掴んでコロリとうつ伏せにされた。

 肩甲骨の間にちゅ、と口づけが落ちる。
 ちゅ、ちゅ、と軽く口づけながら移動した唇は、ギリギリの境界を見極めるかのように背中とわき腹の境目に何度も口づけを降らせた。

「うゃ、ふっ……、んん……」

 くすぐったさを感じる寸前の、そわそわと微かな緊張感を孕み、ジリジリと焦がれるような。

 うつ伏せにされては身体を反らすこともできず、皮膚の内側を這い上がるうずきから逃れようと無意識に腰が浮く。
 もどかしさの奥に何かを探るかのように、何度となく執拗に口づけられて。

「――ひゃうっ!」

 とどめを刺すようにべろりと舐め上げられれば、くすぐったさだけではない何かがゾクリと身体を走り抜けた。
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