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11 埋められていく外堀

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今日も私の目の前にはジョシュアがいて隣にはドラモンド大帝国皇帝の伯父様がいらっしゃる。
「さて、このめでたい婚約発表はいつにする?」
ウキウキとした様子で伯父様がおっしゃるから私は面食らってしまう。

「すいませんが、どなたとどなたの婚約発表でしょうか? 私はまだ誰からも好きだとも、愛しているとも言われていませんが……」

「なんと不甲斐ない! ジョシュアよ! お前はスワンに恋をして わざわざあの国に留学したのに、そんなことも言っていないのか!」

「伯父様。その設定には無理があります。私はジョシュア様とは1度もお会いしたことがないのですよ。その私に恋をしてわざわざ留学してくるなどあり得ません。会ったこともない女性に恋をするなんておかしな話です」
私は鼻の頭にシワを寄せて伯父様に反論したのだった。

「確かに会う前から恋をしていたと言うのは父上の妄想だよ。でも、あの貴族学園でスワンに会ってからは大事な人になったよ」
ジョシュアの思いがけない告白に私はびっくりすると同時に疑わしそうな眼差しを向けた。

ーーこの人は一体私の何を知っているというの? それほど話したこともないし、この私のどこが好きになって大事な人になったというの? いい加減な思いで甘い言葉を囁く男なんてごめんだわ!

そう思いながら私はジョシュアから顔を背けた。そんな私の耳に子猫の鳴き声が響く。私が恐る恐るその鳴き声の方を振り向くと、あの公園で行方不明になった子猫に少しだけ似ていた。

「この子猫はなんですの?」

「まさか忘れたの? 公園でスワンがいつも世話をしていたあの子猫だよ。僕が大雨の日に保護してずっと大事に育てていたんだ。傷もすっかり癒えて毛並みもとても良くなっただろう?」
にっこり笑うジョシュアに私は思わずその手を両手で握る。これは感謝の気持ちだ。

「あなたが保護してくれたのね? ありがとう! ずっと気になっていたの」
子猫は私を覚えていたようですぐにこちらに来て私の足に体を擦り付けた。
毛並みはつやつやと輝き、人間を警戒するそぶりすら見せない。この子(子猫)はとても大事にされていたのがわかる。
「この子(子猫)の名前はなんていうの?」
「そ、それは実はスワンって呼んでいるんだ」
呆れるほど顔を真っ赤にして私にそういったジョシュアを見て私も頰を染めた。

私たち2人は子猫を間にして並んで座り、一緒におしゃべりを楽しんだ。動物って不思議だわ。この子(子猫)がいるとなごやかな空気が漂いとても寛げる。

「僕と婚約してもらえませんか? 傷ついた動物や恵まれない子供たち、困っている人たちを放って置けない、そんな優しい性格のスワンから目が離せなくなった僕は、いつの間にか君を好きになっていたんだ」

私は子猫とジョシュアを眺めながらついに観念したわ。ジョシュアも動物好きそうだし同じく読書家、おまけに私をとてもかわいがってくれる伯父様の息子なら夫としてはまずまずだ。ただ気がかりはジョシュアのお母様だけれど……これは後に無事に解決することになった。なぜならジョシュアのお母様も私が産んだ息子(孫)に夢中になりカートレット公国に入り浸るようになったから。





♡┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈♡

次回、ピンクナの父親のざまぁです




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