(完結)(続編)カトレーネ・トマス前々公爵夫人の事件簿 その1

青空一夏

文字の大きさ
18 / 22
ドリアン子爵夫妻の場合

断罪その1

しおりを挟む
私は、なぜかカトレーネ・トマス前々公爵夫人にお茶会に誘われた。

夫と連れだって行くと、オリバーもそこにはいて、ふてくされた表情で座っていた。

たくさんの侍女が傅くそこは、まるで別世界だった。お茶を注がれている間、私はそわそわと落ち着かなかった。

そのうち、私の両親まで応接室に入ってきて、何事が始まるのかと思っていたら、文官の服を着た女性達が、ぞろぞろと入ってきたのだった。

「まずは、オーロラさんの借金の借用書は全部で70万バギーですね? それは、このオリバーさんに貢いだことはわかってますよ?」

カトレーネ・トマス前々公爵夫人が、厳しい声でおっしゃった。私の両親は、ギラリと私を睨み付けた。

「オーロラ! 何をやっているんだ! お前は! そんなことをするような娘に育てた覚えはないぞ! 男に貢いだだと! なんて、バカなことをしたんだ?」

お父様は、私に向かって怒鳴りつけて、私を叩こうとこちらに向かってきた。

「あぁ、自分のことを棚に上げて偉そうなことを言う人間の典型ですね? お前こそ、恥を知れ!」

そういいながら背の高い、驚くほど綺麗な女性が、お父様の腕をねじり上げた。

「もう、いいでしょう。バーミュレ。腕を放してあげなさい。アデリー男爵、貴方達はオーロラにそうやって、暴力をいつもふるっていましたね? アデリー男爵家の侍女達が証言しました。おまけに、借金を払って貰う代わりにオーロラを嫁がせたそうじゃぁありませんか? ドリアン子爵が全部、証言しましたよ! 人身売買と変らないではありませんか! それでも、親ですか? これは、もう重罪にしたいところですねぇーー。懲役でもいいと思いますよ。これに対する罪はないのですか?」

カトレーネ・トマス前々公爵夫人は文官の女性に尋ねた。

「子供の嫁ぎ先から借金する等は、罪にはなっていませんので、借金を払う条件で嫁がせる等も、罪にはなりません」

女性の文官は、恐る恐る、カトレーネ・トマス前々公爵夫人に申し上げていた。

「ないなら、今すぐお作りなさい! 全く、文官や王宮の行政の組織は風通しが悪すぎですよ! いいですか? 子供を利用してお金を借りることや、嫁がせるから借金を払ってもらうこと等、こんなことは誰が考えても人身売買とかわりませんよ! 子供は親の道具ではありません!」

文官達が震え上がりながらも『前向きに検討を・・・・・・』と言いかけて、カトレーネ・トマス前々公爵夫人から、さらに叱られていた。

「私が、王妃様に早速、申し上げることにしましょう。文官の数がやたら多いのに、やることは遅い。数が多すぎるのではありませんか? 迅速に仕事ができないのなら、それは仕事をしていないのと同じではありませんか!」

私は、カトレーネ・トマス前々公爵夫人を目の当たりにして噂は本当だと思った。まさに女傑の貫禄なのだった。

「とにかく、アデリー男爵夫妻は、自らが借金を返すべきですから、働き口を紹介しましょうね。海と山なら、どちらが好きですか?」

まるで、遠足はどこがいいかと、子供に聞く先生のような口調でカトレーネ・トマス前々公爵夫人は、お聞きになったのだった。

しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。

毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。

世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない

鷹 綾
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」 その“正義”が、王国を崩しかけた。 王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、 婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。 だが―― たとえそれが事実であったとしても、 それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。 貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。 それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。 「世界は、残酷で不平等なのです」 その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、 王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。 婚約破棄は恋愛劇では終わらない。 それは、国家が牙を剥く瞬間だ。 本作は、 「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」 「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」 そんな現実を、徹底して描く。 ――これは、ざまぁではない。 誰も救われない、残酷な現実の物語である。 ※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。  学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、  権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。 ---

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。

処理中です...