2 / 15
2 愛する夫の為に耐えるパトリシア
しおりを挟む
「ふふふ。ところで、パトリシアさんは平民出身っておっしゃったけれど、お父様のご職業は?」
スピリット男爵夫人は、いたぶる獲物を逃さないとでもいうように、私を見据えて質問してくる。
「パトリシアの父親は町で薬師をやっていたそうですが、両親も亡くなって叔父夫婦に育てられたのですよ。叔父夫婦はなんと青物屋! 青物屋にお情けで育てられた娘が嫁だなんて恥ずかしいったら・・・・・・」
ジェンナ様は、恥ずかしいというわりには嬉しそうにそうおっしゃった。
「・・・・・・申し訳ありません・・・・・・」
恥ずかしいと言われた私は、とりあえず謝るしかない。
ジェンナ様とスピリット男爵夫人達は楽しそうに語り合い、結局その日は仕事に行くことができなかった。
「ただいま、母上」
「まぁ、お帰りなさい! ショーン。今日はスピリット男爵夫人達が遊びに来てくださってね。あなたをとても気の毒がっていたわ。パトリシアとは釣り合わないってね」
「そんなことはないですよ。私が安心して外で仕事ができるのは彼女のお陰ですからね」
ショーンはいつも感謝の言葉を言ってくれるから、それだけで私はとても嬉しくなる。
「妻が家を守るのは当たり前でしょう? ショーンのような高給の文官と結婚したから、このような立派な屋敷にも住めるのでしょう? 貴族の子息は、アッパーミドルクラスに大人気ですからね。三男でも平民のお金持ちの家付きお嬢様と結婚できたはずなのよ」
ジェンナ様の言葉に、ショーンは笑うだけでなにも言わなかった。
ジェンナ様は、はじめは嫡男夫妻(ギガンテッド現男爵夫妻)と同居していた。嫡男タイリーク様の奥方ミルドレッド様はアルストン伯爵家の三女で、持参金をたっぷり持ってきたことでギガンテッド男爵家を立て直した経緯がある。そう、かつてのギガンテッド男爵家は破産寸前だったのだ。
次に同居したのは次男夫妻でアンドレ様達だ。アンドレ様の奥方、ジェニファー様は大商人の跡取り娘。まさにアッパーミドルクラスに所属する方だ。けれど、まもなくそのジェニファー様とも喧嘩をして、行き着いたのが私達の屋敷だった。
「大事な母上を見捨てられないよ。だって兄上達の奥方はとても意地悪をするんだって。酷いと思う。お願いだから一緒に助けてあげようよ」
ショーンがそう言うから承諾したのに、彼はいつも王宮から帰って来ると、さっさと書斎に籠もってしまう。
「仕事が終わらなくて屋敷に持ち帰ったんだ。夕食まで忙しいから、できたら呼んで。ごめんよ」
「いいのよ。毎日、お疲れ様だね」
私は彼を愛しているから、優しく言葉をかけてあげる。
本当は愚痴を言いたい。ジェンナ様の嫌がらせや、今日仕事に行けなかったことや・・・・・・いろいろなことを聞いて欲しかった。
でも、そんなことをしたら嫌われてしまう。それに仕事で疲れている夫を困らせたくない。
「パトリシアの為に、私達はここにいてあげますよ。だって、私達がいた方が心強いでしょう? あなたは早くに両親を亡くして叔父のところで暮らしたのだから、親というものが恋しいでしょうからねぇ。あら! そのお肉はもうちょっと小さく切ってちょうだいよっ! 年寄りは歯が脆いのだからね。本当に気が利かないったら!」
夕食の支度をキッチンでしていると、ジェンナ様が横に来て手伝うわけでもなく、口だけ動かす。
「おーーい。夕飯はまだかね? ここの屋敷はコックもいないのか!」
ギガンテッド元男爵は、高慢な声音で私を怒鳴りつけた。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
※青物屋:野菜や果物を売るお店。
※アッパーミドルクラス:平民だがお金持ちの者。上位中産階級。この小説では主に大きな商会を営む大商人を指す。
スピリット男爵夫人は、いたぶる獲物を逃さないとでもいうように、私を見据えて質問してくる。
「パトリシアの父親は町で薬師をやっていたそうですが、両親も亡くなって叔父夫婦に育てられたのですよ。叔父夫婦はなんと青物屋! 青物屋にお情けで育てられた娘が嫁だなんて恥ずかしいったら・・・・・・」
ジェンナ様は、恥ずかしいというわりには嬉しそうにそうおっしゃった。
「・・・・・・申し訳ありません・・・・・・」
恥ずかしいと言われた私は、とりあえず謝るしかない。
ジェンナ様とスピリット男爵夫人達は楽しそうに語り合い、結局その日は仕事に行くことができなかった。
「ただいま、母上」
「まぁ、お帰りなさい! ショーン。今日はスピリット男爵夫人達が遊びに来てくださってね。あなたをとても気の毒がっていたわ。パトリシアとは釣り合わないってね」
「そんなことはないですよ。私が安心して外で仕事ができるのは彼女のお陰ですからね」
ショーンはいつも感謝の言葉を言ってくれるから、それだけで私はとても嬉しくなる。
「妻が家を守るのは当たり前でしょう? ショーンのような高給の文官と結婚したから、このような立派な屋敷にも住めるのでしょう? 貴族の子息は、アッパーミドルクラスに大人気ですからね。三男でも平民のお金持ちの家付きお嬢様と結婚できたはずなのよ」
ジェンナ様の言葉に、ショーンは笑うだけでなにも言わなかった。
ジェンナ様は、はじめは嫡男夫妻(ギガンテッド現男爵夫妻)と同居していた。嫡男タイリーク様の奥方ミルドレッド様はアルストン伯爵家の三女で、持参金をたっぷり持ってきたことでギガンテッド男爵家を立て直した経緯がある。そう、かつてのギガンテッド男爵家は破産寸前だったのだ。
次に同居したのは次男夫妻でアンドレ様達だ。アンドレ様の奥方、ジェニファー様は大商人の跡取り娘。まさにアッパーミドルクラスに所属する方だ。けれど、まもなくそのジェニファー様とも喧嘩をして、行き着いたのが私達の屋敷だった。
「大事な母上を見捨てられないよ。だって兄上達の奥方はとても意地悪をするんだって。酷いと思う。お願いだから一緒に助けてあげようよ」
ショーンがそう言うから承諾したのに、彼はいつも王宮から帰って来ると、さっさと書斎に籠もってしまう。
「仕事が終わらなくて屋敷に持ち帰ったんだ。夕食まで忙しいから、できたら呼んで。ごめんよ」
「いいのよ。毎日、お疲れ様だね」
私は彼を愛しているから、優しく言葉をかけてあげる。
本当は愚痴を言いたい。ジェンナ様の嫌がらせや、今日仕事に行けなかったことや・・・・・・いろいろなことを聞いて欲しかった。
でも、そんなことをしたら嫌われてしまう。それに仕事で疲れている夫を困らせたくない。
「パトリシアの為に、私達はここにいてあげますよ。だって、私達がいた方が心強いでしょう? あなたは早くに両親を亡くして叔父のところで暮らしたのだから、親というものが恋しいでしょうからねぇ。あら! そのお肉はもうちょっと小さく切ってちょうだいよっ! 年寄りは歯が脆いのだからね。本当に気が利かないったら!」
夕食の支度をキッチンでしていると、ジェンナ様が横に来て手伝うわけでもなく、口だけ動かす。
「おーーい。夕飯はまだかね? ここの屋敷はコックもいないのか!」
ギガンテッド元男爵は、高慢な声音で私を怒鳴りつけた。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
※青物屋:野菜や果物を売るお店。
※アッパーミドルクラス:平民だがお金持ちの者。上位中産階級。この小説では主に大きな商会を営む大商人を指す。
4
あなたにおすすめの小説
欲しがり病の妹を「わたくしが一度持った物じゃないと欲しくない“かわいそう”な妹」と言って憐れむ(おちょくる)姉の話 [完]
ラララキヲ
恋愛
「お姉様、それ頂戴!!」が口癖で、姉の物を奪う妹とそれを止めない両親。
妹に自分の物を取られた姉は最初こそ悲しんだが……彼女はニッコリと微笑んだ。
「わたくしの物が欲しいのね」
「わたくしの“お古”じゃなきゃ嫌なのね」
「わたくしが一度持った物じゃなきゃ欲しくない“欲しがりマリリン”。貴女はなんて“可愛”そうなのかしら」
姉に憐れまれた妹は怒って姉から奪った物を捨てた。
でも懲りずに今度は姉の婚約者に近付こうとするが…………
色々あったが、それぞれ幸せになる姉妹の話。
((妹の頭がおかしければ姉もそうだろ、みたいな話です))
◇テンプレ屑妹モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい。
◇なろうにも上げる予定です。
大公家を追放されて奈落に落とされたけど、以前よりずっと幸せだ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
大公家を追放されて奈落に落とされたけど、奈落のモンスターの方が人間よりも優しくて、今の方がずっと幸せだ。
【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます
コトミ
恋愛
セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。
「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」
困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。
【完結】勘違いしないでください!
青空一夏
恋愛
自分の兄の妻に憧れすぎて妻を怒らせる夫のお話です。
私はマドリン・バーンズ。一代限りの男爵家の次女ですが、サマーズ伯爵家の次男ケントンと恋仲になりました。あちらは名門貴族なので身分が釣り合わないと思いましたが、ケントンは気にしないと言ってくれました。私たちは相思相愛で、とても幸せな結婚生活を始めたのです。
ところが、ケントンのお兄様が結婚しサマーズ伯爵家を継いだ頃から、ケントンは兄嫁のローラさんを頻繁に褒めるようになりました。毎日のように夫はローラさんを褒め続けます。
いいかげんうんざりしていた頃、ケントンはあり得ないことを言ってくるのでした。ローラさんは確かに美人なのですが、彼女の化粧品を私に使わせて・・・・・・
これは兄嫁に懸想した夫が妻に捨てられるお話です。あまり深く考えずにお読みください💦
※二話でおしまい。
※作者独自の世界です。
※サクッと読めるように、情景描写や建物描写などは、ほとんどありません。
私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果
柚木ゆず
恋愛
※4月27日、本編完結いたしました。明日28日より、番外編を投稿させていただきます。
姉マリエットの宝物を奪うことを悦びにしている、妹のミレーヌ。2人の両親はミレーヌを溺愛しているため咎められることはなく、マリエットはいつもそんなミレーヌに怯えていました。
ですが、ある日。とある出来事によってマリエットがミレーヌに宝物を全てあげると決めたことにより、2人の人生は大きく変わってゆくのでした。
(完結)元お義姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれど・・・・・・エメリーン編
青空一夏
恋愛
「元お義姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれど・・・・・・」の続編。エメリーンの物語です。
以前の☆小説で活躍したガマちゃんズ(☆「お姉様を選んだ婚約者に乾杯」に出演)が出てきます。おとぎ話風かもしれません。
※ガマちゃんズのご説明
ガマガエル王様は、その昔ロセ伯爵家当主から命を助けてもらったことがあります。それを大変感謝したガマガエル王様は、一族にロセ伯爵家を守ることを命じます。それ以来、ガマガエルは何代にもわたりロセ伯爵家を守ってきました。
このお話しの時点では、前の☆小説のヒロイン、アドリアーナの次男エアルヴァンがロセ伯爵になり、失恋による傷心を癒やす為に、バディド王国の別荘にやって来たという設定になります。長男クロディウスは母方のロセ侯爵を継ぎ、長女クラウディアはムーンフェア国の王太子妃になっていますが、この物語では出てきません(多分)
前の作品を知っていらっしゃる方は是非、読んでいない方もこの機会に是非、お読み頂けると嬉しいです。
国の名前は新たに設定し直します。ロセ伯爵家の国をムーンフェア王国。リトラー侯爵家の国をバディド王国とします。
ムーンフェア国のエアルヴァン・ロセ伯爵がエメリーンの恋のお相手になります。
※現代的言葉遣いです。時代考証ありません。異世界ヨーロッパ風です。
結婚式当日に私の婚約者と駆け落ちした妹が、一年後に突然帰ってきました
柚木ゆず
恋愛
「大変な目に遭ってっ、ナルシスから逃げてきたんですっ! お父様お姉様っ、助けてくださいっ!!」
1年前、結婚式当日。当時わたしの婚約者だったナルシス様と駆け落ちをした妹のメレーヌが、突然お屋敷に現れ助けを求めてきました。
ふたりは全てを捨ててもいいから一緒に居たいと思う程に、相思相愛だったはず。
それなのに、大変な目に遭って逃げてくるだなんて……。
わたしが知らないところで、何があったのでしょうか……?
【完結】旦那様に隠し子がいるようです。でも可愛いから全然OK!
曽根原ツタ
恋愛
実家の借金返済のため、多額の支度金を用意してくれるという公爵に嫁ぐことを父親から押し付けられるスフィミア。冷酷無慈悲、引きこもりこ好色家と有名な公爵だが、超ポジティブな彼女は全く気にせずあっさり縁談を受けた。
公爵家で出迎えてくれたのは、五歳くらいの小さな男の子だった。
(まぁ、隠し子がいらっしゃったのね。知らされていなかったけれど、可愛いから全然OK!)
そして、ちょっとやそっとじゃ動じないポジティブ公爵夫人が、可愛い子どもを溺愛する日々が始まる。
一方、多額の支度金を手に入れたスフィミアの家族は、破滅の一途を辿っていて……?
☆小説家になろう様でも公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる