(完結)私は産まれてはいけなかったの?(お母様が助けるわ !)

青空一夏

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番外編

10 ジェームズ・スロラム国王の断罪・末路 ※残酷注意 R15またはR18?

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※残酷です。年齢に拘わらず、残酷描写が苦手な方は読まないでください。☠💀











 私はここスロラム王国の第2王子として生を受けた。初めは2歳年上の兄アリストテレスがたまらなく好きだった。生まれながらに気品に溢れ賢いと評判の兄は憧れだ。

――兄のように賢く、なんでもできるような人間になりたい!

 努力をしたが元より出来が違うのだろう。なにをやっても兄には遠く及ばない。

「ジェームズ! そんなに落ち込むことはないよ。お前のできることをすればいい。人はそれぞれ与えられたものが違う」
 私が失敗するたびに、声を掛けてくれる兄に私を心底ムカついた。

――その優しい目と穏やかな口調、善人ぶるのも大概にしろよ! 兄は私が自分より劣っているのを心の底ではあざ笑い、ほっとしているに違いない。私にその地位を脅かされるに済むものな!


ーー優秀すぎる兄がいるから私が霞むんだよ。だったら兄がこの世からいなくなればいい! 馬の蹄に特殊な構造の歩けば歩くほど足に針がささっていくものがつくれないかな。


 馬丁の娘を人質にとり無理矢理その細工を作らせ装備させると、馬丁とともにその娘をも自殺を装い殺した。もちろん、遺書は王太子の馬に細工をしたという罪の告白だ。

 娘を殺すと終始脅して望み通りの行動をさせた私はこの馬丁の愚かさに呆れる。バカな馬丁め! 不思議なのは、言うとおりにすれば娘が助かると思っていたことだ。普通に考えろ? 娘も殺すに決まってるだろ? この小細工を知る者が生きていちゃ困るんだよ。私は完璧主義者だ。

 細工の仕組まれた馬に乗った兄は、暴れ狂う馬に振り落とされめちゃくちゃに踏みつけられたらしく、遺体の損傷はすさまじかった。

ーーあぁ、かわいそうに。馬は相当足が痛かったんだろうなぁ。あの馬は見事な体つきの綺麗な白馬だったのに殺されたのはとても残念だ。王太子を振り落として死に至らしめた馬だから当然の処置だろうが・・・・・・もったいないなぁ。



 国をあげて悲しんだ天才の兄上の死。だが、それは私が栄光の道を歩む第一歩だ。

――私はいずれ近隣諸国を征服し、皇帝に君臨する最強の男になるんだ!

 だから軍を強化する為に民から搾り取った税金を兵器の購入にあて、兵士にも鍛錬をつませ国力を押し上げるように地道にそこは努力したものさ。軍事力! これさえあれば、なにも怖くはない! 

 民の暮し? そんなものどうだっていいね。平民なんて私の為にいる奴隷だろう? 私は神なんだよ!

 ところが、そんな私も恋をした。それは隣国の王女、イレーヌ・エンジェル。あの妖精のような容姿に驚き、話しの面白さにも惚れた。

 出会いは、隣国の調査の為に身分を隠して忍び込んだ舞踏会。一目ぼれだ。会話をしてみると機知の富んだ受け答えが返ってきて、この女を妻にしたい思った。



 後日、正式に打診した『正妃に迎えたい』という申し出にあっさりと断りの書状が届いた。諦めきれず、エンジェル国にスロラム国王として出向き再度のプロポーズ。



「妹にはすでにエリック・オスカー公爵という婚約者がおりまして、お互い好き合っておりますれば、ご容赦のほどを・・・・・・」

 そんな言葉でエドワード・エンジェル国王に丁重に断られた私だ。いや、この私が妻にと望んだのだぞ? なにをバカをぬかしている? そう詰め寄って怒鳴れば、当の王女殿下が奥の部屋から出てきてのたまう。

「大変、申し訳ございません。ジェームズ・スロラム国王陛下のお心はありがたく、もったいないと感謝いたします。ただ、幼い頃からエリックの妻にと思い育ってまいりましたので・・・・・・」
 
ーー綺麗なカーテシーをしながら困ったように微笑む王女よ。お前は私がこれからこの世界を統一する皇帝になる男だと、なぜわからない?

「貴女には皇妃の座こそ似合う! 私はこれから近隣諸国を征服し皇帝になり、貴女を皇妃にしてあげよう。どんな贅沢もさせてやる! 欲しいものはなんでも与えるから」

「陛下。ものではないのです。私が欲しいものは普通の幸せなのです。大好きな方と人生をともに
し・・・・・・」





―ーあの糞女! 私に説教までたれやがった。こうなれば可愛さ余って憎さ百倍だ。この私に逆らったことを時間をかけて後悔させてやろう。将来授かるかもしれないお前の子供にもな!


 それから数年経ってもイレーヌ・エンジェル王女への執着心は消えることはなかった。あの糞女がオスカー公爵夫人になっても、それは変わらない。

ーー私を拒んだ罰をお前は受けるべきなんだ! オスカー公爵家のことは終始監視してやるからな!






「我が国の精神病院にオスカー公爵家からアンナという女が入院しました」

 部下の言葉に愉快な笑いを漏らした私だ。

 私はみずからそこに行き、その女に呼びかけた。『素直に欲望に従え』と。

 元から邪悪な愚か者は私の手足となってイレーヌを殺した。足のつかない毒薬を渡し、お産で死んだことにされたイレーヌ! なんてまぬけな死に方だ。

 あんまり嬉しくて私がみずからオスカー公爵家に乗り込み、元いた使用人には大金を渡し解雇し、連れてきた使用人と入れ替えた。怪しんだ侍女長と執事はもちろん殺した。

 その死体は切り刻み、海の沖あいに投げ捨てた。魚のエサにするのが1番だな。死体がなければそもそも犯罪なんてなかったのと同じことだ。


「なぁ、アンナ! この赤子がいなくなればオスカー公爵はお前のものだ。あのバカ公爵は妻を愛しすぎて赤子を疎んじるはずだ。屋敷に寄りつかないようにして、隔離しろ。妻と子を亡くしたら、公爵の心は壊れてお前のものになる」

 適当なことを言って、その気にさせた私。この女は、素晴らしいバカだから大丈夫だ。見事にやりきってくれる。




 それから7年後に、いかれた女と子供も仲間に引き込んだと手紙が来ていた。あいつらは実に面白い。本当に公爵に振り向いてもらえると信じて疑わないアンナ、自分が公爵夫人だと思い込んで振る舞うミランダ、公爵令嬢だと思い込む鍛冶屋と下女の間に産まれたウィロー。



ーーおい、イレーヌ・エンジェル王女よ。お前はキチガイの侍女に毒を盛られ、残された娘は下女と鍛冶屋の卑しい生まれの小娘にいじめられ自殺するんだよ? なぁ、こんな面白い茶番劇ってないよな。天国で思いっきり悔しがれ!












ーーだが、なんで今こうなっている?
ーー私の悪事をなぜ側近が全てばらす? 側近だって無罪にはならぬのに、なんでだ?




「・・・・・・王太子殺害の罪により八つ裂きの刑に処す!」

 その判決を聞いた時の側近の顔に、イレーヌ・エンジェル王女の微笑みを見た気がした。まだ、私はあの女が忘れられないのか・・・・・・











 ここはコロッセウム。今日の為に観客は着飾って見物に来ていた。周りには出店が連なり、空は快晴、風は爽やか、絶好の処刑日和。私はなぜか、甲冑を着させられ手には槍。


「せっかく見物人も多いから、ライオンと戦ってみてね!」
と、新しい王となった弟ジョバンニがにこやかに私に話しかけた。

「お前、実の兄になんということを!」

「あっははは。ジェームズ兄上に言われたくないよ。天才のアリストテレス兄上を殺しておいて。死をもって償え! 私はアリストテレス兄上が大好きだった。お前のような糞は見せしめのためにも散々苦しめば良い」



 百獣の王が放たれ、こちらにゆっくりと歩いてくる。槍でひと突きしてそれが獣の肩をかすると、ひと鳴きして猛然と襲いかかってくる。

 右足をガブリと噛まれると、焼け付くような痛みが走る。獣の牙が食い込み、さらに深く・・・・・・の寸前で獣使いが鞭でとめる。

「このまま死なすわけがないだろう?」
 私の弟がさっと手を横にふりあげた。

ーー今度はなんだ?




 四方から投げられる石? アリストテレス兄上の元側近達が小石をもって投げつける。死なないように大きな石ではなく、急所はわざとはずす。

「できそこないが天才アリストテレス様を殺しやがって!」
「お前なんて産まれてこなければよかったんだ!」
「なにひとつアリストテレス様に叶わなかった愚人のくせに!」

 そして、歩み寄ってくる。鋭利なナイフを持って。



「まずは指の爪を剥がさせろよ?」

―うがあぁあっぁあぁーー。やめろぉーー!! やめてくれよ。

「ふっふ。こんなものじゃ済まないよ。まだ指は9本あるだろ? 足にも指があるしね」

 手足20本の爪をゆっくりと剥がされ、脂汗がたれる。獣に噛まれた足はご丁寧に治療してくれて包帯も巻かれた。

――いや、殺すならこのまま出血多量で死なせろよ!!

 赤く焼けたコテが私の額に押しつけられた。肉の焼ける匂いに吐き気がする。さらにそれは右目に押し当てられ・・・・・・

ーーぎゃぁああああああああああーー!! 目が、目が・・・・・・なんて酷いことをするんだ! 殺すならなぜすぐに殺さない? これは生き地獄だ。

 

「片目は残してあげよう。なぜって? 自分がどんなめにあうのか左目で見て恐怖を味わうためにね。すぐに殺さないよ。今日はもうお終い。その傷は少し癒やしてよ。3日後には八つ裂きにしてあげるからね」


 私は今度は上等の部屋に運ばれ、ワインも食事も素晴らしいものが出された。傷は聖女がやってきて、半分だけきっちり癒やして去っていった。

 この三日間で私は考える。なにがいけなかったんだろう? どうしても自分のせいとは思えない。兄上が邪魔だった。兄弟で殺し合ってなぜ悪い? 権力者はみんなやっているよ。

 反省するべきは、やはり側近に裏切られたことか。裏切られる前に殺しておけば良かったんだ!








 私は今タイマツで両腕、両足を念入りにあぶり焼かれて、少しづつナイフでそぎ落とされていく。

 痛みで気絶はできない。意識を失いかけると氷水がかけられて目がさめて激痛に絶叫する。

――やめろ。頼むからひと思いに死なせろよ! こんな拷問、誰が考えたんだ?






 やっと、手足に頑丈なロープが縛られ、馬に結びつけられる。だが、ここでも執行をわざと遅らせる念のいりよう。待っている間の恐怖ははかりしれない。2時間ほど放置され、その間中いつ引きちぎられるのかと恐ろしさで何度も失禁した。

 突然、前触れもなくそれは始まった。

 それぞれの馬に四肢を力任せに引っ張られ、まずは肩が裂けて、手足が四方に飛び散ったのだった。

――ぎゃぁああああああああああーー!! ・・・・・・あ・・・・・・あ・・・・・・ぁ
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