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2 自分の両親に吐き気がする妹
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「なんですって? お姉様には外出する自由もないの?」
私はその侍女達を睨み付けたわ。こんなの、おかしい。
「大人しくお部屋で刺繍でもなさっていればいいのです。庭園のあの黄色いリボンのあたりまでなら出ても構いませんよ」
その侍女の目を追っていくと、黄色いリボンが薔薇の庭園の手前の木に結ばれていた。
「あれはなぁに? なんの印なの?」
「ふっふふふ。あれはミミィちゃんのトイレの印です。旦那様のペットのかわいい犬でミミィちゃんもあのリボンの先にすすむと旦那様からお仕置きされました」
「・・・・・・そのミミィちゃんはどこにいるの?」
「3日前に死にました」
侍女の中でも1番気の強い顔つきの女が、ニヤリと顔を歪ませた。
私はその女の服装だけが妙に飾り立てられていることに気がついた。色は黒だけれど、他の侍女達とは明らかに違い袖には飾りボタンがあり、胸には大きなブローチをつけていた。
侯爵家の侍女長にしては品がない女に私は首を傾げてしまう。お姉様はその女が話すたびに青ざめているのはなぜよ?
「旦那様がお戻りになります」侍従の声にその女は顔つきをさっと変え媚びるような表情をあからさまに浮かべた。
――ふ~~ん、なんとなくわかったわよ。アンタの立場が! それにしても、私のお姉様はなんでこんなところに嫁がなきゃなんなかったの?
仕事から帰ってきたアーノルド様は陽気で、とてもお姉様を殴っているようには見えなかった。侍女達が見張っているなかでの会話は、ありきたりの言葉しかかわせなくて、ましてアーノルド様がいらっしゃる今はお姉様と本音が言い合うことができなかった。
結局、詳しく聞くことも連れ出すこともできずにキアン家に戻ってきたけれど、お姉様をあのまま放っておくなんてできないわ。
ꕤ୭*
「・・・・・・というわけなのよ ! おかしいでしょう? 早くお姉様を離婚させてこちらに・・・・・・」
私はディナーの時にその話題を両親にふってみた。
「だめです!! サマーはもうスラエ侯爵夫人なのですよ。他家に嫁いだ人間ですし、その旦那様の方針に従うのは当たり前です!」
お母様の強い口調に私は思わず声をあげた。
「ひゃっつ! いきなり大きな声を出さないでよ。お母様ったらびっくりするじゃないの!」
あまりにもお姉様に対して無関心な両親に不審に思った私は、自分の部屋に戻ると見せかけてサロンの廊下で聞き耳をたてていた。
「キアン子爵家の借金を肩代わりしてくれているスラエ侯爵家にはなにも言えないわよねぇ。もともと、カイアを望んでいたアーノルド様に、『身代わりになる』と言って、嫁いでくれたのがサマーなんだから」
「かわいいカイアをあんな年上の男に嫁がせたくなくて悩んでいた私らを救ってくれた物わかりの良い姉だよな。サマーはカイラを可愛がっていたからなぁ。しかしカイラのさっきの話だと、スラエ侯爵領で虐待された犬猫の死体が多く捨てられている森があるって噂も嘘じゃなさそうだな」
「本当よね。温厚そうに見えるアーノルド様は実は殺人鬼だったりして。おぉ~~怖い、怖い! カイラの代わりにサマーが嫁いでくれて良かったわ。またお金も融通してくれるらしいんでしょう? カイラに新しいドレスを買ってあげたいのよ」
「あぁ、アーノルド様はサマーを気に入ったらしいから、いくらでも融資してくれるそうだ。助かったなぁ」
私はその会話に吐き気がこみあげた。
――この人達はなにを言っているの? これが私の両親なの? これじゃぁ、お金の為に娘を売った最低の親にしか聞こえないわ・・・・・・しかも私の身代わりになったですってぇ!! 実の親とはいえ人でなしだわ!!
私はその侍女達を睨み付けたわ。こんなの、おかしい。
「大人しくお部屋で刺繍でもなさっていればいいのです。庭園のあの黄色いリボンのあたりまでなら出ても構いませんよ」
その侍女の目を追っていくと、黄色いリボンが薔薇の庭園の手前の木に結ばれていた。
「あれはなぁに? なんの印なの?」
「ふっふふふ。あれはミミィちゃんのトイレの印です。旦那様のペットのかわいい犬でミミィちゃんもあのリボンの先にすすむと旦那様からお仕置きされました」
「・・・・・・そのミミィちゃんはどこにいるの?」
「3日前に死にました」
侍女の中でも1番気の強い顔つきの女が、ニヤリと顔を歪ませた。
私はその女の服装だけが妙に飾り立てられていることに気がついた。色は黒だけれど、他の侍女達とは明らかに違い袖には飾りボタンがあり、胸には大きなブローチをつけていた。
侯爵家の侍女長にしては品がない女に私は首を傾げてしまう。お姉様はその女が話すたびに青ざめているのはなぜよ?
「旦那様がお戻りになります」侍従の声にその女は顔つきをさっと変え媚びるような表情をあからさまに浮かべた。
――ふ~~ん、なんとなくわかったわよ。アンタの立場が! それにしても、私のお姉様はなんでこんなところに嫁がなきゃなんなかったの?
仕事から帰ってきたアーノルド様は陽気で、とてもお姉様を殴っているようには見えなかった。侍女達が見張っているなかでの会話は、ありきたりの言葉しかかわせなくて、ましてアーノルド様がいらっしゃる今はお姉様と本音が言い合うことができなかった。
結局、詳しく聞くことも連れ出すこともできずにキアン家に戻ってきたけれど、お姉様をあのまま放っておくなんてできないわ。
ꕤ୭*
「・・・・・・というわけなのよ ! おかしいでしょう? 早くお姉様を離婚させてこちらに・・・・・・」
私はディナーの時にその話題を両親にふってみた。
「だめです!! サマーはもうスラエ侯爵夫人なのですよ。他家に嫁いだ人間ですし、その旦那様の方針に従うのは当たり前です!」
お母様の強い口調に私は思わず声をあげた。
「ひゃっつ! いきなり大きな声を出さないでよ。お母様ったらびっくりするじゃないの!」
あまりにもお姉様に対して無関心な両親に不審に思った私は、自分の部屋に戻ると見せかけてサロンの廊下で聞き耳をたてていた。
「キアン子爵家の借金を肩代わりしてくれているスラエ侯爵家にはなにも言えないわよねぇ。もともと、カイアを望んでいたアーノルド様に、『身代わりになる』と言って、嫁いでくれたのがサマーなんだから」
「かわいいカイアをあんな年上の男に嫁がせたくなくて悩んでいた私らを救ってくれた物わかりの良い姉だよな。サマーはカイラを可愛がっていたからなぁ。しかしカイラのさっきの話だと、スラエ侯爵領で虐待された犬猫の死体が多く捨てられている森があるって噂も嘘じゃなさそうだな」
「本当よね。温厚そうに見えるアーノルド様は実は殺人鬼だったりして。おぉ~~怖い、怖い! カイラの代わりにサマーが嫁いでくれて良かったわ。またお金も融通してくれるらしいんでしょう? カイラに新しいドレスを買ってあげたいのよ」
「あぁ、アーノルド様はサマーを気に入ったらしいから、いくらでも融資してくれるそうだ。助かったなぁ」
私はその会話に吐き気がこみあげた。
――この人達はなにを言っているの? これが私の両親なの? これじゃぁ、お金の為に娘を売った最低の親にしか聞こえないわ・・・・・・しかも私の身代わりになったですってぇ!! 実の親とはいえ人でなしだわ!!
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