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第二章 運命の出会いは突然に?(2)
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商業ギルドへの加入テストは、筆記と面接からなっていた。
受付嬢曰、簡単な内容と教えられたアルシオーネは、緊張した面持ちで午後から行われるテストを受けるためギルド内の一室に来ていた。
そこには、アルシオーネと同様にテストを受ける受験生がソワソワとした面持ちで椅子に座っていた。
指示された席にアルシオーネが着いてすぐにテストは開始された。
テストの内容は、歴史や各領地の特産品についてや、一般知識だった。
分かる範囲で回答を用紙に書き込みつつも、歴史や一般知識はともかく、他所の領地の特産品などの知識を持っていないアルシオーネは、次第に沈んでいった。
何とか半分以上を書き込みはしたが、受かる自信は全くもってなかった。
肩を落として、面接会場に移動したアルシオーネを待っていたのは、ギルドマスターとサブマスターの二人だった。
サブマスターは、とても美しい人だったが、男性にも女性にも見える不思議な印象の持ち主だった。
自己紹介の際声を聞いたが、ハスキーな声音で、どちらともとれる不思議な声だった。
緊張の面持ちで質疑応答に応えるも、エグいまでの訛りの所為で会話が嚙み合わず、ギルドマスターは、内心「やべー、こりゃぁ、お嬢ちゃんは落ちたかもしれねぇ」と、セバスティアンの鬼の形相を思い浮かべて嫌な汗を全身に掻いていたことを知らないサブマスターは、厳正なる基準にのっとって、アルシオーネの不合格を口に出したのだった。
試験の段階で自分が不合格になるだろうことは目に見えていたアルシオーネは、残念に思いつつもそれを受け入れていた。
テスト後、あっさりと商業ギルドを立ち去ろうとしたアルシオーネをギルドマスターは、幾分か顔色を悪くして引き留めたのだ。
そして、掠れる声で提案したのだ。
「あぁ、お嬢ちゃん。なんだ、知り合いからの紹介だし、ちょっとは俺に世話をさせてくれよ」
その言葉を聞いたサブマスターは、鬼のような形相でギルドマスターを睨みつけたが、サブマスターよりも狂犬セバスティアンの方が恐ろしいと思っているギルドマスターは、それに構わずに言葉を続けていた。
「お嬢ちゃんは、商売がしたくて領地を出て遥々王都に来たんだろう? 商業ギルドではな、ギルドに加入してない者にも商売をする場所を提供している。まぁ、場所料をもらうけどな。それと、住む場所はあるのか? ないなら俺の方で用意してもいい」
その言葉を聞いたアルシオーネは、熊のような見た目のギルドマスターの意外な気遣いに驚きつつも柔らかな微笑みを浮かべたのだ。
それを見たギルドマスターは、胸の奥がきゅんとするのを感じて、狂犬セバスティアンが惚れこむのも無理はないなと思っていたが、それよりも隣にいるサブマスターが小刻みに震えだすのを横目に見て、肝が冷えていくのを感じた。
まさか、商業ギルドの長たるギルドマスターが誰か一人に肩入れするなどあってはならないと切れられる姿が脳裏をかすめた瞬間、言い訳を口にしようとしたのだ。
しかし、言い訳を口にする前に、サブマスターが口を開いていたのだ。
「なななな……なんて可愛いのかしら……。微笑み一つであの可愛さ……。くっ!! 駄目よ、あたしはここのサブマスなんだから……。でも、あの子の力になりたいと思うのは……。そうよ、ちょっと、ほんのちょっとだけなら……」
そんなことを口走るサブマスターを見て、自分と同様に目の前の田舎娘に惚れこんだ者がすぐ横にいたことをギルドマスター知ったのだった。
ギルドマスターからの提案を聞いたアルシオーネは、微笑みながらもお礼を口にしていた。
「ありがとうごぜますだ。よろしくしてけっろ。だば、住む場所はでいじょうぶだば、軒下だけかしてけれ」
(ありがとうございます。どうそよろしくおねがいしますね。あっ、でも住む場所はあてがあるので大丈夫ですので、商売ができる場所をお借りできるだけで助かります)
エグい訛りながらも、何とかアルシオーネの言いたいことを読み取ったギルドマスターは、豪快な笑顔を見せた後に、露店の空き場所を提供する言ったのだ。
そして、一日の売り上げの一割を支払うことでその場所を使ってもいいという契約もすぐになされたのだった。
アルシオーネは、笑顔でお礼を言って、明日から露店で薬の販売を開始すると言って、いくつか持っていた薬をサンプルとしてギルドマスターに渡してその場を後にしたのだった。
アルシオーネが去った後に、渡された薬瓶を見てギルドマスターは、心配そうに表情を歪めていた。
それを見たサブマスターもギルドマスターの懸念を理解しそれを口にしたのだ。
「薬……。回復薬の販売ね。はぁ、ここで回復薬の販売で稼ぐのはちょっと厳しいかもしれないわね。それに、あの訛り……。エグい訛りはやばいわよ」
「ああ。そうだな。なんていっても、ここは王都なんだ。最新の研究がされた薬の類が出回っている。お嬢ちゃんの薬が通用するのか……。それに、会話も儘ならない状態では商売も難しいだろうな……」
「ええ。ところで、その薬、ちょっといいかしら」
そう言って、ギルドマスターの手の中にある薬を指さしたサブマスターは、いいことを思い付いたとばかりに怪しげな笑みを浮かべたのだ。
「それを解析して、あの子に改良点を教えてあげれば、少しは良くなると思うのよ」
それはいい案に思えたが、ギルド未加入の相手にやっていい範囲を超えているような気がしたギルドマスターが言い淀んでいると、サブマスターは、片目を瞑って生き生きとした笑顔で言ったのだ。
「あたしは、この世に生きる全ての可愛いの味方よ? それに、これはあたし個人か勝手にやる趣味みたいなものよ。解析も改良もあたしのお金でやるから、あんたはなにも心配なんてしなくてもいいのよ。あたしに任せればいいの。そして、次からは、あの可愛い天使ちゃんはあたしが対応するからね」
それを聞いたギルドマスターは、サブマスターが本気でアルシオーネを気に入ったことを知って、深くため息を吐いたのだ。
そう、このサブマスターは、可愛いもの好きが行くところまで行って、一周まわって思い返したかのように反転したような、少し捻くれた性根を持っているのだ。
気に入った相手にはトコトンまで優しく甘やかし、もしその相手を傷つけるような者がいれば容赦しないところがあるのだ。
この先、問題だけは起こしてくれるなよと祈りつつも、ギルドマスター自身もアルシオーネに肩入れしまくりなのを自覚していないのだった。
受付嬢曰、簡単な内容と教えられたアルシオーネは、緊張した面持ちで午後から行われるテストを受けるためギルド内の一室に来ていた。
そこには、アルシオーネと同様にテストを受ける受験生がソワソワとした面持ちで椅子に座っていた。
指示された席にアルシオーネが着いてすぐにテストは開始された。
テストの内容は、歴史や各領地の特産品についてや、一般知識だった。
分かる範囲で回答を用紙に書き込みつつも、歴史や一般知識はともかく、他所の領地の特産品などの知識を持っていないアルシオーネは、次第に沈んでいった。
何とか半分以上を書き込みはしたが、受かる自信は全くもってなかった。
肩を落として、面接会場に移動したアルシオーネを待っていたのは、ギルドマスターとサブマスターの二人だった。
サブマスターは、とても美しい人だったが、男性にも女性にも見える不思議な印象の持ち主だった。
自己紹介の際声を聞いたが、ハスキーな声音で、どちらともとれる不思議な声だった。
緊張の面持ちで質疑応答に応えるも、エグいまでの訛りの所為で会話が嚙み合わず、ギルドマスターは、内心「やべー、こりゃぁ、お嬢ちゃんは落ちたかもしれねぇ」と、セバスティアンの鬼の形相を思い浮かべて嫌な汗を全身に掻いていたことを知らないサブマスターは、厳正なる基準にのっとって、アルシオーネの不合格を口に出したのだった。
試験の段階で自分が不合格になるだろうことは目に見えていたアルシオーネは、残念に思いつつもそれを受け入れていた。
テスト後、あっさりと商業ギルドを立ち去ろうとしたアルシオーネをギルドマスターは、幾分か顔色を悪くして引き留めたのだ。
そして、掠れる声で提案したのだ。
「あぁ、お嬢ちゃん。なんだ、知り合いからの紹介だし、ちょっとは俺に世話をさせてくれよ」
その言葉を聞いたサブマスターは、鬼のような形相でギルドマスターを睨みつけたが、サブマスターよりも狂犬セバスティアンの方が恐ろしいと思っているギルドマスターは、それに構わずに言葉を続けていた。
「お嬢ちゃんは、商売がしたくて領地を出て遥々王都に来たんだろう? 商業ギルドではな、ギルドに加入してない者にも商売をする場所を提供している。まぁ、場所料をもらうけどな。それと、住む場所はあるのか? ないなら俺の方で用意してもいい」
その言葉を聞いたアルシオーネは、熊のような見た目のギルドマスターの意外な気遣いに驚きつつも柔らかな微笑みを浮かべたのだ。
それを見たギルドマスターは、胸の奥がきゅんとするのを感じて、狂犬セバスティアンが惚れこむのも無理はないなと思っていたが、それよりも隣にいるサブマスターが小刻みに震えだすのを横目に見て、肝が冷えていくのを感じた。
まさか、商業ギルドの長たるギルドマスターが誰か一人に肩入れするなどあってはならないと切れられる姿が脳裏をかすめた瞬間、言い訳を口にしようとしたのだ。
しかし、言い訳を口にする前に、サブマスターが口を開いていたのだ。
「なななな……なんて可愛いのかしら……。微笑み一つであの可愛さ……。くっ!! 駄目よ、あたしはここのサブマスなんだから……。でも、あの子の力になりたいと思うのは……。そうよ、ちょっと、ほんのちょっとだけなら……」
そんなことを口走るサブマスターを見て、自分と同様に目の前の田舎娘に惚れこんだ者がすぐ横にいたことをギルドマスター知ったのだった。
ギルドマスターからの提案を聞いたアルシオーネは、微笑みながらもお礼を口にしていた。
「ありがとうごぜますだ。よろしくしてけっろ。だば、住む場所はでいじょうぶだば、軒下だけかしてけれ」
(ありがとうございます。どうそよろしくおねがいしますね。あっ、でも住む場所はあてがあるので大丈夫ですので、商売ができる場所をお借りできるだけで助かります)
エグい訛りながらも、何とかアルシオーネの言いたいことを読み取ったギルドマスターは、豪快な笑顔を見せた後に、露店の空き場所を提供する言ったのだ。
そして、一日の売り上げの一割を支払うことでその場所を使ってもいいという契約もすぐになされたのだった。
アルシオーネは、笑顔でお礼を言って、明日から露店で薬の販売を開始すると言って、いくつか持っていた薬をサンプルとしてギルドマスターに渡してその場を後にしたのだった。
アルシオーネが去った後に、渡された薬瓶を見てギルドマスターは、心配そうに表情を歪めていた。
それを見たサブマスターもギルドマスターの懸念を理解しそれを口にしたのだ。
「薬……。回復薬の販売ね。はぁ、ここで回復薬の販売で稼ぐのはちょっと厳しいかもしれないわね。それに、あの訛り……。エグい訛りはやばいわよ」
「ああ。そうだな。なんていっても、ここは王都なんだ。最新の研究がされた薬の類が出回っている。お嬢ちゃんの薬が通用するのか……。それに、会話も儘ならない状態では商売も難しいだろうな……」
「ええ。ところで、その薬、ちょっといいかしら」
そう言って、ギルドマスターの手の中にある薬を指さしたサブマスターは、いいことを思い付いたとばかりに怪しげな笑みを浮かべたのだ。
「それを解析して、あの子に改良点を教えてあげれば、少しは良くなると思うのよ」
それはいい案に思えたが、ギルド未加入の相手にやっていい範囲を超えているような気がしたギルドマスターが言い淀んでいると、サブマスターは、片目を瞑って生き生きとした笑顔で言ったのだ。
「あたしは、この世に生きる全ての可愛いの味方よ? それに、これはあたし個人か勝手にやる趣味みたいなものよ。解析も改良もあたしのお金でやるから、あんたはなにも心配なんてしなくてもいいのよ。あたしに任せればいいの。そして、次からは、あの可愛い天使ちゃんはあたしが対応するからね」
それを聞いたギルドマスターは、サブマスターが本気でアルシオーネを気に入ったことを知って、深くため息を吐いたのだ。
そう、このサブマスターは、可愛いもの好きが行くところまで行って、一周まわって思い返したかのように反転したような、少し捻くれた性根を持っているのだ。
気に入った相手にはトコトンまで優しく甘やかし、もしその相手を傷つけるような者がいれば容赦しないところがあるのだ。
この先、問題だけは起こしてくれるなよと祈りつつも、ギルドマスター自身もアルシオーネに肩入れしまくりなのを自覚していないのだった。
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