(本編完結・番外編不定期更新)愛を教えてくれた人

青空一夏

文字の大きさ
38 / 58

38  礼子さんに妊活の報告 

しおりを挟む
「柊君! 私達、子供をつくろう!」

「うん。僕たちの赤ちゃんを礼子さんに抱いてもらいたいよね!」

 私達は啓吾先生や真美さんにも相談したんだ。もちろん、二人は大賛成してくれた。

「二人とも若いから特別なことをしなくても、自然に妊娠はできると思うけれど一応婦人科で診察もした方がいいかもしれないね。柊も子供ができるか調べたほうがいいだろう」
 啓吾先生は私達にそう説明すると、早速近くの病院を検索してくれていた。

「地元なら知り合いの医師も多いからすぐにでも頼めるんだが、都内だとあまり知り合いがいないからなぁ」
 柊君のお父さんの啓吾先生は地元の大学の医学部出身で、県外から出たことはないと言った。

「どこの病院でもいいです。まずは、私達が子供ができる身体か、調べたほうがいいってことですよね?」

 そう言えば健一叔父さんと真美さんも不妊治療をしたことがあったけれど、結局は諦めたみたいなことを言っていたっけ。

 子供ができないって考えてみたこともなかったし、実際それで悩んでいる人も少なくないって聞いてびっくりした。


 それから数日後、婦人科でした検査や柊君の検査でお互い健康体であることがわかった。まずは自然な形での妊活ということで基礎体温を毎日つけることになった。

 それによって、妊娠しやすい日がわかるんだって。しなきゃいけない日が決められるって、儀式みたいで嫌だなって思ったけれど、礼子さんに絶対赤ちゃんを見せてあげたいから私達は頑張ることにした。




 

 礼子さんは、しばらく入院していたけれど定期的に病院に通うことで、いったんはマンションに戻った。
この手術の結果は礼子さんに医師から伝えられた。礼子さんが本当の病状を知りたがったそうだ。

「あと1年・・・・・・もっと生きていたいけれど紬ちゃんという娘がもてて、とても幸せだったわ。ごめんね、紬ちゃんの子供を抱いて皆で花火が見たかったけれど・・・・・・でも最期の時まで精一杯生きるわ!」

「・・・・・・私ね、妊活することにした! 私の子供に名前をつけて抱っこしてほしいんだ! だから、お願い! そこまで生きていてほしいよ。絵の個展の話もいただいていて、この前のコンクールにも入賞したよ。お母さんに負けないくらい、私も有名になっていつかは絶対追い越してみせる! 本当は、そうなるのをずっと見ていて欲しかったけど・・・・・・」

 そう言いながら、やっぱり私は泣いていた。

「妊活? ふふふっ。無理をしなくていいのよ。自然にできればいいし、紬ちゃんが幸せになってくれればそれでいいのよ。さて、忙しくなるわ。力が尽きるまで絵筆を握るのと、遺産の管理もいろいろきっちりしないとね。全てを紬ちゃんに残すわ。実はもう遺言状も弁護士に預けてあるわ」

「え? 遺言状? 遺産なんて・・・・・・要らないよ・・・・・・お母さんが死んだあとのことなんか言わないでよ」

「ふふっ。大丈夫だよ。死んだって、いなくなるわけじゃないから。ずっといるよ。紬ちゃんの心の中にね!」

 そう言いながら微笑む礼子さんは、余命1年にはあまりに若すぎて綺麗な女性だった。

 私は、時間の流れをとめたい。このまま、時間が止まればいいのに!!

しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...