1 / 7
地獄への扉
しおりを挟む
「お待ちください、皇女様!まだお勉強が終わってらっしゃらないでしょう?」
「あら、もう終わったわ!お兄様とお昼を食べるから離れの宮殿に行くわ」
私はコックに作らせたサンドイッチを持ってお兄様の住む古びた宮殿に行った。
「お兄様、お昼を一緒に食べましょう!」
「エリザベス、ここに来たら皇帝に怒られるぞ!」
「大丈夫よ。お父様は私には甘いし‥‥」
離れの宮殿には季節の花々が無秩序に咲いていた。
手入れがされていない庭園は、私とお父様とお母様が住む宮殿の庭園とはまるで違っていた。
草取りも、あまりされていない荒れた庭園にメイドにシートを広げさせて、私は兄と並んでサンドイッチを食べた。
お兄様は下層平民出身の愛妾イザベラ様の子供で私の腹違いの兄だ。
綺麗な黒い髪と、ルビーの瞳が美しい。目鼻立ちが整いすぎて冷たく見える美貌だけど、私にはとても優しい。
「お兄様、私は大きくなったら‥‥」
「うん、なぁに?」
「ううん、なんでもないの。このサンドイッチ美味しいね?」
「うん、美味しいよ。エリザベスと食べるとなんでも美味しい」
「ふふふ、明日も来ていい?」
「あぁ、いいとも」
私はこのお兄様が大好きなの。
でも、腹違いの兄とは結婚できないから、私の初恋は永遠に実らない‥‥
大きくなったらお兄様のお嫁さんになりたい、その言葉は途中で引っ込めて笑ってごまかした。
お兄様は皇子なのに、この離れに住まわされているのは私とお母様のせいだった。
お父様は私とお母様を異常なほど溺愛していたから、愛妾とその子を同じ宮殿には住まわせたくないと、いつも言っていた‥‥
そのせいで、お兄様が冷遇されているのが私は悲しかった。
メイドは2人しかつけられていないし、着ている物も食べているものも私達とはかなり違うようだった。
だから、私はせっせと運んだ。お昼にはサンドイッチやお菓子や果物を、夜にはお肉やシチューをこっそり、持って行って並んで食べた。
お兄様のお母様のサバンナ様が病気でお亡くなりになると、メイドはたった一人になっていた。
「心配しないで?僕はなんでも、一人でできるから。メイドなんていなくても大丈夫だよ」
お兄様はそう言って笑った。
私にできることが、もっとあればいいのに‥‥
☆
私が17歳になり、お兄様が19歳になったときに旅の魔法使い様がこの国に立ち寄った。
そして、お父様はその魔法使い様にご馳走をふるまった。
魔法使い様はお酒を飲んで、その宴の席でお父様に言った。
「皇帝はすばらしく寛容な立派な方ですなぁーー皇女様は皇帝の血筋ではないでしょう?皇妃様の連れ子をこれほど可愛がるとはすばらしい‥‥」
お父様は顔色を変えた。
そして、その日から私の生活は一変した。
「あら、もう終わったわ!お兄様とお昼を食べるから離れの宮殿に行くわ」
私はコックに作らせたサンドイッチを持ってお兄様の住む古びた宮殿に行った。
「お兄様、お昼を一緒に食べましょう!」
「エリザベス、ここに来たら皇帝に怒られるぞ!」
「大丈夫よ。お父様は私には甘いし‥‥」
離れの宮殿には季節の花々が無秩序に咲いていた。
手入れがされていない庭園は、私とお父様とお母様が住む宮殿の庭園とはまるで違っていた。
草取りも、あまりされていない荒れた庭園にメイドにシートを広げさせて、私は兄と並んでサンドイッチを食べた。
お兄様は下層平民出身の愛妾イザベラ様の子供で私の腹違いの兄だ。
綺麗な黒い髪と、ルビーの瞳が美しい。目鼻立ちが整いすぎて冷たく見える美貌だけど、私にはとても優しい。
「お兄様、私は大きくなったら‥‥」
「うん、なぁに?」
「ううん、なんでもないの。このサンドイッチ美味しいね?」
「うん、美味しいよ。エリザベスと食べるとなんでも美味しい」
「ふふふ、明日も来ていい?」
「あぁ、いいとも」
私はこのお兄様が大好きなの。
でも、腹違いの兄とは結婚できないから、私の初恋は永遠に実らない‥‥
大きくなったらお兄様のお嫁さんになりたい、その言葉は途中で引っ込めて笑ってごまかした。
お兄様は皇子なのに、この離れに住まわされているのは私とお母様のせいだった。
お父様は私とお母様を異常なほど溺愛していたから、愛妾とその子を同じ宮殿には住まわせたくないと、いつも言っていた‥‥
そのせいで、お兄様が冷遇されているのが私は悲しかった。
メイドは2人しかつけられていないし、着ている物も食べているものも私達とはかなり違うようだった。
だから、私はせっせと運んだ。お昼にはサンドイッチやお菓子や果物を、夜にはお肉やシチューをこっそり、持って行って並んで食べた。
お兄様のお母様のサバンナ様が病気でお亡くなりになると、メイドはたった一人になっていた。
「心配しないで?僕はなんでも、一人でできるから。メイドなんていなくても大丈夫だよ」
お兄様はそう言って笑った。
私にできることが、もっとあればいいのに‥‥
☆
私が17歳になり、お兄様が19歳になったときに旅の魔法使い様がこの国に立ち寄った。
そして、お父様はその魔法使い様にご馳走をふるまった。
魔法使い様はお酒を飲んで、その宴の席でお父様に言った。
「皇帝はすばらしく寛容な立派な方ですなぁーー皇女様は皇帝の血筋ではないでしょう?皇妃様の連れ子をこれほど可愛がるとはすばらしい‥‥」
お父様は顔色を変えた。
そして、その日から私の生活は一変した。
13
あなたにおすすめの小説
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
「二年だけの公爵夫人~奪い合う愛と偽りの契約~」二年間の花嫁 パラレルワールド
柴田はつみ
恋愛
二年だけの契約結婚――
その相手は、幼い頃から密かに想い続けた公爵アラン。
だが、彼には将来を誓い合った相手がいる。
私はただの“かりそめの妻”にすぎず、期限が来れば静かに去る運命。
それでもいい。ただ、少しの間だけでも彼のそばにいたい――そう思っていた。
けれど、現実は甘くなかった。
社交界では意地悪な貴婦人たちが舞踏会やお茶会で私を嘲笑い、
アランを狙う身分の低い令嬢が巧妙な罠を仕掛けてくる。
さらに――アランが密かに想っていると噂される未亡人。
彼女はアランの親友の妻でありながら、彼を誘惑することをやめない。
優雅な微笑みの裏で仕掛けられる、巧みな誘惑作戦。
そしてもう一人。
血のつながらない義兄が、私を愛していると告げてきた。
その視線は、兄としてではなく、一人の男としての熱を帯びて――。
知らぬ間に始まった、アランと義兄による“奪い合い”。
だが誰も知らない。アランは、かつて街で私が貧しい子にパンを差し出す姿を見て、一目惚れしていたことを。
この結婚も、その出会いから始まった彼の策略だったことを。
愛と誤解、嫉妬と執着が交錯する二年間。
契約の終わりに待つのは別れか、それとも――。
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
リザベルの恋
はなまる
恋愛
リザベルはアニマール国の王子ラビン殿下と婚約者だったが卒業パーティで婚約破棄を言い渡される。婚約はリザベル有責と言われ父と国王に苦言を呈す。そしてラビン殿下の側近のキースが真実を言ってくれてラビンが悪いことがはっきりする。そんな時リザベルはやけになってアンソニーの誘われたと思って後悔するが怪我をしてまたキースに助けられる。そして二人の距離は近づきキースを意識するようになって行く。ふたりの付き合いを母から勧められキースの優しさにずぶず溺れて行くリザベルだったが、ある日を境にキースがばったり姿を見せなくなる。
どうしてなの?あなたもやっぱり私を裏切るつもり?もう私は待つのは疲れたの。言い訳なんか聞くつもりはないわ。あなたなんかこっちから願い下げよ。そんな気持ちになって行くリザベルだったが真実は思わぬ方に…
私の完璧な婚約者
夏八木アオ
恋愛
完璧な婚約者の隣が息苦しくて、婚約取り消しできないかなぁと思ったことが相手に伝わってしまうすれ違いラブコメです。
※ちょっとだけ虫が出てくるので気をつけてください(Gではないです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる