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魔法薬を買い取ってもらったトレアが店を出ようとすると、マーラカにそれを引き留められた。
「おっと、ちょいまち。トレアちゃんに会いたいって人がいるんだけど……。どうかな? 俺っちが世話になってるお方の友人にあたる人なんだが……」
マーラカの言葉に、トレアはびくりと震えたのは一瞬だったが、それを見逃すマーラカではなかった。
「わりぃな。嫌なら断ってくれていい。俺っちがそこは、ちょちょっと上手くやっとくからさ」
マーラカの表情からは伝わってこないが、なんとなく断りづらい相手からの要望なのはひしひしと伝わってくる。
どうしようかと悩みつつもトレアが口を開こうとしたのと同時に、背後の扉がゆっくりと開く。
そして、外から入る陽の光になんとなく振り返ったトレアは、目を丸くさせて小さく唇を震わせた。
入口を塞ぐようにして立っていたのは、ハニーブロンドの髪と瑠璃色の瞳の美しい男性だった。
トレアが見上げるほど背の高いその人を見て、動揺で瞳が揺れるのを止められなかった。
それでも、視線が外せないでいたトレアと、美しい男性の瑠璃色の瞳が絡み合う。
「君……」
そう小さく呟いた美しい男性は、自分よりも頭二つ半も小さなトレアを見て、すかさずトレアの小さな手を握る。
そして、その長身をかがめてトレアの耳元に唇を寄せて甘い声で言うのだ。
「やっと見つけた。ヴィオ。もう、逃がせないから」
そう言われたトレアは、掴まれた手を引き抜こうとするもそれが出来ずに、困惑の表情で後退る。
「ごめん。でも、俺が君を見間違うはずない」
「ひ……人違いです。お願いです。手を……手を離してください……」
そう言って、涙の膜が張っている瞳で懇願すると、美しい男性……ヴィラジュリオは、慌てて強く握ってしまっていた手を緩める。
「悪い。痛かったか?」
その言葉に小さく頭を横に振ったトレアは、その隙にとばかりにヴィラジュリオの拘束からするりと抜け出し、開いていた扉から外に駆け出していた。
そして、真っ赤な顔で去り際に言うのだ。
「ひ、人違いです!! ごめんなさい。ごめんなさい!!」
走り去る小さな背中を追おうとするヴィラジュリオだったが、マーラカによって止められていた。
「殿下、あんな小さな女の子に迫るなんていくら何でも見過ごせませんぜ?」
「えっ? お……んなのこ?」
本気で驚く表情のヴィラジュリオにマーラカは、呆れてしまう。
「何言ってんですか? あんなに可愛い美少女が少年に見えるってんなら、殿下の目の節穴で…………。ちがっ! 違います!! ジュトレイゼの旦那? なんでここに?!」
途中で顔を青くさせたマーラカは、必死になってそう口にしていた。
マーラカの視線の先には、優しい笑みで佇むジュトレイゼが立っていたのだ。ただし、その目は一切笑っておらず、見たものを射殺さんばかりの殺気に満ちていた。
「ははは、マーラカは口の利き方をもう一度学び直した方がいいね」
「ひっ!!」
どこから取り出したのか、教鞭でマーラカの尻をしばくジュトレイゼたちのやり取りなど目に入らない様子で、ヴィラジュリオは先ほどまでトレアの華奢な手を掴んでいた自分の大きな手を見つめて呆然と呟くのだ。
「女の子? 確かにヴィオだった。あの甘い匂い。柔らかい空気。でも、女の子? だったらなんで俺は、普通でいられるんだ?」
「おっと、ちょいまち。トレアちゃんに会いたいって人がいるんだけど……。どうかな? 俺っちが世話になってるお方の友人にあたる人なんだが……」
マーラカの言葉に、トレアはびくりと震えたのは一瞬だったが、それを見逃すマーラカではなかった。
「わりぃな。嫌なら断ってくれていい。俺っちがそこは、ちょちょっと上手くやっとくからさ」
マーラカの表情からは伝わってこないが、なんとなく断りづらい相手からの要望なのはひしひしと伝わってくる。
どうしようかと悩みつつもトレアが口を開こうとしたのと同時に、背後の扉がゆっくりと開く。
そして、外から入る陽の光になんとなく振り返ったトレアは、目を丸くさせて小さく唇を震わせた。
入口を塞ぐようにして立っていたのは、ハニーブロンドの髪と瑠璃色の瞳の美しい男性だった。
トレアが見上げるほど背の高いその人を見て、動揺で瞳が揺れるのを止められなかった。
それでも、視線が外せないでいたトレアと、美しい男性の瑠璃色の瞳が絡み合う。
「君……」
そう小さく呟いた美しい男性は、自分よりも頭二つ半も小さなトレアを見て、すかさずトレアの小さな手を握る。
そして、その長身をかがめてトレアの耳元に唇を寄せて甘い声で言うのだ。
「やっと見つけた。ヴィオ。もう、逃がせないから」
そう言われたトレアは、掴まれた手を引き抜こうとするもそれが出来ずに、困惑の表情で後退る。
「ごめん。でも、俺が君を見間違うはずない」
「ひ……人違いです。お願いです。手を……手を離してください……」
そう言って、涙の膜が張っている瞳で懇願すると、美しい男性……ヴィラジュリオは、慌てて強く握ってしまっていた手を緩める。
「悪い。痛かったか?」
その言葉に小さく頭を横に振ったトレアは、その隙にとばかりにヴィラジュリオの拘束からするりと抜け出し、開いていた扉から外に駆け出していた。
そして、真っ赤な顔で去り際に言うのだ。
「ひ、人違いです!! ごめんなさい。ごめんなさい!!」
走り去る小さな背中を追おうとするヴィラジュリオだったが、マーラカによって止められていた。
「殿下、あんな小さな女の子に迫るなんていくら何でも見過ごせませんぜ?」
「えっ? お……んなのこ?」
本気で驚く表情のヴィラジュリオにマーラカは、呆れてしまう。
「何言ってんですか? あんなに可愛い美少女が少年に見えるってんなら、殿下の目の節穴で…………。ちがっ! 違います!! ジュトレイゼの旦那? なんでここに?!」
途中で顔を青くさせたマーラカは、必死になってそう口にしていた。
マーラカの視線の先には、優しい笑みで佇むジュトレイゼが立っていたのだ。ただし、その目は一切笑っておらず、見たものを射殺さんばかりの殺気に満ちていた。
「ははは、マーラカは口の利き方をもう一度学び直した方がいいね」
「ひっ!!」
どこから取り出したのか、教鞭でマーラカの尻をしばくジュトレイゼたちのやり取りなど目に入らない様子で、ヴィラジュリオは先ほどまでトレアの華奢な手を掴んでいた自分の大きな手を見つめて呆然と呟くのだ。
「女の子? 確かにヴィオだった。あの甘い匂い。柔らかい空気。でも、女の子? だったらなんで俺は、普通でいられるんだ?」
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