(完結)お姉様は私が助けますわ!ークズ男に天誅!

青空一夏

文字の大きさ
2 / 12

2 自分の両親に吐き気がする妹

しおりを挟む
「なんですって? お姉様には外出する自由もないの?」
 私はその侍女達を睨み付けたわ。こんなの、おかしい。
 
「大人しくお部屋で刺繍でもなさっていればいいのです。庭園のあの黄色いリボンのあたりまでなら出ても構いませんよ」
 その侍女の目を追っていくと、黄色いリボンが薔薇の庭園の手前の木に結ばれていた。

「あれはなぁに? なんの印なの?」

「ふっふふふ。あれはミミィちゃんのトイレの印です。旦那様のペットのかわいい犬でミミィちゃんあのリボンの先にすすむと旦那様からお仕置きされました」

「・・・・・・そのミミィちゃんはどこにいるの?」

「3日前に死にました」
 侍女の中でも1番気の強い顔つきの女が、ニヤリと顔を歪ませた。

 私はその女の服装だけが妙に飾り立てられていることに気がついた。色は黒だけれど、他の侍女達とは明らかに違い袖には飾りボタンがあり、胸には大きなブローチをつけていた。
 侯爵家の侍女長にしては品がない女に私は首を傾げてしまう。お姉様はその女が話すたびに青ざめているのはなぜよ?

「旦那様がお戻りになります」侍従の声にその女は顔つきをさっと変え媚びるような表情をあからさまに浮かべた。

――ふ~~ん、なんとなくわかったわよ。アンタの立場が! それにしても、私のお姉様はなんでこんなところに嫁がなきゃなんなかったの?

 仕事から帰ってきたアーノルド様は陽気で、とてもお姉様を殴っているようには見えなかった。侍女達が見張っているなかでの会話は、ありきたりの言葉しかかわせなくて、ましてアーノルド様がいらっしゃる今はお姉様と本音が言い合うことができなかった。

 結局、詳しく聞くことも連れ出すこともできずにキアン家に戻ってきたけれど、お姉様をあのまま放っておくなんてできないわ。



ꕤ୭*



 
「・・・・・・というわけなのよ ! おかしいでしょう? 早くお姉様を離婚させてこちらに・・・・・・」
 私はディナーの時にその話題を両親にふってみた。

「だめです!! サマーはもうスラエ侯爵夫人なのですよ。他家に嫁いだ人間ですし、その旦那様の方針に従うのは当たり前です!」
 お母様の強い口調に私は思わず声をあげた。

「ひゃっつ! いきなり大きな声を出さないでよ。お母様ったらびっくりするじゃないの!」

 あまりにもお姉様に対して無関心な両親に不審に思った私は、自分の部屋に戻ると見せかけてサロンの廊下で聞き耳をたてていた。


 
「キアン子爵家の借金を肩代わりしてくれているスラエ侯爵家にはなにも言えないわよねぇ。もともと、カイアを望んでいたアーノルド様に、『身代わりになる』と言って、嫁いでくれたのがサマーなんだから」

「かわいいカイアをあんな年上の男に嫁がせたくなくて悩んでいた私らを救ってくれた物わかりの良い姉だよな。サマーはカイラを可愛がっていたからなぁ。しかしカイラのさっきの話だと、スラエ侯爵領で虐待された犬猫の死体が多く捨てられている森があるって噂も嘘じゃなさそうだな」

「本当よね。温厚そうに見えるアーノルド様は実は殺人鬼だったりして。おぉ~~怖い、怖い! カイラの代わりにサマーが嫁いでくれて良かったわ。またお金も融通してくれるらしいんでしょう? カイラに新しいドレスを買ってあげたいのよ」

「あぁ、アーノルド様はサマーを気に入ったらしいから、いくらでも融資してくれるそうだ。助かったなぁ」
 私はその会話に吐き気がこみあげた。

――この人達はなにを言っているの? これが私の両親なの? これじゃぁ、お金の為に娘を売った最低の親にしか聞こえないわ・・・・・・しかも私の身代わりになったですってぇ!! 実の親とはいえ人でなしだわ!!

しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

公爵夫人は愛されている事に気が付かない

山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」 「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」 「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」 「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」 社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。 貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。 夫の隣に私は相応しくないのだと…。

姉にざまぁされた愚妹ですが何か?

リオール
恋愛
公爵令嬢エルシーには姉のイリアが居る。 地味な姉に対して美しい美貌をもつエルシーは考えた。 (お姉様は王太子と婚約してるけど……王太子に相応しいのは私じゃないかしら?) そう考えたエルシーは、自らの勝利を確信しながら動き出す。それが破滅への道とも知らずに…… ===== 性懲りもなくありがちな話。だって好きだから(•‿•) 10話完結。※書き終わってます 最初の方は結構ギャグテイストですがラストはシリアスに終わってます。 設定は緩いので何でも許せる方向けです。

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...