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1 義理の母ジェンナ
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「パトリシア! 今日は友人のスピリット男爵夫人が遊びにいらっしゃいます。次男ダニエル様の奥様、コリーン様も連れていらっしゃるわ。これから急いで、おもてなしの用意をしてちょうだい!」
「今からですか? 何時に来られるのでしょう?」
「そうねぇ、あともう少しで着く頃かしら?」
「えぇーー!! 無理です。いきなりおっしゃられても、なにもお出しするものがないです。しかも今日は私、仕事が入っております!」
「はぁ? 嫁たるもの、いつでもこのような状況に備えておくべきでしょう? たいしてお金にもならない薬師の仕事など辞めて、家のことだけしていればいいのです!」
義理のお母様ジェンナ・ギガンテッド元男爵夫人は、いつもいきなりお客様が来ると私におっしゃる。私は慌てて屋敷の掃除をするので精一杯だ。
この屋敷にはジェンナ様付の侍女が一人いるだけで、専ら屋敷の切り盛りは私がしている。私は貴族ではないし、夫はギガンテッド男爵家の三男で爵位も屋敷も財産も一切、継いでいない。
この屋敷は最近夫婦で購入したばかりなのに、結婚して3ヶ月目にギガンテッド元男爵夫妻が転がり込んできたのだ。
「ご機嫌よう。お邪魔いたしますわぁーー。まぁ、ずいぶんと雑然としている居間ですわねぇ? メイドはいないのですか?」
スピリット男爵夫人がいらっしゃって、値踏みするように私を見た。
「こんな狭い屋敷ですもの、メイドなんて必要ありませんわ。嫁のパトリシアがやればいいことですから。この子は貴族出身ではありませんからねぇ」
「あら、まぁ。よくショーン様はそんな方と結婚しましたわねぇ? パトリシアさんは平民のくせに、貴族の文官と結婚できたなんて、神に感謝するべきですわぁーー」
「は、はい。そうですね」
私はただ相づちを打ち、時間が過ぎるのをひたすら待つ。
「あらかじめお客様がいらっしゃると伝えてあったのに、なにも用意しないのですよ。困った嫁ですわ」
ジェンナ様は、私を睨み付けてため息を吐いた。
「手土産にロールケーキを持参いたしましたから、これを・・・・・・全く、このようなお嫁さんを貰ってショーン様もお気の毒ですわね?」
コリーン様が、蔑んだ眼差しを私に向ける。
「ダニエルの嫁のコリーン様ですわ。コリーン様はなんとペッパー伯爵家の三女なのよ。自慢の嫁なのですわ!」
スピリット男爵夫人が胸を反らし気味にそう言えば、
「まぁーー、素敵! やはり、嫁は貴族に限りますね」
と、ジェンナ様は満面の笑みでそうおっしゃった。
「今からですか? 何時に来られるのでしょう?」
「そうねぇ、あともう少しで着く頃かしら?」
「えぇーー!! 無理です。いきなりおっしゃられても、なにもお出しするものがないです。しかも今日は私、仕事が入っております!」
「はぁ? 嫁たるもの、いつでもこのような状況に備えておくべきでしょう? たいしてお金にもならない薬師の仕事など辞めて、家のことだけしていればいいのです!」
義理のお母様ジェンナ・ギガンテッド元男爵夫人は、いつもいきなりお客様が来ると私におっしゃる。私は慌てて屋敷の掃除をするので精一杯だ。
この屋敷にはジェンナ様付の侍女が一人いるだけで、専ら屋敷の切り盛りは私がしている。私は貴族ではないし、夫はギガンテッド男爵家の三男で爵位も屋敷も財産も一切、継いでいない。
この屋敷は最近夫婦で購入したばかりなのに、結婚して3ヶ月目にギガンテッド元男爵夫妻が転がり込んできたのだ。
「ご機嫌よう。お邪魔いたしますわぁーー。まぁ、ずいぶんと雑然としている居間ですわねぇ? メイドはいないのですか?」
スピリット男爵夫人がいらっしゃって、値踏みするように私を見た。
「こんな狭い屋敷ですもの、メイドなんて必要ありませんわ。嫁のパトリシアがやればいいことですから。この子は貴族出身ではありませんからねぇ」
「あら、まぁ。よくショーン様はそんな方と結婚しましたわねぇ? パトリシアさんは平民のくせに、貴族の文官と結婚できたなんて、神に感謝するべきですわぁーー」
「は、はい。そうですね」
私はただ相づちを打ち、時間が過ぎるのをひたすら待つ。
「あらかじめお客様がいらっしゃると伝えてあったのに、なにも用意しないのですよ。困った嫁ですわ」
ジェンナ様は、私を睨み付けてため息を吐いた。
「手土産にロールケーキを持参いたしましたから、これを・・・・・・全く、このようなお嫁さんを貰ってショーン様もお気の毒ですわね?」
コリーン様が、蔑んだ眼差しを私に向ける。
「ダニエルの嫁のコリーン様ですわ。コリーン様はなんとペッパー伯爵家の三女なのよ。自慢の嫁なのですわ!」
スピリット男爵夫人が胸を反らし気味にそう言えば、
「まぁーー、素敵! やはり、嫁は貴族に限りますね」
と、ジェンナ様は満面の笑みでそうおっしゃった。
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