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2 彩綾が気になる澪
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side澪
校門を出ると、夕方の風が少し冷たかった。私は足早に、いつもの道を歩く。
白鷺家の塀は高く、外から中の様子はほとんど見えない。ゲートを専用キーで開けると、甘い香りがふわりと流れてきた。アーチ状に組まれた蔓薔薇は、ちょうど見頃で、赤や白の花が静かに揺れている。
(また薔薇の種類が増えてるわ)
母の趣味だ。正確には、管理は専門の業者がやっているけれど、どの薔薇をどこに植えるかを決めるのは、母だった。玄関の扉を開ける。
「お帰りなさいませ」
奥から、お手伝いさんの声がした。
「ただいま」
それだけ言って、靴を脱ぐ。母はまだ帰っていないはずだ。確か今日は、イタリア語講座の日だったと思う。その後は、友人たちとお茶をして、夕食まで帰ってこないのが定番だ。
自室に向かい、鞄を置いたらすぐにシャワー。母からは、女の子は綺麗でいなさいと言われてきたから。部屋着に着替えて、机に向かう。やがて父と母が同じぐらいに帰ってきた気配がした。いつも夕食は決まった時間。私は時間通りダイニングに向かう。大きなテーブルで無言で食事を進めていくと、父が私の顔を見ずに尋ねた。
「定期テストの結果は?」
「……一位です」
「そうか」
これが二位だと、相づちも打たれない。だから、今日はほんの少しだけ居心地がいい。母はイタリア語の話をして、父は仕事の話をする。二人の会話はまるで 噛み合っていない。そして私に、学校のことを聞いてくることは、ほとんどない。
前菜は帆立とグレープフルーツのマリネ、メインは白身魚のムニエル。いつもの夕食、いつもの光景。
(彩綾はなにを食べているのかな? 父親は私のお父様と同じ検事だと言っていた。お父様から、友人になっても良いと言われた唯一の女の子なのに。私たちは全然仲良くなれない……)
彩綾は、学年で一番背が高い。
すっきりとしたショートカットに、制服の着こなしは無駄がなく、少し男物寄りのジャケットを羽織るだけで、まるで韓流アイドルグループのセンターがそのまま学園に紛れ込んだみたいだった。
切れ長の目に、鍛えられたしなやかな身体つき。女子校の空気が、彼女の周りだけ少し違う。
だから、誰に言われるでもなく、彩綾は「王子様」と呼ばれていた。
校門を出ると、夕方の風が少し冷たかった。私は足早に、いつもの道を歩く。
白鷺家の塀は高く、外から中の様子はほとんど見えない。ゲートを専用キーで開けると、甘い香りがふわりと流れてきた。アーチ状に組まれた蔓薔薇は、ちょうど見頃で、赤や白の花が静かに揺れている。
(また薔薇の種類が増えてるわ)
母の趣味だ。正確には、管理は専門の業者がやっているけれど、どの薔薇をどこに植えるかを決めるのは、母だった。玄関の扉を開ける。
「お帰りなさいませ」
奥から、お手伝いさんの声がした。
「ただいま」
それだけ言って、靴を脱ぐ。母はまだ帰っていないはずだ。確か今日は、イタリア語講座の日だったと思う。その後は、友人たちとお茶をして、夕食まで帰ってこないのが定番だ。
自室に向かい、鞄を置いたらすぐにシャワー。母からは、女の子は綺麗でいなさいと言われてきたから。部屋着に着替えて、机に向かう。やがて父と母が同じぐらいに帰ってきた気配がした。いつも夕食は決まった時間。私は時間通りダイニングに向かう。大きなテーブルで無言で食事を進めていくと、父が私の顔を見ずに尋ねた。
「定期テストの結果は?」
「……一位です」
「そうか」
これが二位だと、相づちも打たれない。だから、今日はほんの少しだけ居心地がいい。母はイタリア語の話をして、父は仕事の話をする。二人の会話はまるで 噛み合っていない。そして私に、学校のことを聞いてくることは、ほとんどない。
前菜は帆立とグレープフルーツのマリネ、メインは白身魚のムニエル。いつもの夕食、いつもの光景。
(彩綾はなにを食べているのかな? 父親は私のお父様と同じ検事だと言っていた。お父様から、友人になっても良いと言われた唯一の女の子なのに。私たちは全然仲良くなれない……)
彩綾は、学年で一番背が高い。
すっきりとしたショートカットに、制服の着こなしは無駄がなく、少し男物寄りのジャケットを羽織るだけで、まるで韓流アイドルグループのセンターがそのまま学園に紛れ込んだみたいだった。
切れ長の目に、鍛えられたしなやかな身体つき。女子校の空気が、彼女の周りだけ少し違う。
だから、誰に言われるでもなく、彩綾は「王子様」と呼ばれていた。
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