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13 ギガンテッド元男爵夫人のその後
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(ジェンナ・ギガンテッド元男爵夫人視点)
「なんでいきなり来るのですか? 困ります。ミルドレッドに怒られますよ」
「だって、あなたは長男でしょう? 母親の面倒を見るのは当然ですよ。私はこの家で我慢してあげますから・・・・・・」
「我慢していただかなくても結構です。ここはギガンテッド男爵家のお屋敷ですけれど、私の持参金がなかったらとっくに人手に渡っておりましたよ。偉そうにおっしゃる前に、自分の立場もわきまえてくださいね?」
ずけずけとものを言うミルドレッドが、私は苦手だ。以前も私の言う言葉にいちいち反論してきて、その度に大喧嘩になった。
けれど喧嘩していいのは、ここを出て行くアテがある時だけだ。今はミルドレッドに追い出されたら行くところがない。だから、思ったことも言えなくなった。結局、ここに置いてはくれたけれど、日の当たらない部屋をあてがわれ食事は一人で自室で食べる。
「なぜ、一緒に食べてはいけないのですか? 私も一緒に食堂で食べたいわ」
「お忘れになったのですか? 以前、お義母様は子ども達が一緒だと落ち着かない、とおっしゃいました。『あんな騒々しい躾のなっていない子ども達と食事するくらいなら猿とした方がマシだ』とまでおっしゃったのですよ?」
「そんなこと言ったかしら?」
「はい。確かにそうおっしゃって、子ども達もそれを覚えておりますわ。ですから、お一人でお食事なさってください。その方が気楽でいいでしょう?」
一人で食べる食事は味気ない。パトリシアと暮らしていた頃は、皆でおしゃべりしながら食事をしたものだ。あの頃は友人も勝手に呼べたし、好きな食材を食べ放題だった。
今の食事は肉中心で魚料理が少ない。味付けも濃いし、量も多い。けれど残すと嫌みを言われたし、次の食事が運ばれてこない為無理して完食する。
その為に胃は常にムカムカしており、体調も良くない。パトリシアにこんなことをされたことは一度もなかった。あの子は私の為に薄味の魚を煮付け、季節の野菜も食べやすい大きさに切りそろえ、今考えたら至れり尽くせりだった。
なんでもっと優しくしてあげなかったんだろう? パトリシアが貴族じゃないからなんだというの? このミルドレッドはアルストン伯爵家の三女だ。格上だから私をばかにし、持参金もたっぷり持ってきた立場なので態度もでかい。何かと言えば、”私は伯爵令嬢でした” ”ギガンテッド男爵家があるのは私が用立ててあげた持参金のお陰です” と、うんざりだ。
そして、それはかつての私に通じる。パトリシアを家柄とお金のことで、散々ばかにした私と同じ。これが、自業自得なのね・・・・・愚かだったわ。
それから1年後、ある日の新聞で王弟の嫡男シルヴェストル様がバルオ公爵家を継ぎ、パトリシア男爵と結婚するという大々的な記事を見た。パトリシア男爵は一代限りの名誉貴族らしい。仕事は王妃殿下の薬師と記されている。
”秘密のベールがついにはがされた”という劇的な見出しで、写真にはあのパトリシアがにっこり微笑んでいた・・・・・・まさか・・・・・・そんな・・・・・・あれほど粗末に扱っていた嫁が・・・・・・王妃殿下の”魔法の手”だったの?
私は今日も一人ぼっちで、日の当たらない自室で食事をする。最近では足も悪くなり滅多に外にも出られない。アンドレやミルドレッドは一度も私の様子を見に来ることもなく、私がこの部屋で病気になっても誰一人気がつかないのでは? と思いゾッとした。
あぁ、こんなことならパトリシアに意地悪なんてするんじゃなかった・・・・・・
「なんでいきなり来るのですか? 困ります。ミルドレッドに怒られますよ」
「だって、あなたは長男でしょう? 母親の面倒を見るのは当然ですよ。私はこの家で我慢してあげますから・・・・・・」
「我慢していただかなくても結構です。ここはギガンテッド男爵家のお屋敷ですけれど、私の持参金がなかったらとっくに人手に渡っておりましたよ。偉そうにおっしゃる前に、自分の立場もわきまえてくださいね?」
ずけずけとものを言うミルドレッドが、私は苦手だ。以前も私の言う言葉にいちいち反論してきて、その度に大喧嘩になった。
けれど喧嘩していいのは、ここを出て行くアテがある時だけだ。今はミルドレッドに追い出されたら行くところがない。だから、思ったことも言えなくなった。結局、ここに置いてはくれたけれど、日の当たらない部屋をあてがわれ食事は一人で自室で食べる。
「なぜ、一緒に食べてはいけないのですか? 私も一緒に食堂で食べたいわ」
「お忘れになったのですか? 以前、お義母様は子ども達が一緒だと落ち着かない、とおっしゃいました。『あんな騒々しい躾のなっていない子ども達と食事するくらいなら猿とした方がマシだ』とまでおっしゃったのですよ?」
「そんなこと言ったかしら?」
「はい。確かにそうおっしゃって、子ども達もそれを覚えておりますわ。ですから、お一人でお食事なさってください。その方が気楽でいいでしょう?」
一人で食べる食事は味気ない。パトリシアと暮らしていた頃は、皆でおしゃべりしながら食事をしたものだ。あの頃は友人も勝手に呼べたし、好きな食材を食べ放題だった。
今の食事は肉中心で魚料理が少ない。味付けも濃いし、量も多い。けれど残すと嫌みを言われたし、次の食事が運ばれてこない為無理して完食する。
その為に胃は常にムカムカしており、体調も良くない。パトリシアにこんなことをされたことは一度もなかった。あの子は私の為に薄味の魚を煮付け、季節の野菜も食べやすい大きさに切りそろえ、今考えたら至れり尽くせりだった。
なんでもっと優しくしてあげなかったんだろう? パトリシアが貴族じゃないからなんだというの? このミルドレッドはアルストン伯爵家の三女だ。格上だから私をばかにし、持参金もたっぷり持ってきた立場なので態度もでかい。何かと言えば、”私は伯爵令嬢でした” ”ギガンテッド男爵家があるのは私が用立ててあげた持参金のお陰です” と、うんざりだ。
そして、それはかつての私に通じる。パトリシアを家柄とお金のことで、散々ばかにした私と同じ。これが、自業自得なのね・・・・・愚かだったわ。
それから1年後、ある日の新聞で王弟の嫡男シルヴェストル様がバルオ公爵家を継ぎ、パトリシア男爵と結婚するという大々的な記事を見た。パトリシア男爵は一代限りの名誉貴族らしい。仕事は王妃殿下の薬師と記されている。
”秘密のベールがついにはがされた”という劇的な見出しで、写真にはあのパトリシアがにっこり微笑んでいた・・・・・・まさか・・・・・・そんな・・・・・・あれほど粗末に扱っていた嫁が・・・・・・王妃殿下の”魔法の手”だったの?
私は今日も一人ぼっちで、日の当たらない自室で食事をする。最近では足も悪くなり滅多に外にも出られない。アンドレやミルドレッドは一度も私の様子を見に来ることもなく、私がこの部屋で病気になっても誰一人気がつかないのでは? と思いゾッとした。
あぁ、こんなことならパトリシアに意地悪なんてするんじゃなかった・・・・・・
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