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6 アーチ王子殿下からバッサリ切り捨てられるルーカス様

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「よ、欲張り? 私はけっしてそんなことはありません。だって、私の婚約者のルーカス様をお姉様に差し上げますもの。元々、ルーカス様はお姉様が好きだったのですからっ!」
ゴリオシーナはアーチ王子殿下に熱心に話しかけた。

「へぇ。それなら、どうして妹と婚約することになったんだい?」

「それは、ジャスミンが私を好きではないからです。いつもデートに誘うとジャスミンの代わりにゴリオシーナが来ましたから。ですから私は諦めて…………」
アーチ王子殿下の質問に答えたのはルーカス様だった。非難するような眼差しを向けられた私は途端に萎縮してしまう。

「ふーーん。姉の代わりに妹が来る? ここの国は珍しい。姉が来ないなら迎えに直接行くべきだ。」
キッパリと言い切るアーチ様の言葉はルーカス様の顔を青ざめさせた。

「ゴリオシーナから『お姉様は頭痛がするので私に行くように言いました』とか『今日は足が痛いので私に行くようにと言いました』など言われていたので、てっきりジャスミンが私が嫌いでゴリオシーナにそのような見え透いた嘘を言わせているのかと…………」

「病気だと言うのなら、果物と本でも持っていきお見舞いに行くべきだろう? なぜデートに誘っても来ないのか、その理由をジャスミンに直接確認したのかい? 二人っきりで余計な邪魔が介入しないところで、腹を割って話し合いをしたことは?」

「ない…………ないです」

「あぁ、それならあなたはただの面倒くさがりやだな! 横着して全てをゴリオシーナに任せて自分でなにひとつ動いてないだろう?」

「そう言われればそうかもしれませんが…………ゴリオシーナが嘘を言うなんて思わなかったので」

「それなら、それでいいでしょう。あなたにとってはゴリオシーナはとても信頼できる女性だったのだね。それも一種の愛だろうな」
おかしそうにおっしゃるアーチ王子殿下にルーカス様は少しムッとした表情を浮かべた。そして、アーチ王子殿下を無視することに決めたようだ。

「さてっと…………ゴリオシーナ、話の途中だったけれど婚約発表は来週でいいかな? 結婚式は半年後あたりで…………」
気を取り直したルーカス様はゴリオシーナにさきほどの話を続けようとした。

ところがゴリオシーナは舌打ちをしながら、
「え? 嫌だぁ~~。さっきから言っているでしょう? 私はルーカス様となんか結婚しませんってば! だってアーチ王子殿下がこうしてお妃様を探しに来たのに…………私にだってチャンスがあるはずだもん!」と、舌をだしいわゆるてへぺろな表情を作った。

ーーこの場でそれが言えるゴリオシーナはすごい…………尊敬だわ…………

「おいおい、なにを言っているんだ? ゴリオシーナはついさきほど、ルーカス様からの婚約の申し込みを受けたばかりだろう?」
ゴリオシーナを溺愛している流石のお父様も呆れ顔だ。

「だ・か・らぁ~~! お姉様に返しますっ! だってお姉様はルーカス様が本当は好きだったことはわかっていたもん! だけど腰抜けだから私の言いなりになっていただけよ! お母様もお父様も私の言うことばかり信じるからこうなったのよ? 少しは反省してください!」
両親は顔面蒼白、お兄様は目を丸くし、ルーカス様は顔をしかめた。

そして、やっぱりアーチ王子殿下は腹を抱えて笑ったのだった。
「あっははははは! オスカー! お前の屋敷に招いてくれてありがとう! こんな傑作な喜劇なんてそうは見られないものねぇ。ゴリオシーナは女道化師にぴったりだ。サーカスで人気者になれること請け合いだ! こんな奇妙で面白い言葉ばかりを発する生き物は初めて見たよ」

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