殺戮人形のわたしが敵国の黒騎士様の最愛になるまでの話

バナナマヨネーズ

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第三話 ルーマニア王国とアルマーノ帝国

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 マリカの誕生日の翌日のことだった。
 マリカは、生活のために数日に一度少し離れた場所にある村に薬を売って、そのお金で生活に必要な物を購入していた。
 すでに前日に薬を売り行っていたマリカだったが、この日も村に薬を売りに行くというのだ。
 
「あれ? 今日もなの?」

 今までそんなことが無かったことから、ティアナは小さく首を傾げていた。
 そんなティアナの頭を撫でたマリカは、少しだけ心配そうな表情で言った。
 
「ティアナも知っているよね。五年前に始まった戦争について」

「うん……。アルマーノ帝国と戦争してるんだよね……」

 ティアナの暮らすルーマニア王国は現在、大陸一の国力を持つアルマーノ帝国と戦争をしていた。
 発端は五年前のことだ。
 先代のルーマニア国王が崩御したことが始まりだった。
 新王となったガノドフ・ルーマニアが隣国に突然戦争を仕掛けたのだ。
 それまでのルーマニア王国は、自国の武力を持って他国から利益を得る武力国家だった。
 とはいっても、戦争屋ではなく、武力を持って他国の魔物討伐に協力して対価を得ると言うものだった。
 この世界では、魔物と呼ばれる魔力を持った知性無き動物が生まれることがあった。
 その力は強大で、討伐するのにかなりの兵力を要したのだ。
 そんな中、国民の大半が何らかの戦う手段を持っていたルーマニア王国は、それを対価とすることで国を維持していた。
 と言うのも、ルーマニア王国では農作物の育ちが悪く、食料の大多数を輸入に頼っている状態だった。
 そのため、輸入先となる近隣の国とは出来るだけ友好な関係を築くべく、先代までの王たちは決して武力で攻め入るなどという愚かなことはしなかったのだ。
 しかし、新王はその考えを否定したのだ。
 欲しいのなら奪えばいい。我々にはそれだけの力があるのだから。
 そう言って、突然隣国に攻め入ったのだ。
 長年の友好関係があったため、まさか攻め入られるとは思ってもいなかった隣国は、たった一晩でルーマニア王国によって滅ぼされてしまった。
 そこからは、破竹の勢いで周辺の国々を武力を持って蹂躙していったのだ。
 
 そして、それに対抗すべく回戦から半年後に同盟を組んだ国家たちが大国であるアルマーノ帝国に縋りついたのだ。
 アルマーノ帝国の皇帝は、悩んだ末にルーマニア王国との戦争に腰を上げたのだ。
 しかし、ルーマニア王国の武力は異常としか言えないものだった。
 一人で百人……いや、千人分の武力を持つ兵士で溢れかえっていたことに、アルマーノ帝国は驚愕し、これから始まる長い戦争にどう終止符を打てばいいのかと頭を抱えることとなった。
 
 しかし、いつまでもルーマニア王国の勢いが続くことはなかった。
 流石の大国。数の暴力で武力の質の差を覆したのだ。
 これに焦ったルーマニア新王は、戦争から二年後に奥の手を切った。
 それは、魔法使いの存在だった。
 ルーマニア王国の魔法使いの出生率は、他国の比ではなかった。
 三人に一人は魔法の才能を持つ人間が生まれていた。それは、他国では考えられないほどの出生率だった。
 最初の頃は、軍属の魔法使いの大量投入で戦線を覆していたが、それを上回る兵力で徐々に押され始めたルーマニア王国は、とうとうなりふり構ってはいられないほど追い詰められたのだ。
 
 魔法使い狩り……。
 
 何の訓練も受けていない一般市民の中から魔法使いを強制的に集めて、家族を人質にして無理やり戦争の最前線に送ったのだ。
 そのことから、家族に魔法が使える者がいる人々は、隠れたり、あるいは全てを捨て帝国に亡命する道を選び始めたのだ。
 
 そして、ティアナの暮らす森付近にも魔法使い狩りの脅威が迫ってきていたのだ。
 祖先のやらかしで、気軽にルーマニア王国を出ることができないと思っているマリカはこれまでずっと悩んでいた。
 このまま終戦まで隠れ住むことが出来るのかと。
 そんなこと無理だと早々に答えは出ていたが、それでも思い切ることが出来ずにいた。
 それは、戦争が始まってすぐにアルマーノ帝国がとったとある大規模魔法が原因だった。
 
 
「急に思うかもしれないけど、引っ越しすることにしたのよ」

「……」

 マリカの言葉に、ティアナはすぐに魔法使い狩りの存在を思い浮かべていた。
 頑なに森を離れようとしなかったマリカがそう決意するほど状況は逼迫していることを悟ったティアナは、コクリと頷いて見せた。
 その姿を見たマリカは、娘の賢さに内心驚きつつも謝罪の言葉を口にする。
 
「ごめんね。それで、最後にお世話になっていた村の人たちが困らないように十分な薬を卸すことにしたの。すぐに帰ってくるから、今日は家から出ずに待っていてね」

「うん。待ってる」

「ありがとう。帰ってきたらすぐに出られるように、必要な物をマジックバッグに入れておいてね」

「うん……」

「大丈夫。すぐに帰ってくるから」

 そう言って、マリカは大量の薬の入ったマジックバッグを肩にかけて出かけていったのだ。
 
 不安はあったが、今は荷造りをしてマリカの帰りを待とうと決めたティアナはすぐにマジックバッグに大切なものを詰め始めた。
 
 そして、昼前になった頃だった。

 トントン
 
 玄関の扉を叩く音が聞こえたティアナは、パッと顔を輝かせた。
 思ったよりも早くマリカが帰ってきたことに笑みを浮かべたティアナは、マリカを迎えるべく満々の笑みで玄関まで駆け出していた。
 
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