兄皇帝は妹皇女を深く愛する

青空一夏

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地獄への扉

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「お待ちください、皇女様!まだお勉強が終わってらっしゃらないでしょう?」

「あら、もう終わったわ!お兄様とお昼を食べるから離れの宮殿に行くわ」

私はコックに作らせたサンドイッチを持ってお兄様の住む古びた宮殿に行った。

「お兄様、お昼を一緒に食べましょう!」

「エリザベス、ここに来たら皇帝に怒られるぞ!」

「大丈夫よ。お父様は私には甘いし‥‥」

離れの宮殿には季節の花々が無秩序に咲いていた。

手入れがされていない庭園は、私とお父様とお母様が住む宮殿の庭園とはまるで違っていた。

草取りも、あまりされていない荒れた庭園にメイドにシートを広げさせて、私は兄と並んでサンドイッチを食べた。

お兄様は下層平民出身の愛妾イザベラ様の子供で私の腹違いの兄だ。

綺麗な黒い髪と、ルビーの瞳が美しい。目鼻立ちが整いすぎて冷たく見える美貌だけど、私にはとても優しい。

「お兄様、私は大きくなったら‥‥」

「うん、なぁに?」

「ううん、なんでもないの。このサンドイッチ美味しいね?」

「うん、美味しいよ。エリザベスと食べるとなんでも美味しい」

「ふふふ、明日も来ていい?」

「あぁ、いいとも」

私はこのお兄様が大好きなの。

でも、腹違いの兄とは結婚できないから、私の初恋は永遠に実らない‥‥

大きくなったらお兄様のお嫁さんになりたい、その言葉は途中で引っ込めて笑ってごまかした。


お兄様は皇子なのに、この離れに住まわされているのは私とお母様のせいだった。

お父様は私とお母様を異常なほど溺愛していたから、愛妾とその子を同じ宮殿には住まわせたくないと、いつも言っていた‥‥

そのせいで、お兄様が冷遇されているのが私は悲しかった。

メイドは2人しかつけられていないし、着ている物も食べているものも私達とはかなり違うようだった。

だから、私はせっせと運んだ。お昼にはサンドイッチやお菓子や果物を、夜にはお肉やシチューをこっそり、持って行って並んで食べた。

お兄様のお母様のサバンナ様が病気でお亡くなりになると、メイドはたった一人になっていた。

「心配しないで?僕はなんでも、一人でできるから。メイドなんていなくても大丈夫だよ」

お兄様はそう言って笑った。

私にできることが、もっとあればいいのに‥‥










私が17歳になり、お兄様が19歳になったときに旅の魔法使い様がこの国に立ち寄った。

そして、お父様はその魔法使い様にご馳走をふるまった。

魔法使い様はお酒を飲んで、その宴の席でお父様に言った。

「皇帝はすばらしく寛容な立派な方ですなぁーー皇女様は皇帝の血筋ではないでしょう?皇妃様の連れ子をこれほど可愛がるとはすばらしい‥‥」

お父様は顔色を変えた。

そして、その日から私の生活は一変した。

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