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第二話 アインソフ辺境伯領④
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それからだった。
ラクレイスとエクレールが肩を並べて戦場に立つようになったのは。
冷静沈着で豪快な剣さばきのラクレイスと、素早さで戦場をかく乱し、あっという間に敵を倒していくエクレールのコンビはアインソフ辺境伯軍の最強の戦力となった。
それだけではなく、エクレールはラクレイスの要望で作戦会議にも参加するようになった。
エクレールの閃きでいくつもの戦いが有利なものになっていったのだ。
そして、エクレールの最大の功績として知られるようになる事件が起こったのは、戦争から三年目のことだった。
長引く戦争で、アインソフ辺境伯家の資金は、底をつきかけていた。そんなアインソフ辺境伯家を救ったのがエクレールが開発した新薬だった。
毎年、秋の終わりから冬にかけて、暗黙の了解とでもいうかのように戦争は一時中断していた。
それは、お互いに少ない収穫の時期を過ごし、厳しい冬を過ごすためにどうしても人手が必要だったからだった。
そんな、わずかの休戦時期にエクレールは、ラクレイスに誘われてアインソフ辺境伯の屋敷にやってきていた。
去年も誘われたが、なんだかんだと理由をつけて断ったのだが、今年はラクレイスの強い希望で少ない休みを共に過ごすこととなったのだ。
「エクレール。短い間だが、屋敷では楽に過ごしてくれ」
「領主様……。でも、やっぱり……」
「遠慮なんてしなくてもいい。屋敷の者はみんな君のことを知っているから、遠慮なんてしなくてもいいんだ。ここを自分の家だと思って、過ごしてほしい」
「……でも。わたしは、雇われ傭兵なのに……」
そう言って、気まずそうにするエクレールの手を取ったラクレイスは、笑顔を見せる。
辺境伯家に仕える使用人たちは、その笑顔に全員が目を丸くさせた。
屋敷の外では、冷血だとか冷たい人間だとか、そんな評判のラクレイスだが、身内には優しい一面を見せることがあった。
しかし、軽く口元を緩めるような表情はするが、目元を和らげ、微笑みを見せるところなど見たことが無かったのだ。
全員がすぐにラクレイスさえも気が付いていない気持ちに気が付く。
気が付いたからには、絶対に逃がさないと全員が一致団結をする。
遠慮しがちなエクレールにあれこれと世話を焼き、アインソフ辺境伯家とラクレイスの印象を良くしようと、全員が協力したのだ。
そんなある日、食事の席でエクレールはラクレイスに聞いたのだ。
「ここの食事はとても美味しいです」
「ああ、料理長が頑張ってくれるおかげだ。食料も少ない中でいろいろと工夫してくれている」
「そうなんですね」
「ああ」
「そういえば、アインソフ辺境伯領のあっちこっちに生えているあの薬草はなんという名前なのですか?」
「薬草? どの植物のことだ?」
「えっと、お庭にもたくさん生えているやつです」
エクレールにそう聞かれたラクレイスは、緩く頭を振って残念そうな表情で言うのだ。
「いいや。残念ながら、あれはただの雑草だ。だが、どこにでも生えてきて、畑を作る際に除草してもすぐに生えてくる。庭にも、勝手にたくさん生えてくるんだ」
「そうなんですか? てっきり……」
途中で言葉を切ったエクレールは、唇に人差し指を当てながら物思いにふける。
そして、ラクレイスに瞳を輝かせてあることを提案したのだ。
「辺境伯様、あれはお金の匂いがします!」
「金の匂い?」
「はい! わたし……、恥ずかしながら、少しばかり薬学の知識がありまして……」
本当に恥ずかしそうにそう言ったエクレールだったが、頬を染めてワクワクした表情で言うのだ。
「あの草でお金儲けをしましょう! わたしに少しだけ時間と場所を貸してください!」
「時間も場所も好きなだけ貸すが……」
「大丈夫です! わたしに考えがあるんです」
そう言ったエクレールは、食事を済ませた後に庭に出て、どこにでも生えている草を採取したのだ。
そして、ラクレイスの目の前でその雑草を食べだしたのだ。
「ちょっ! エクレール? だめだ、腹を壊す。ここにぺっとしなさい」
「大丈夫です。すこし、齧っただけですから。うん。この感じ……」
そう言って、エクレールはその葉を潰したり、魔法で乾燥させたりと、その日から与えられた部屋で試行錯誤を繰り返したのだ。
ラクレイスとエクレールが肩を並べて戦場に立つようになったのは。
冷静沈着で豪快な剣さばきのラクレイスと、素早さで戦場をかく乱し、あっという間に敵を倒していくエクレールのコンビはアインソフ辺境伯軍の最強の戦力となった。
それだけではなく、エクレールはラクレイスの要望で作戦会議にも参加するようになった。
エクレールの閃きでいくつもの戦いが有利なものになっていったのだ。
そして、エクレールの最大の功績として知られるようになる事件が起こったのは、戦争から三年目のことだった。
長引く戦争で、アインソフ辺境伯家の資金は、底をつきかけていた。そんなアインソフ辺境伯家を救ったのがエクレールが開発した新薬だった。
毎年、秋の終わりから冬にかけて、暗黙の了解とでもいうかのように戦争は一時中断していた。
それは、お互いに少ない収穫の時期を過ごし、厳しい冬を過ごすためにどうしても人手が必要だったからだった。
そんな、わずかの休戦時期にエクレールは、ラクレイスに誘われてアインソフ辺境伯の屋敷にやってきていた。
去年も誘われたが、なんだかんだと理由をつけて断ったのだが、今年はラクレイスの強い希望で少ない休みを共に過ごすこととなったのだ。
「エクレール。短い間だが、屋敷では楽に過ごしてくれ」
「領主様……。でも、やっぱり……」
「遠慮なんてしなくてもいい。屋敷の者はみんな君のことを知っているから、遠慮なんてしなくてもいいんだ。ここを自分の家だと思って、過ごしてほしい」
「……でも。わたしは、雇われ傭兵なのに……」
そう言って、気まずそうにするエクレールの手を取ったラクレイスは、笑顔を見せる。
辺境伯家に仕える使用人たちは、その笑顔に全員が目を丸くさせた。
屋敷の外では、冷血だとか冷たい人間だとか、そんな評判のラクレイスだが、身内には優しい一面を見せることがあった。
しかし、軽く口元を緩めるような表情はするが、目元を和らげ、微笑みを見せるところなど見たことが無かったのだ。
全員がすぐにラクレイスさえも気が付いていない気持ちに気が付く。
気が付いたからには、絶対に逃がさないと全員が一致団結をする。
遠慮しがちなエクレールにあれこれと世話を焼き、アインソフ辺境伯家とラクレイスの印象を良くしようと、全員が協力したのだ。
そんなある日、食事の席でエクレールはラクレイスに聞いたのだ。
「ここの食事はとても美味しいです」
「ああ、料理長が頑張ってくれるおかげだ。食料も少ない中でいろいろと工夫してくれている」
「そうなんですね」
「ああ」
「そういえば、アインソフ辺境伯領のあっちこっちに生えているあの薬草はなんという名前なのですか?」
「薬草? どの植物のことだ?」
「えっと、お庭にもたくさん生えているやつです」
エクレールにそう聞かれたラクレイスは、緩く頭を振って残念そうな表情で言うのだ。
「いいや。残念ながら、あれはただの雑草だ。だが、どこにでも生えてきて、畑を作る際に除草してもすぐに生えてくる。庭にも、勝手にたくさん生えてくるんだ」
「そうなんですか? てっきり……」
途中で言葉を切ったエクレールは、唇に人差し指を当てながら物思いにふける。
そして、ラクレイスに瞳を輝かせてあることを提案したのだ。
「辺境伯様、あれはお金の匂いがします!」
「金の匂い?」
「はい! わたし……、恥ずかしながら、少しばかり薬学の知識がありまして……」
本当に恥ずかしそうにそう言ったエクレールだったが、頬を染めてワクワクした表情で言うのだ。
「あの草でお金儲けをしましょう! わたしに少しだけ時間と場所を貸してください!」
「時間も場所も好きなだけ貸すが……」
「大丈夫です! わたしに考えがあるんです」
そう言ったエクレールは、食事を済ませた後に庭に出て、どこにでも生えている草を採取したのだ。
そして、ラクレイスの目の前でその雑草を食べだしたのだ。
「ちょっ! エクレール? だめだ、腹を壊す。ここにぺっとしなさい」
「大丈夫です。すこし、齧っただけですから。うん。この感じ……」
そう言って、エクレールはその葉を潰したり、魔法で乾燥させたりと、その日から与えられた部屋で試行錯誤を繰り返したのだ。
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