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9 まさかのイレーヌ・エンジェル王女殿下の消滅 本編最終話
ꕤ୭*オスカー公爵視点
「躾け・・・・・・しつけ? 私の命が埃をかぶった花瓶以下だと言ったことがしつけなの?」
私は陛下と顔を見合わせた。
「誰の命が花瓶以下だと?」
自分の声が底知れないどす黒さを帯びた。
「あぁ、この薄汚い子のことでしょう? だって、アイビーは『厄介者』なのでしょう? そういえば、この前くださったドレスはなかなか気に入りましたわ。どう、似合うでしょう?」
「はぁ? お前は誰だ? しかもそのドレスは・・・・・・アイビーに贈ったものだぞ! おい! この子供は誰だ?」
「ちょっと! お父様! 酷いわぁーー。あなたの最愛の一人娘でしょう?」
「そうですわ! 私が妻でこの娘はあなたの子供です。何を血迷っているのですか!」
ーーどうなっている?
「おい! アンナ! どういうことか説明してもらおうか?」
「ひっ・・・・・・」
「私が説明しますわ。ミランダはお父様の再婚相手でウィローはお父様の子供だ、とアンナから言われました。お父様が一度も会いにこないのは、私を憎んでいるからだとも聞かされました。・・・・・・後妻のミランダが来てからは食事は野菜だけだったり、口答えするとお水も飲ませてくれませんでした」
――アイビーの返答に驚愕する私だ。あり得ない! こんな女は知らん!
「外に出ちゃいけないって言われたの。笑ってもダメだって。私は『お母様を殺した悪魔の子だから』って言われたわ」
――なっ、なんだとぉーー! そんなこと思っていない。けれどこうなったのは誰のせいだ?
――これは明らかに子育てを人任せにした私の責任だ。私の罪なんだ!
「あぁ、陛下。こうなったのも私の怠慢のせいです。どんな罰でも受けますよ」
「そうだな、お前は10回ぐらい死んで来い!」
陛下が吐き捨てるように言った直後、
「お父様は悪くないわ。お母様をそれだけ大事だったのよね? 今度は私がお母様の代わりになってあげるわ」
アイビーが私の頭をポンポンと軽く叩いた。
ーーあぁ、確かにこれはイヌの娘だ。愚かな父にこんなことを言ってくれるなんて
「そうね、アイビー。でも簡単に許してはダメよ。ひまし油と、超苦いお茶は毎日飲ませるのよ。ほら、お父様の健康にもとてもいいからね!」
口調が変わったから、イヌが言っていることはわかる。
ーーあぁ、そんなことで許してくれるなら何杯だって飲み干そう。
ꕤ୭*王女視点
「お父様は悪くないわ。お母様をそれだけ大事だったのよね? 今度は私がお母様の代わりになってあげるわ」
アイビーのその言葉を聞いてもう大丈夫と思った私は娘の肉体から離れた。
アンナやあの使用人達は全て死刑か終身鉱山奴隷になるだろう。最後までその結末を見たかったけれど『エドにぃにぃ』が全てうまくやってくれるのはわかっていた。
ホッとした途端に霊体は勝手に天界に登っていく。・・・・・・ちょっと待ってよ。まだ、娘にお別れに言葉も言えてないわよ!
「神様ぁーー! なぜいきなり、呼び戻すのよ?」
「天使を全て集合させたのはワシだ? おやぁーー? なぜ元人間が天使になっている? しかもこの生命力の数値、まだ死ぬべき魂じゃなかったな?」
「天界・冥界・人界全てを治める大神様。えっとこの者は・・・・・・隣国の王に毒殺されておりまして・・・・・・」
「いや、毒殺されるべき魂ではないな。これは、少なくともあと50年は生きるはずの魂だ。だから、前世の記憶も消えていなかっただろう? 天界の神よ、また人界を操作して天界をハーレム化しようとしたな!」
「ひやぁーー。申し訳ございません。ちょっとした出来心で・・・・・・」
「・・・・・・私の命、どう償ってもらえるのよ?」
なんとなく状況がつかめた私はその大神様に詰め寄った。
大神様はおっしゃったわ。生き返らせてくれると。けれど・・・・・・
私が生き返っても、この二つの国はやがて戦争になり我が国は属国に『エドにぃにぃ』も夫もアイビーも殺される運命だと言われた。私だけは生き残って革命を起こす? なによ、そのシナリオが本当のシナリオなの? ・・・・・・誰も幸せにならないじゃない!
「ちょっと待ってよ。そんな未来なんて許容できないわ! 生き返らなくていいわよ。あの王を抹殺してやる」
「そんなことをしたらお前は、今度こそ消滅だぞ! 天国にも行けぬし、生まれ変わることもできぬ。こら! 待ちなさい!」
「地獄だろうがなんだろうが怖くないわ! 女はね、大事な物を守るためには男より潔いのよ」
大神様を無視して下界に降りると、アイビーにささやいた。
「ママはいつでもあなたの心の中にいるわ」
「エドにぃにぃ、アイビーのこと頼んだわよ! タイムリミットなのよ。さよなら」
「エリック! アイビーをしっかり育てなさいよ! いつも側で見張ってやるからね」
私は隣国スロラム王国の王、ジェームズ・スロラムの側近に取り憑いた。この男はさまざまな悪事に手を染めていた。
このジェームズが兄の王太子をかつて毒殺した証拠や、弟をも毒殺しようとしていることを側近達に暴露させるよう仕向ける。
平民にも多くの危害を加え貴族達には横暴な命令ばかりをしていたジェームズは、たちまち追い詰められていった。
「ジェームズ・スロラムは極刑に処す」
この男は兄を殺した罪により八つ裂きの刑になるらしい。私はその刑が決まってから側近の身体を抜け出した。
朝の光に溶けて消滅していく私の魂。悔いはない。この先、生き返っても私の愛する者達が全て死ぬ地獄を見るのなら、これが私のするべきことなんだと思えた。
淡い光に溶けてそよ風に流されてアイビーの傍らにそよそよとそそぐ一陣の風になりたい。
消滅していく魂は、キラキラと輝きながら四方に散っていったのだった。
おまけ
アイビーはそれから、エドワード・エンジェル国王と正妃の養女として迎えられ、その傍らには王宮にほぼ住みついているオスカー公爵の姿があった。
笑顔を取り戻したアイビーの口癖は「ひまし油を飲ませるわよ!」だった。
「本当にイヌはもうアイビーのなかにはいないのだろうか?」
オスカー公爵はエドワード・エンジェル国王陛下に訊ねた。
「あぁ、いないようだな。だが、イヌの遺伝子はあの子の中にきらめいているよ。そういう意味ではイヌは死んでいない。いつも私達と一緒だ」
おまけ
アンナとミランダ、その他の使用人は、異国で厳しい躾をされているとアイビーは聞かされましたが、二度とその顔を見ることはありませんでした。
アイビーは二人の兄(王子達)に溺愛され、王妃殿下には実の娘のように可愛がられました。二人のお父様(国王陛下とオスカー公爵)は、もちろんデレデレだったことは言うまでもありません。
アイビーは愛すべき家族のなかで、お母様(イレーヌ・エンジェル王女殿下)の愛に感謝しつつこれからも生きていくでしょう。
「お母様! 天使になって来てくれてありがとう!」
アイビーの髪をさっと揺らしたその風は、もしかしたらイレーヌ・エンジェル王女殿下だったのかもしれません。
完 以上までが全年齢向けでおしまいとなります。
※本編いったん完結
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
番外編
R15またはR18 残酷かもしれない 断罪編は明日から!
「躾け・・・・・・しつけ? 私の命が埃をかぶった花瓶以下だと言ったことがしつけなの?」
私は陛下と顔を見合わせた。
「誰の命が花瓶以下だと?」
自分の声が底知れないどす黒さを帯びた。
「あぁ、この薄汚い子のことでしょう? だって、アイビーは『厄介者』なのでしょう? そういえば、この前くださったドレスはなかなか気に入りましたわ。どう、似合うでしょう?」
「はぁ? お前は誰だ? しかもそのドレスは・・・・・・アイビーに贈ったものだぞ! おい! この子供は誰だ?」
「ちょっと! お父様! 酷いわぁーー。あなたの最愛の一人娘でしょう?」
「そうですわ! 私が妻でこの娘はあなたの子供です。何を血迷っているのですか!」
ーーどうなっている?
「おい! アンナ! どういうことか説明してもらおうか?」
「ひっ・・・・・・」
「私が説明しますわ。ミランダはお父様の再婚相手でウィローはお父様の子供だ、とアンナから言われました。お父様が一度も会いにこないのは、私を憎んでいるからだとも聞かされました。・・・・・・後妻のミランダが来てからは食事は野菜だけだったり、口答えするとお水も飲ませてくれませんでした」
――アイビーの返答に驚愕する私だ。あり得ない! こんな女は知らん!
「外に出ちゃいけないって言われたの。笑ってもダメだって。私は『お母様を殺した悪魔の子だから』って言われたわ」
――なっ、なんだとぉーー! そんなこと思っていない。けれどこうなったのは誰のせいだ?
――これは明らかに子育てを人任せにした私の責任だ。私の罪なんだ!
「あぁ、陛下。こうなったのも私の怠慢のせいです。どんな罰でも受けますよ」
「そうだな、お前は10回ぐらい死んで来い!」
陛下が吐き捨てるように言った直後、
「お父様は悪くないわ。お母様をそれだけ大事だったのよね? 今度は私がお母様の代わりになってあげるわ」
アイビーが私の頭をポンポンと軽く叩いた。
ーーあぁ、確かにこれはイヌの娘だ。愚かな父にこんなことを言ってくれるなんて
「そうね、アイビー。でも簡単に許してはダメよ。ひまし油と、超苦いお茶は毎日飲ませるのよ。ほら、お父様の健康にもとてもいいからね!」
口調が変わったから、イヌが言っていることはわかる。
ーーあぁ、そんなことで許してくれるなら何杯だって飲み干そう。
ꕤ୭*王女視点
「お父様は悪くないわ。お母様をそれだけ大事だったのよね? 今度は私がお母様の代わりになってあげるわ」
アイビーのその言葉を聞いてもう大丈夫と思った私は娘の肉体から離れた。
アンナやあの使用人達は全て死刑か終身鉱山奴隷になるだろう。最後までその結末を見たかったけれど『エドにぃにぃ』が全てうまくやってくれるのはわかっていた。
ホッとした途端に霊体は勝手に天界に登っていく。・・・・・・ちょっと待ってよ。まだ、娘にお別れに言葉も言えてないわよ!
「神様ぁーー! なぜいきなり、呼び戻すのよ?」
「天使を全て集合させたのはワシだ? おやぁーー? なぜ元人間が天使になっている? しかもこの生命力の数値、まだ死ぬべき魂じゃなかったな?」
「天界・冥界・人界全てを治める大神様。えっとこの者は・・・・・・隣国の王に毒殺されておりまして・・・・・・」
「いや、毒殺されるべき魂ではないな。これは、少なくともあと50年は生きるはずの魂だ。だから、前世の記憶も消えていなかっただろう? 天界の神よ、また人界を操作して天界をハーレム化しようとしたな!」
「ひやぁーー。申し訳ございません。ちょっとした出来心で・・・・・・」
「・・・・・・私の命、どう償ってもらえるのよ?」
なんとなく状況がつかめた私はその大神様に詰め寄った。
大神様はおっしゃったわ。生き返らせてくれると。けれど・・・・・・
私が生き返っても、この二つの国はやがて戦争になり我が国は属国に『エドにぃにぃ』も夫もアイビーも殺される運命だと言われた。私だけは生き残って革命を起こす? なによ、そのシナリオが本当のシナリオなの? ・・・・・・誰も幸せにならないじゃない!
「ちょっと待ってよ。そんな未来なんて許容できないわ! 生き返らなくていいわよ。あの王を抹殺してやる」
「そんなことをしたらお前は、今度こそ消滅だぞ! 天国にも行けぬし、生まれ変わることもできぬ。こら! 待ちなさい!」
「地獄だろうがなんだろうが怖くないわ! 女はね、大事な物を守るためには男より潔いのよ」
大神様を無視して下界に降りると、アイビーにささやいた。
「ママはいつでもあなたの心の中にいるわ」
「エドにぃにぃ、アイビーのこと頼んだわよ! タイムリミットなのよ。さよなら」
「エリック! アイビーをしっかり育てなさいよ! いつも側で見張ってやるからね」
私は隣国スロラム王国の王、ジェームズ・スロラムの側近に取り憑いた。この男はさまざまな悪事に手を染めていた。
このジェームズが兄の王太子をかつて毒殺した証拠や、弟をも毒殺しようとしていることを側近達に暴露させるよう仕向ける。
平民にも多くの危害を加え貴族達には横暴な命令ばかりをしていたジェームズは、たちまち追い詰められていった。
「ジェームズ・スロラムは極刑に処す」
この男は兄を殺した罪により八つ裂きの刑になるらしい。私はその刑が決まってから側近の身体を抜け出した。
朝の光に溶けて消滅していく私の魂。悔いはない。この先、生き返っても私の愛する者達が全て死ぬ地獄を見るのなら、これが私のするべきことなんだと思えた。
淡い光に溶けてそよ風に流されてアイビーの傍らにそよそよとそそぐ一陣の風になりたい。
消滅していく魂は、キラキラと輝きながら四方に散っていったのだった。
おまけ
アイビーはそれから、エドワード・エンジェル国王と正妃の養女として迎えられ、その傍らには王宮にほぼ住みついているオスカー公爵の姿があった。
笑顔を取り戻したアイビーの口癖は「ひまし油を飲ませるわよ!」だった。
「本当にイヌはもうアイビーのなかにはいないのだろうか?」
オスカー公爵はエドワード・エンジェル国王陛下に訊ねた。
「あぁ、いないようだな。だが、イヌの遺伝子はあの子の中にきらめいているよ。そういう意味ではイヌは死んでいない。いつも私達と一緒だ」
おまけ
アンナとミランダ、その他の使用人は、異国で厳しい躾をされているとアイビーは聞かされましたが、二度とその顔を見ることはありませんでした。
アイビーは二人の兄(王子達)に溺愛され、王妃殿下には実の娘のように可愛がられました。二人のお父様(国王陛下とオスカー公爵)は、もちろんデレデレだったことは言うまでもありません。
アイビーは愛すべき家族のなかで、お母様(イレーヌ・エンジェル王女殿下)の愛に感謝しつつこれからも生きていくでしょう。
「お母様! 天使になって来てくれてありがとう!」
アイビーの髪をさっと揺らしたその風は、もしかしたらイレーヌ・エンジェル王女殿下だったのかもしれません。
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