(完結)妹に病にかかった婚約者をおしつけられました。

青空一夏

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(俯瞰視点)

 マクシミリアンの快気祝いから三日後の早朝、カステジャノス家に迎えの馬車が2台とまった。1台は普通の乗合馬車のような造りで、よく平民が乗るものだ。もう一台は幾分豪華で、金持ちの平民が所有する馬車のようである。

「あたくしが、あの幾分マシなほうに乗るわ」
 まずは、カステジャノス侯爵夫人がその豪華な馬車に乗り込む。

「では、わしも乗るとしよう」
 カステジャノス侯爵がそれに乗ると、馬車にはもう乗る隙間がない。すでに何人もそこには座っており、定員オーバーになったのだ。

「わたしも乗りたいわ。あっちの粗末な馬車なんて嫌よ」

「僕だってこちらに乗りたい。父上、こういう場合は、可愛い子供に譲るのが親ではないのですか?」

「そうよ、お母様も、なぜこちらにさっさと乗り込んだのですか? 普通は子供を思って優先するはずだわ」

「んまぁ、なにを言うの? 子供の方こそ親を思いやるべきです。今まで育ててもらった恩は、こういう時に返すものでしょう?」

「そうとも。わしらは老人なのだ。年寄りは大事にして敬うべきだ」

「お父様もお母様も、それほど年寄ではないでしょう。酷い。わたしは奴隷なんて嫌よーー」

「うるさいなぁーー。平民になるほうがあちらの馬車で、です。奴隷になったら辛い仕事が待っているので、せめてそこに向かう間だけでも居心地よく過ごせるようにとの、慈悲深き国王陛下の配慮です」
 見かねた御者が丁寧に説明してくれた言葉は、言い争っているこの家族達には


「わたしがこっちに乗るわ」
「きぃーー。違うわよ。母親のあたくしがこっちよ」

「僕がこれに乗るんだ」
「なんだと! わしは父親だぞ。わしに逆らうんじゃない」

 言い争いは尽きることがなく、ついには御者が呆れて言う。

「そんなに、こちらに皆さんが乗りたければどうぞ乗ってください。一人は荷台に、もう一人はおいらの隣にどうぞ。ただし、乗ったらもう後には戻れませんからね」

 カステジャノス一家は、「ありがたい、ありがたい」と、言いながら馬車に乗り込むのだった。
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