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11~20話

15a、私は買われた理由をわかっていない

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 一人テーブルで待っていたガルは少し不満そうだ。

「何を話していた」

「ただの世間話だって」

 適当に返事をしながらフェンベックも席に着く。
 確かめるようにガルが視線を投げかけてきたので、私もコクコクと首肯しながらガルの膝の上によじ登った。

 もたもたと乗り上げれば、ガルが脇を支えてきちんと横抱きに乗せ直してくれる。

「えーっと……マヤちゃん?」

「?」

「! っと、あー、何でもないや」

 呼びかけられてフェンベックの方を向いた途端、急に冷気に包まれたかのように全身に鳥肌が立った。
 しかしそれは一瞬のことで、何か起こったのかと振り返ればただいつものように仏頂面をしたガルがいるだけだった。

 ……?


 席に着くとすぐにメイドがスフレのようなケーキと湯気の立つ紅茶を供してくれる。
 けれど紅茶は三人分あるにも関わらず、ケーキはフェンベックの前に一つと目の前に一つの二人分だけだ。

 遅れて目の前にもう一つ、シンプルなスコーンの皿が置かれた。
 テーブルの中央には数種類の焼き菓子が大きな皿に並んでいる。

「さ! すぐ萎んじゃうから熱いうちに食って!」

 テーブルから少し離れた所にはウル用のおやつとミルクも用意され、早くも鼻先を突っ込んで夢中で食べていた。

「はい……」

 返事はしてみたものの、どれを食べていいのだろう?

 おもむろにフォークを手にしたガルが、ケーキを切り分け私の口に運んでくれる。
 一つしかないのに私が食べてしまっていいのだろうか?
 フォークを前にチラリとガルを窺うと、ケーキを突つきながらフェンベックが言った。

「あ、ガリュースのことは気にしなくていいよ、甘いもん嫌いなんだ。そいつの分はスコーンあるし」

「え……」

 そうだったのか。
 道理で以前、甘い菓子を食べて顔をしかめていたわけだ。
 嫌いな物を薦めるなんて申し訳ないことをしてしまった。

「ガル様、前にお菓むぐっ」

 無理に菓子を食べさせたことを謝ろうと開いた口は、差し入れられたふわふわのケーキによって塞がれた。

「問題ない」

 咀嚼の必要もないほどやわらかなケーキは舌の上でとろけ、優しい甘みが口いっぱいに広がっていく。
 ガルには、私が何を言おうとしたかがわかっているようだ。

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