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81~90話

83c、私は多忙の理由をわかっていない

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………………


「マヤ、いってくる」

ちゅ、と唇にキスが落ちる。

「……んん……、ガルさま……」

重い瞼を持ち上げて目を瞬いた頃にはもう、そこにガルの姿はなかった。

もそもそと上体を起こし、静かな室内を見渡す。

左手に触れるシーツに残った温もりだけが、確かにそこにガルがいたのだと教えてくれた。

…………

「……っよし! 今日は昼寝しておこう! うん!」

落ち込みそうになる気持ちを奮起させベッドから跳ね起きると、まだ起床したばかりだというのに早くも昼寝の予定を立てる。

使用人の人達がせっせと働く中で一人昼寝するのは怠け者の極みのようでどうにも後ろめたさを感じてしまっていたけれど、背に腹は代えられない。

もっとガルとの時間がほしい。
もっと沢山話したいし、もっと沢山触れあいたい。
ガルの負担にはなりたくないけれど、本当は夕食だって、風呂だって、…………。

何はともあれ、メイド長に午後のお茶はいらないと伝えておかなくては。





深夜、静かに帰宅したガルが嬉しそうに目を細める。

「ただいま、マヤ。今日も起きていてくれたのか?」

「おかえりなさいっ! 今日は昼寝をしておいたので、まだ全然眠くありませんよ!」

抱きしめられた腕の中自信満々に宣言すれば、愛おしむように鼻先を擦り合わせられ口付けがもたらされた。

「ん……んぅ、……っぷは! あ、あのっ!」

「うん?」

口付けを解いても尚、すりすりと鼻先で鼻や頬をくすぐられる。

「今日はまだ、お風呂……入ってないんです」

「それは……」

「ガル様と、一緒に……入れたらいいなぁ……って……」

私が言うが早いか、ガルの足はもう風呂場へと向かっていた。
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