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7 断罪 2 (マリア視点) R18 残酷注意
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私はローズ・スエソン伯爵夫人の専属侍女マーガレットの娘、マリア。お母様は私に幼い頃から、この世の矛盾を教えてくれた。
「この世は不公平なことばかりよ。生まれた家が大貴族ならそのまま何不自由なく生きていけるのに、末端貴族の次女や三女は高位貴族の使用人にしかなれない。家柄と血筋が全てなんて間違っているのよ」
このような言葉は私の頭に浸透していく。そして、私は恵まれた高位貴族のお嬢様達が大嫌いになったのだ。
「ねぇ、マリアはローラ様の居場所が自分のものになればいいと思わない?」
ある日、お母様は私に、とてもにこやかな微笑みを浮かべながら尋ねた。それはアレキサンダー様という跡継ぎが亡くなったという知らせを受けた、数日後のことだったと思う。私はその方に会ったことはない。
「えぇ、欲しいわ。ローラ様のドレスも宝石も伯爵令嬢の地位も」
「ふふふ。だったらねぇ、良い方法があるのよ」
お母様は小瓶に入った青紫の液体を取り出すと、それをローズ様の食事に混ぜると言う。
「ピンクの液体は、スエンソン伯爵に飲ませるの。あなたも手伝ってちょうだいね?」
侍女見習いとして、スエンソン伯爵家でお母様と一緒に働かせてもらうことになった私は、そのピンクの液体をスエソン伯爵の食前酒に何度も入れた。
たまに面倒な時は、かなり分量を間違えて多めに入れてしまった気もする。飲ませれば褒めてくれ、お母様が喜ぶから嬉しかった。
その後、お母様がスエンソン伯爵の寝室に入っていくのを何度も見た。後から媚薬だと教えてもらったけれど、私はそれが悪いことだとは思わない。ローラの居場所が私のものになるなら、なんだってやる価値がある!
それからは面白いようにローズ様は弱っていき、ベッドから起き上がれない日が続いた。あれほど美しかった髪も抜け落ち、頬はこけて老婆のようにさえ見える。
(ざまぁみろ! あんなに綺麗で恵まれてい高貴な佇まいの貴婦人が、劣化していくなんていい気味だ!)
私はお母様と何度もその様子をあざ笑った。こんな楽しいことってなかった。やがて、ローズ様が亡くなりお母様がスエンソン伯爵夫人になった。
お母様が伯爵夫人になってからの私はとても幸せだった。ところが、もっと素晴らしい幸運が舞い込んできた。跡継ぎのアレキサンダー様がお帰りになり、私を見初めてくださったから。
「あたしは、スエンソン侯爵夫人よぉーー。きゃはははは! うふうふ。勝ったわ! あのいつも反吐がでそうなほど幸せそうに見えたローラに!!」
(私は満足だ。だけど、なんでここには侍女がいないの? なんでメイドもいないの? どうしてだろう? でも、まぁ、いいわ♪ 私は侯爵夫人なんだから♫ 私は幸せなんだから!!)
ーーここは終身刑に処せられた者が収容される地下牢である。ーー
「先輩、こないだから収容されたあの娘、ずっと笑い転げているんですが・・・・・・」
「あぁ、気にするな。きっと良い夢でも見てるんだろうさ」
「あれって、なにかの中毒ですよね? 解毒しなくていいんですか?」
「あぁ、あのままの方が本人も幸せだろうよ」
看守達が気味悪げにマリアを見て、その奇声に耳を塞ぐ。
「あの笑い声、甲高くてすっごく気に障りますね。同じ地下牢に収容されている者達のリンチにあわないと良いですがねぇ・・・・・・」
「あぁ。だが、独房でなく雑居房に収容しろ、とのお偉いさんの指示だからなぁ。まぁ、あのままでいいだろうよ」
あっははは、きゃはははーー!! あっははははーー!!
マリアの笑い声は地下牢に響き渡り、同じ牢に収容されている囚人達は次第にイライラを募らせ・・・・・・誰からともなく殴る蹴るの暴行が始まった。
笑いながら殴り続けられたマリアは、翌朝には冷たい身体となっていたのだった。
「この世は不公平なことばかりよ。生まれた家が大貴族ならそのまま何不自由なく生きていけるのに、末端貴族の次女や三女は高位貴族の使用人にしかなれない。家柄と血筋が全てなんて間違っているのよ」
このような言葉は私の頭に浸透していく。そして、私は恵まれた高位貴族のお嬢様達が大嫌いになったのだ。
「ねぇ、マリアはローラ様の居場所が自分のものになればいいと思わない?」
ある日、お母様は私に、とてもにこやかな微笑みを浮かべながら尋ねた。それはアレキサンダー様という跡継ぎが亡くなったという知らせを受けた、数日後のことだったと思う。私はその方に会ったことはない。
「えぇ、欲しいわ。ローラ様のドレスも宝石も伯爵令嬢の地位も」
「ふふふ。だったらねぇ、良い方法があるのよ」
お母様は小瓶に入った青紫の液体を取り出すと、それをローズ様の食事に混ぜると言う。
「ピンクの液体は、スエンソン伯爵に飲ませるの。あなたも手伝ってちょうだいね?」
侍女見習いとして、スエンソン伯爵家でお母様と一緒に働かせてもらうことになった私は、そのピンクの液体をスエソン伯爵の食前酒に何度も入れた。
たまに面倒な時は、かなり分量を間違えて多めに入れてしまった気もする。飲ませれば褒めてくれ、お母様が喜ぶから嬉しかった。
その後、お母様がスエンソン伯爵の寝室に入っていくのを何度も見た。後から媚薬だと教えてもらったけれど、私はそれが悪いことだとは思わない。ローラの居場所が私のものになるなら、なんだってやる価値がある!
それからは面白いようにローズ様は弱っていき、ベッドから起き上がれない日が続いた。あれほど美しかった髪も抜け落ち、頬はこけて老婆のようにさえ見える。
(ざまぁみろ! あんなに綺麗で恵まれてい高貴な佇まいの貴婦人が、劣化していくなんていい気味だ!)
私はお母様と何度もその様子をあざ笑った。こんな楽しいことってなかった。やがて、ローズ様が亡くなりお母様がスエンソン伯爵夫人になった。
お母様が伯爵夫人になってからの私はとても幸せだった。ところが、もっと素晴らしい幸運が舞い込んできた。跡継ぎのアレキサンダー様がお帰りになり、私を見初めてくださったから。
「あたしは、スエンソン侯爵夫人よぉーー。きゃはははは! うふうふ。勝ったわ! あのいつも反吐がでそうなほど幸せそうに見えたローラに!!」
(私は満足だ。だけど、なんでここには侍女がいないの? なんでメイドもいないの? どうしてだろう? でも、まぁ、いいわ♪ 私は侯爵夫人なんだから♫ 私は幸せなんだから!!)
ーーここは終身刑に処せられた者が収容される地下牢である。ーー
「先輩、こないだから収容されたあの娘、ずっと笑い転げているんですが・・・・・・」
「あぁ、気にするな。きっと良い夢でも見てるんだろうさ」
「あれって、なにかの中毒ですよね? 解毒しなくていいんですか?」
「あぁ、あのままの方が本人も幸せだろうよ」
看守達が気味悪げにマリアを見て、その奇声に耳を塞ぐ。
「あの笑い声、甲高くてすっごく気に障りますね。同じ地下牢に収容されている者達のリンチにあわないと良いですがねぇ・・・・・・」
「あぁ。だが、独房でなく雑居房に収容しろ、とのお偉いさんの指示だからなぁ。まぁ、あのままでいいだろうよ」
あっははは、きゃはははーー!! あっははははーー!!
マリアの笑い声は地下牢に響き渡り、同じ牢に収容されている囚人達は次第にイライラを募らせ・・・・・・誰からともなく殴る蹴るの暴行が始まった。
笑いながら殴り続けられたマリアは、翌朝には冷たい身体となっていたのだった。
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