錬金術師の恋

バナナマヨネーズ

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第一部

第25話 最高のケーキ

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 サリーさんは、「まだ、しごとがあるのれ」と言って、少しふら付きながら会議室を後にした。残った私達は、再度価格の話に戻っていた。

「買い取り金額については、金100枚で決定です。それに、王子も銀10枚で販売されたと知っても、美味しいものが手に届きやすい値段だと喜んでくれるはずです。それに、失われた【幸福のワイン】を再現させたとなれば、そのこと自体を喜んでくれるお方です。なので、お店で銀10枚で販売していただいて結構です。むしろ、販売をお願いします!!」

 宰相さんは捲し立てる様に言った。ただ、ちょっと必死すぎて引きます。

「わっ、わかりました。ただ、数本提供させてください。1本だけではちょっとアレなので。それと、王子様は甘いものとかお好きですか?」
「数本とな!それはありがたいです。第二王子は大の甘党ですよ。それがどうされましたか?」
「折角なので、お祝のケーキを焼こうと思いまして。あっ、それって大丈夫ですか?」
「ケーキですか?」
「はい。お嫌いだったりしますか?」
「いえ、ケーキは、お嫌いではないですが……。お祝い事には向いていないと思いますが……」
「えっ?あのぅ、ここのケーキってどんなものなんですか?」
「小麦を練ったものを薄く焼いてそれにバターを塗ったものです。料理人にもよりますが、たいてい硬くて、見た目も地味なので、祝いの席で出せれることはないですね」
「……」

 言われたケーキを想像したが美味しくなさそうだと思った。というか、それってケーキじゃないと思うのよね。ケーキと言えば、柔らかくて、ふわふわで、甘くて、可愛いものと相場が決まっている。

 まさに古代ケーキだわそれ。私は、聞いたケーキを勝手に古代ケーキと命名した。そして、ケーキについて説明するため、先ほどサリーさんが食べたケーキの残りを少し切り分けてから宰相さんに差し出した。サリーさんと同じ量を食べて同じ状況にでもなったらこれからの宰相さんのお仕事にかかわると思ってのことよ。まさに、親切心ね!

「宰相さん。さっきサリーさんが食べていたものがケーキの一種です。許可が頂けるのでしたら、王子様には、見た目も鮮やかな物をご用意しますよ」
「ゴクリ。これがケーキですか……(さっきより少ない)」
「熱を通しているのでアルコールは飛んでいると思うのですが、さっきのサリーさんの状態を鑑みて、念のため少量にしました」
「それでは、頂きます」

 そう言って、宰相さんはチーズタルトを一口食べた。

「~~~~~!!こっ、これほど美味な物がこの世にあるとは!!」

 そう言って、残りを一気に平らげた。そして、気のせいだとは思うけど、少し物足りなそうな感じで何かを小声で言った。

「もっと食べたい……。そうだ!」
「どうされました?やっぱり、ケーキはダメですか?」
「いえいえ!是非王子にケーキを!!しかし条件があります」
「条件ですか?もしかして、王子様は食べ物の好き嫌いが多かったりしますか?」
「いいえ、王子は好き嫌いせずに何でも食されます。そうではなく、王子にお出しするケーキについては私が試食をしたうえで、判断させていただきたいのです」
「なるほど、王子の好みに合う最高のケーキを作る為ですね!」
「そうです!最高のケーキを!!!」
((((((あっ、これケーキが食べたいだけだ……))))))
「でも、試食はどこでします?」
「行きますとも!!」
「えっ!わざわざ?悪いですよ」
「いえいえ、宰相と周りに気が付かれないように、誰も付けずに一人で、一般のお客としてお店に伺わせていただきます」
「分かりました。実は、その方が助かります。意見を聞きながらその場で改良も出来ますしね」

 第二王子のために、ここまでしてくれるなんて、とても良い人だわ。まずは、王子様の好みを聞いて、それを元に試作をしましょうか。

「宰相さん。王子様の好きなフルーツってあります?」
「そうですね、イチゴやモモがお好きですね(私も好きです)、それから小春さん、ジョエルでいいですよ。これから(毎日)お忍びでお店に行くのですから、周りに気づかれないように、名前で呼んでください」
((((((まさか、独り占めしたいがために、護衛を付けないつもりか……))))))
「分かりました。それでは、ジョエルさん、ケーキ作りのご協力よろしくお願いしますね」

 ワインについては、最終的に20本納品することになった。ケーキについては、1日は余裕で持つので、前日に納めることになった。

 ギルドを出たところで、駆君はちょっと城に行ってクラスメイト達と話をしてくると言って、城に戻るジョエルさん達と一緒に行ってしまった。私は、タイガ君と今日の夕食は何がいいか話しながら、食材市場に向かったのだった。
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