錬金術師の恋

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
66 / 71
第二部

第66話 温泉とお刺身

しおりを挟む
 駆君は渋々だったけど、サナダさんが教えてくれた宿の中で、一番お風呂が評判の宿にとりあえず泊ることに決定した。
 さらに、親切なことにそこまで案内してくれるというのだ。
 宿に向かいながら、私は札に書いてあった文字と何故異世界から来たのが分かったのかについて質問をした。

「サナダさん、札に書いている文字と、私達のこと……」
「ああ、すみません。説明を忘れていました。札に書かれている文字は日本語ですね。それに異世界から来たと分かった訳ではないのです。この文字が読める人物には、そのように返答するのが我が国の流儀なのです」
「つまり鎌をかけたってことかよ」
「有体に言えば、ですが大抵はこの文字を読むことはできません。読めるのは、日本から召喚されてきた異世界人か、その関係者位ですね」
「それで、何で札に?」
「実は、東の国は日本から召喚された人達が作った国なのです。なので、日本語が使われているという訳です。普段はこの世界の共通文字を使っているのですが、役所関係では日本の文字で書類など作成されているのですよ」
「なるほど、それでその名字か」
「名字?」
「小春は気が付かなかったのか?」
「サナダ……。あっ!もしかして真田?」
「流石、異世界の方。私は真田信繁さなだのぶしげと言います。こちらに滞在中に何かありましたら、何なりとご相談くださいね。姫」
「ひっ!姫!!えっ?わっ私?」
「はい」
「えっと、姫呼びはやめていただきたいです」
「いえいえ」
「やめてください」
「もしかすると、姫は本当に姫かもしれませんから」

 なんだろう?このやりとり。ちょっと疲れるというか、真田さんってちょっと謎の人だわ。

「おい、何のつもりだ!」
「いえいえ、ただ、殿が小春さんを気にいりそうだと思っただけです」
「殿?」
「いえいえ、何でもありません。気にしないで下さい」

 なんだか、これ以上深入りすると大変なことになりそうな気がするからこの話題はスルーするに限るわね。

「駆君、とりあえず気にしないでおこうよ。藪蛇になる予感しかしないよ」
「そうだな。下手にかかわると、とんでもないことに巻き込まれる可能性もあるしな」

 うん。旅行を楽しもう。わざわざ首を突っ込む必要はないわ。そう考えた途端に、タイガ君が、「う~ん。もう手遅れな気がするよ」と言ったのは聞かなかったことにするわ。

 方向性が決まったところで、宿に着いた。
 まさに、高級温泉旅館さながらの外見をしていた。
 真田さんが宿の人に何か言った後に、「それでは、ごゆっくり」と言って帰って行った。
 旅館の人に何を言ったのかは分からないけど、何故かとてもいいお部屋に案内してくれたので、何か口利きしてくれたのかな?

 部屋で一息ついた後に、夜ごはんの前に温泉に入りに行くことにした。
 ここの温泉は、大浴場のほかに、露天風呂もあるようで今回は大浴場にだけ行ってきた。
 露天風呂は、後のお楽しみにしようと思ったからね。
 それに、大浴場も檜風呂や、岩風呂、打たせ湯など、いろいろ楽しむことが出来た。
 一人だったけどね。はぁ。女の子のお友達がいたら、一緒に温泉につかって、感想言い合ったりして楽しそうなのに、私にはいない。何故だ。はぁ。

 お風呂から上がって部屋に戻ると、既に駆君達が戻ってきていた。

「ただいま。二人とも早かったね」
「そうか?普通じゃないか?」
「普通だと思いますよ?それよりも、丁度ご飯が運ばれてきたところですよ」

 そう言われて、部屋に設置してあるテーブルを見るとお料理が所狭しと並んでいた。

「わ~。タイミング良かったみたいね。それに、美味しそう。お刺身もあるのね!」

 そう、テーブルに並んでいるのは和食だった。お刺身は、こっちに来てからは食べていない懐かしいメニューだったので、期待に胸が膨らんだ。
 早速、目の前のお刺身を一口頂く。

「う~ん。美味しい~。お刺身最高~」

 何の魚か分からないけど、マグロに近い味がした。駆君を見ると、美味しそうに食べていた。だけど、タイガ君を見ると、お刺身に全然手を付けていなかった。

「どうしたの?美味しいよ?」
「えっと、これって生ですよね?」
「お刺身だし、そうね」
「火を通さなくても大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ?」

 タイガ君は、大丈夫だと言っても一向に口にしなかった。思い返してみれば、こっちの人って、生で何かを食べているところ見たことがないかも?まぁ、果物とかはそのままだけど、野菜も大抵火を通して食べているみたいだし。抵抗があるのは仕方ないか。
 そこで、アル様が食事について否定的だったことに合点がいった。
 つまり、生魚が口に合わないってことだったんだね。

「タイガ君、無理はしなくてもいいから、食べられそうなものを食べてね」
「はい」
「まぁ、食文化の違いってやつは仕方ないな」
「すみません」
「全然謝ることなんてないんだよ?さあさあ、楽しく食べましょう」

 こうして、東の国一日目は温泉と久しぶりのお刺身に満足しつつ過ぎて行った。
 明日も、温泉に浸かってゆっくりしつつ、街を散策してみよう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

対人恐怖症のメンダーと辺境の騎士 ~この恋は、世界のほころびを繕う~

Moonshine
恋愛
辺境の地・ディトマスの第6要塞の制服管理課で、一人の働く女の子がいた。 彼女の名前はドルマ。仕事はこの要塞で働く騎士達の制服の繕い物だ。 ドルマは対人恐怖症で誰とも話をしない。だがドルマが繕った制服を纏うと、ほんの少しだけ戦闘の時に運が良くなると騎士達の間で評判なのだ。 辺境の防衛責任者として、毎年多くの犠牲者に胸を痛めていた辺境伯の息子・マティアスは、第6要塞にはその年一人も犠牲者が出ていない事に着目して、覆面調査を始める。 小さな手仕事が紡ぐ、静かな恋物語。

巻き込まれて死亡?!神様、責任とってくださいね?

紅子
恋愛
新作のゲームの為に創った魔法陣に魅入られた神様の眷族のせいで、死んじゃった私。別の世界で残りの生を消化しないと、永遠を流離うって、酷くありませんか?剣と魔法の世界で生き残るなんて出来る気がしません。私、一見、平和そのものなあの世界の住人ですよ?原因を作った眷族をつけてくれる?それなら、なんとか・・・・?はぁ、永遠を流離うくらいなら、眷族と一緒になんとか生き残れるように頑張ります! 毎日00:00に更新します。 完結済み R15は、念のため。 自己満足の世界につき、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...