ダイヤモンドの星と神 「その名に祈りを込めて、私は歩き出す」

理乃碧王

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心のカタチはボールに乗って

12.

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「今日は色々あったな……」

 今、私は教科書や筆記用具をカバンに入れている。
 そう、授業は終わり帰る準備をしている。
 ちなみに、教室には8時25分59秒で到着してセーフ。(59秒は体感速度)
 朝から続いたドタバタはこうして終わった。

「星里奈!」

 元気のよい声が教室に響く。
 声は一人だがきっと彼女達だ。

「よっス!」
「一緒に帰りましょう」

 やはりそうだ。
 私がふと顔を見上げると、結愛ゆあとひまりがいた。
 この二人は私の小学校時代からの親友だ。
 クラスは別々だが、学校が終わると一緒に帰ることが多い。

「そいや、あんたが廊下走る姿を見たけど遅刻?」
「う、うん……まあ……」
「あんたにしては珍しいわね」

 まずは金沢結愛。
 とても元気で明るい子だ。
 セミロングの髪型がよく似合い、小顔で背は私より高い。
 街で何度か、読者モデルにスカウトされたこともあるほど可愛い子だ。
 ただ、家が厳しくて猛反対され断念したそうだ。

「ちゃんと寝てる?」
「ど、どちらかというとぐっすりと」
「体には気をつけてね」

 そして、進藤ひまり。
 結愛とは対照的に物静かで大人しい。
 長めのボブカットで、メガネをかけた見た目はザ・文学少女。
 勉強でわからないところがあれば教えてもらっている。

「ところで星里奈、帰りにグリーンハーバーに寄らない」
「グリーンハーバー?」

 結愛のいうグリーンハーバーとはカフェチェーンのことだ。
 帰り道にあり、何かとあれば行っているけど……。

「急に何で?」

 私の言葉にひまりが耳打ちする。

「いつものアレよ」
「なるほど……」

 私は結愛の顔を見る。

「金髪のダブルっぽいイケメンを見たのよ!」

 結愛は面食いだった。
 どこかにイケメンがあるという情報をきけば駆けつける。
 結愛は将来、記者か探偵になったほうがいいと思う。

「星里奈とひまりも興味あるでしょ?」
「は、はあ……」
「う、うん」

 私とひまりは渋々ついていくことにした。

***

 グリーンハーバーに到着した私達。
 全員『和三盆わさんぼん×甘糖楼かんとうろう=恋の浪漫ロマンフラペチーノ』をテーブルに置いている。
 和風を意識した豆乳ベースのフラペチーノで、和三盆糖とキャラメルソースがトッピングされている。
 グリーンハーバーの新メニューとのことで注文した。

「……凄い名前ね」

 私の一言にひまりはメガネをクイと上げる。

「昭和期の劇画っぽい名前でいいと思いますよ。センスがあります」
「ひ、ひまり、そんなキャラだったの」
「え? ち、違いますよ……その……うふふふっ!」

 ひまりは笑ってごまかしている。
 昔からそうだけど、ひまりは絶対裏の顔がある。

「イケメン! イケメン!」

 一方の結愛はイケメン探しに躍起だ。
 店に入った時からずっと周りを見渡している。
 まるでバードウォッチングのようだった。

「で……イケメンは見つかった?」
「うう……」
「どんな人なのよ」
「金髪のダブルっぽいイケメン!」
「それは聞いたわ。他に特徴は?」
「ストローハットに、派手なシャツを着ていたわ」
「あっ……」

 どこかで聞いたような特徴だ。
 まさか神さん? いやそんなことは……。

「あれ? 星里奈ちゃんじゃないか」

 と思っていると声が聞こえた。
 この爽やかでありながらも、どこか胡散臭い声は聞き覚えがある。

「今日は友達と一緒かい?」

 真後ろの席からパーテーション越しに、見覚えのある顔を覗かせた。
 ああ、やっぱりそうだ。

「やっぱり神さん」
「ん? やっぱりって?」
「いや……ちょっと……神さんはここで何を?」
「見ればわかるだろ。昼下がりのコーヒーブレイクさ」

 見ると確かに、神さんの手にはコーヒーカップが握られている。

「あーっ! あっあっあーっ!」

 そして、この獲物を狙っていた結愛。
 興奮した状態で私に話しかけてきた。

「この人! このモデルみたいな人よ! 違う! アイドルみたいな人よ! ノンノンノン! このハリウッドスターみたいな人よ!」
「お、落ち着きなよ」
「これが落ち着いてられますか! そうです! この人です! このお方です! この貴公子です!」

 やっぱりそうか、結愛が見たイケメンは神さんだ。
 私はこの肉食系女子に「どうどう」とさせながら落ち着かせる。
 一方、ひまりは対照的に冷静だ。

「お知り合いですか?」
「う、うん。私の隣に引っ越してきた」

  と答えると結愛は私の両肩を掴む。

「な、何よ! そのご都合展開!」
「そ、そんなこと言われても……」
「こんなイケメンが隣に住むなんて理不尽だーっ!」

 わちゃわちゃと騒がしい私達。
 店にいるお客さんの何人かはこちらを見て笑っている。

「うるさい」

 それとは逆に怒る人もいる。
 男の人だ。
 真横の席から私達を睨みつける。
 灰色のフード付きパーカーを着用し、顔はフードで見えないようにしていた。

「じ、次郎……怒るなよ」

 席にはガタイの良い男性が一緒に座っていた。
 私はその顔を一度テレビで見たことがある。

(伊能寿志さんだ!)

 ヒーローズのマスコット、グービルくんのスーツアクターだ。
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