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コルト公爵編
8 オースティンとイザベラの行く末は・・・・・・
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私は愛娘のセレニティーから、けしからん話を聞いた。
オースティンとイザベラが『真実の愛』を囁きあっていたという話だった。 コルト公爵家も舐められたものだ。
とにかく、話を聞くつもりで二人のもとに向かったが、膝をついて二人とも同じ言葉を呟いていたのには苦笑した。
「「どうしよう・・・・・・どうしたらいいのだろう・・・・・・」」
愚か者が! しっかりした覚悟もなく、セレニティーを裏切り、愛を囁き合っていたとは、ますますがっかりした。
この様子では、本気で好きあっている仲ではなさそうだ。
私は、サロンに集まるように、そこにいる者達に言った。イザベラの部屋の前で立ち話するほど、軽い話ではない。
皆がサロンに集まり、侍女にお茶を淹れさせた。
もちろん、カップは8人分だ。オースティンの両親のリアム公爵夫妻にも、イザベラの夫のマシュー伯爵にもお越しいただかないとな。
セレニティーから話を聞いてすぐに、使いを出したから、まもなく来るはずだった。
それまでは、なにも話す気はなかった。オースティンは、私の顔をチラチラと見て、遠慮がちに口を開いた。
「あ、あの・・・・・・コルト公爵様。これには、誤解がありまして・・・・・・私と、イザベラ様とは・・・・・・清い関係でして、プラトニックラブなのです。肉体関係がないのですから、裏切っていません!」
オースティンの言葉にセレニティーが、小首を傾げていた。
私の天使の前で肉体関係とか言うな! たわけものが!
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
全ての関係者達が、揃ってから事の顛末を聞いたイザベラの夫の決断は、早かったし、見事に、言い方を心得ていた。
「あぁ、それは素敵なことですね! 『真実の愛』を囁きあっていたのですね? 是非とも、応援したいな。私は、すぐにでも離婚いたしましょう。それに、『真実の愛』には試練はつきものですから、慰謝料も請求してさしあげようと思います。茨の道を歩むほど、愛は深まるでしょうから。おめでとう、イザベラ。喜んで、祝福してあげるよ」
それを聞いたセレニティーは、満足そうに、ニコニコしていた。
そう、慰謝料は、新しい道を歩むイザベラには最高のプレゼントになる。
「茨の道って素敵ですわ! だったら、私も協力しますわ。私もお二人に慰謝料を請求してさしあげますね! お父様、これでお姉様が幸せになれるのでしょう?」
セレニティーが、かわいい口調で尋ねてきた。
「もちろんだとも! 『真実の愛』は、過酷であれば、あるほど、深まり芸術にも貢献できる! 小説や歌にもよくあるだろう? 貧しい時はひとつのパンを分け合い、暖房もない狭い寒い部屋では二人で毛布にくるまって暖を取り、支え合って生きる! さぁ、みんなで応援しようじゃないかっ!」
私は、もっともらしく言った。
「そうですな。では、リアム公爵家ではオースティンは勘当することにしましょう。もともと家督は継げない立場ですが、貴族であったという証拠もない方がいいでしょう? 除籍して我が家とは一切かかわりのない者として扱いますよ。オースティンよ! 精進して、その尊い『真実の愛』を貫くように! 絵描きにでもなるといい。」
オースティンの父親は、厳しい口調で言った。ふん! 私と王の怒りがリアム家に及ぶのを恐れたか! 賢い狸め!
だが、甘いわ! 絵描きなど、高位貴族のパトロンがつけば、楽々、食っていけるではないか!
「あぁ、絵描きになるなら貴族のパトロンが必要だが、簡単に見つかると、茨の道にならないから、私が『オースティン達の真実の愛の為に、絵のパトロンになるのは遠慮してほしい』と高位貴族達には言っておこう!」
私は、とても朗らかに微笑んだ。15歳のセレニティーには、私達の言葉の意味が正確には理解できないでいてほしいものだ。
この子は、醜悪な出来事とは無関係でいさせたかった・・・・・・ずっと、そのまま無垢で・・・・・・だが、この婚約を破棄したら、前々からの王の申し出を受けなければなるまいな。将来の絶対的な権力者の妻になるには、優しすぎるのが心配だが・・・・・・
私はセレニティーの瞳を覗きこんだ。すると・・・・・・純真な天使のようなその表情が一瞬だけ崩れ、その瞳が愉快そうに踊ったのだった。
ふふふ。そうだよな・・・・・・仇をなす者には容赦しない冷血公爵と言われた私の血が入っているのだ・・・・・・きっと未来の王妃の重圧にだって耐えられるだろう。
おっと、私の妻の存在を忘れていた。私はこのセレニティーの家庭教師だった心優しい女を見つめた。
「コルト公爵様。離縁してくださいませ」
マリリンは、とても爽やかな笑顔で、私に切り出したのだった。
オースティンとイザベラが『真実の愛』を囁きあっていたという話だった。 コルト公爵家も舐められたものだ。
とにかく、話を聞くつもりで二人のもとに向かったが、膝をついて二人とも同じ言葉を呟いていたのには苦笑した。
「「どうしよう・・・・・・どうしたらいいのだろう・・・・・・」」
愚か者が! しっかりした覚悟もなく、セレニティーを裏切り、愛を囁き合っていたとは、ますますがっかりした。
この様子では、本気で好きあっている仲ではなさそうだ。
私は、サロンに集まるように、そこにいる者達に言った。イザベラの部屋の前で立ち話するほど、軽い話ではない。
皆がサロンに集まり、侍女にお茶を淹れさせた。
もちろん、カップは8人分だ。オースティンの両親のリアム公爵夫妻にも、イザベラの夫のマシュー伯爵にもお越しいただかないとな。
セレニティーから話を聞いてすぐに、使いを出したから、まもなく来るはずだった。
それまでは、なにも話す気はなかった。オースティンは、私の顔をチラチラと見て、遠慮がちに口を開いた。
「あ、あの・・・・・・コルト公爵様。これには、誤解がありまして・・・・・・私と、イザベラ様とは・・・・・・清い関係でして、プラトニックラブなのです。肉体関係がないのですから、裏切っていません!」
オースティンの言葉にセレニティーが、小首を傾げていた。
私の天使の前で肉体関係とか言うな! たわけものが!
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
全ての関係者達が、揃ってから事の顛末を聞いたイザベラの夫の決断は、早かったし、見事に、言い方を心得ていた。
「あぁ、それは素敵なことですね! 『真実の愛』を囁きあっていたのですね? 是非とも、応援したいな。私は、すぐにでも離婚いたしましょう。それに、『真実の愛』には試練はつきものですから、慰謝料も請求してさしあげようと思います。茨の道を歩むほど、愛は深まるでしょうから。おめでとう、イザベラ。喜んで、祝福してあげるよ」
それを聞いたセレニティーは、満足そうに、ニコニコしていた。
そう、慰謝料は、新しい道を歩むイザベラには最高のプレゼントになる。
「茨の道って素敵ですわ! だったら、私も協力しますわ。私もお二人に慰謝料を請求してさしあげますね! お父様、これでお姉様が幸せになれるのでしょう?」
セレニティーが、かわいい口調で尋ねてきた。
「もちろんだとも! 『真実の愛』は、過酷であれば、あるほど、深まり芸術にも貢献できる! 小説や歌にもよくあるだろう? 貧しい時はひとつのパンを分け合い、暖房もない狭い寒い部屋では二人で毛布にくるまって暖を取り、支え合って生きる! さぁ、みんなで応援しようじゃないかっ!」
私は、もっともらしく言った。
「そうですな。では、リアム公爵家ではオースティンは勘当することにしましょう。もともと家督は継げない立場ですが、貴族であったという証拠もない方がいいでしょう? 除籍して我が家とは一切かかわりのない者として扱いますよ。オースティンよ! 精進して、その尊い『真実の愛』を貫くように! 絵描きにでもなるといい。」
オースティンの父親は、厳しい口調で言った。ふん! 私と王の怒りがリアム家に及ぶのを恐れたか! 賢い狸め!
だが、甘いわ! 絵描きなど、高位貴族のパトロンがつけば、楽々、食っていけるではないか!
「あぁ、絵描きになるなら貴族のパトロンが必要だが、簡単に見つかると、茨の道にならないから、私が『オースティン達の真実の愛の為に、絵のパトロンになるのは遠慮してほしい』と高位貴族達には言っておこう!」
私は、とても朗らかに微笑んだ。15歳のセレニティーには、私達の言葉の意味が正確には理解できないでいてほしいものだ。
この子は、醜悪な出来事とは無関係でいさせたかった・・・・・・ずっと、そのまま無垢で・・・・・・だが、この婚約を破棄したら、前々からの王の申し出を受けなければなるまいな。将来の絶対的な権力者の妻になるには、優しすぎるのが心配だが・・・・・・
私はセレニティーの瞳を覗きこんだ。すると・・・・・・純真な天使のようなその表情が一瞬だけ崩れ、その瞳が愉快そうに踊ったのだった。
ふふふ。そうだよな・・・・・・仇をなす者には容赦しない冷血公爵と言われた私の血が入っているのだ・・・・・・きっと未来の王妃の重圧にだって耐えられるだろう。
おっと、私の妻の存在を忘れていた。私はこのセレニティーの家庭教師だった心優しい女を見つめた。
「コルト公爵様。離縁してくださいませ」
マリリンは、とても爽やかな笑顔で、私に切り出したのだった。
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