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1 クズ夫が私を怒らせました(リリアーナ視点)
しおりを挟む「愛しているよ。リリアーナ! ヨルダン国への留学から帰ってきたら結婚しようね」
私の婚約者レミントン侯爵家の嫡男レオン様は、そう言って私を抱きしめた。
「えぇ。ずっと3年間も行きっぱなしではないわよね? 夏の休暇は帰ってくるでしょう?」
「あぁ、もちろんさ」
「だったら、私寂しいけれど我慢するわ」
そうして送り出したその半年後、夏の休暇でラトレル国に戻ろうとしたレオン様は、帰国途中の森で何者かに襲われ死体で発見された。
「これは彼じゃないわ・・・・・・こんなことがあっていいはずないもの!」
泣きながら否定しても、指にはめられたレミントン侯爵家の家紋が入った指輪が大きな証拠とされた。顔は判別ができないほど損傷が激しく、それが彼だとわかるのは服装と指輪に、私がプレゼントしたロケットペンダントだけだった。
ーー私の写真が入ったロケットペンダントは、彼がいつも肌身離さず持っていた物。これはやっぱりレオン様なの?
葬儀に参列した私は、レオン様の両親レミントン侯爵夫妻と深い悲しみを分かち合った。
「リリアーナ! 悲しいけれどレオンはもうこの世にはいないわ。あなたは新しい恋をして幸せになってちょうだい。それをレオンも望んでいるはずよ」
レミントン侯爵夫人はそうおっしゃって涙ぐんだ。その時の私はうなづくことしかできなかった。
優秀な嫡男レオン様を亡くしたレミントン侯爵夫妻は、次男のラマー様に爵位を譲り領地の別荘に引きこもってしまわれた。
その後、両親が次々と病にかかり看病する毎日に明け暮れた。その両親も他界し、いよいよ独りぼっちになった頃に母ライラの妹のエイナ・リック男爵未亡人が、両親の葬式が済んですぐの私に提案をしてきたのだった。
「私の夫も亡くなったし、リリアーナも両親を亡くしたわ。こういう時こそ一族で助け合って一緒に暮すべきだと思うのよ。だから、一緒に住んであげるわね!」
翌日には大きな荷物が続々とランス伯爵家に運び込まれたのだった。従兄弟のラモントは亡きリック男爵から爵位は引き継いでいたが、貴族とは名ばかり。猫の額ほどの痩せた土地しか引き継いでいなかったのだ。
「困りますわ! 私は承諾した覚えはありませんよ!」
「あらぁ、姪のくせに叔母の私を追い出すの? リリアーナの寂しい心を慰める為にせっかく私達が来てあげたのに感謝するどころかそんな冷たいことを言うなんて! ライラお姉様はいったいどんな育て方をしたのかしら? これでは先が思いやられるわね!」
当然のように乗り込んできた叔母は、さっさとお母様のお部屋に荷物を運びこませた。ラモントはあろうことか、お父様のお部屋に自分の荷物を置き始め・・・・・・すっかりこのランス伯爵家はこの親子に占拠されたのだった。
そしてその夜、寝室に忍び込んだラモントに無理矢理乱暴されそうになり抵抗した私は・・・・・・気絶し・・・・・・最悪なことにその一回で妊娠、娘ララを出産したのだった。
ラモントを婿にせざるを得なくなった私は、この強姦魔と結婚したが部屋も住まいも別にすることを決めた。ランス伯爵家は由緒ある家系でスキャンダルにまみれさせることは、亡きお父様も悲しがるに違いなかったので強姦されたことは隠すしかなかった。
そんなことが公になっても結局は白い目で見られるのは女性側なのだから、女性は本当に損だと思う。強姦されても、傷物扱いされて好奇の目にさらされるのならあんな強姦魔でも夫にしておいたほうが私の名誉が保てるのだ。それもわかったうえでの従兄弟のクズな所業に怒りはフツフツと沸いてくるのだった。
ーーこんな男には二度と私に触れてほしくないわ!
離れにもう一つ屋敷を建てそこに叔母とラモントを住まわせた。私はランス女伯爵として全てを切り盛りしていたが、この二人は遊ぶこと以外なにもしない。
「おい、俺様の小遣いが少なすぎるぞ! これじゃぁ、社交界での紳士同士の付き合いもできないよ」
「ねぇ、リリアーナ! 私の宝石の代金を払っておいてよ! あと専属侍女をもう一人つけてちょうだい。義理の母の私を、もっと大事にしなきゃだめよ。嫁としてなっていないわ!」
ーーこんな不満ばかりを3日おきに言ってくる叔母親子。それでも、娘のララにとっては父親と祖母には違いない。我慢、我慢だわ!
けれどその数日後、私の従姉妹マーガレット(母の3番目の妹マティの娘)を連れてきたラモントは、
「ねぇ、君は娘しか産めなかっただろう? この伯爵家の跡継ぎをこのマーガレットに産ませてあげるから一緒に住むよ」
ーーはぁ??
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