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10 未来の公爵夫人はマリーで決まり (マリーside) / どんどん貧乏、そうだ爵位をマリーに譲って……(ローズside)
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ーマリーsideー
「どうぞ、こちらのお部屋でお待ちくださいませ。すぐに店主が参りますので」
フィンレーと同行したマリーに、店員は上位貴族専用の応接室に通す。
「デスティニー公爵家の御用向きならばこちらからお伺いしましたのに……わざわざのご足労、ありがとうございます」
店のオーナーが1分もしないうちに現れ自ら接客し始めた。紅茶と試食用に数多のチョコレイトを上品にデザート皿に盛ってしずしずとやって来る店員。どの店員も洗練されよく教育されている。
「いい店だな。それに、うん。このチョコレイトは甘いが俺にも合うな。この苦みのあるタイプがうまい。俺の部下にも食べさせてやるかな。ほろ苦いそれほど甘くないタイプを10箱と母上が好きそうなミルクがたっぷり配合された甘いものを20箱。マリーが好きなものは50箱、購入しよう」
フィンレーの最後の言葉にキラリと眼を輝かせたオーナーはマリーに最上級の礼をし、恭しく尋ねる。
「どうぞ、高貴なお方。お好きなチョコレイトをなんなりとお申し付けくださいませ。未来の公爵夫人の為ならばマリー様の為だけに特別なチョコレイトもお作りしましょう。マリー様をイメージしたチョコレイト菓子を作らせていただく栄誉を私めにどうかお与えください」
「え! 私はただのエルサ様の家庭教師です。未来の公爵夫人なんてとんでもないです!フィンレー様に失礼ですわ」
マリーは仰天して叫んだが店のオーナーは、「うんうん、これからですね」と意味深な言葉を呟き楽しげに笑って応接室を後にしたのだった。
デスティニー公爵家は貴族社会では珍しく政略結婚を良しとしない。これは政略結婚に頼らなくても揺るぎない地位と莫大な資産を抱えているからできることだった。ゆえに代々、この一族は恋愛結婚を推奨してきたのである。そして当主は平民ですら夫人に迎えることができた。先々代の当主夫人は大商人の娘ではあったが平民だったのである。
「マリー様には最上級のおもてなしをしてさしあがろ! デスティニー公爵家の男は惚れた女は必ず夫人に迎える。ふふふ。あの様子じゃぁ、マリー様に逃げ場はないな」
応接室の鏡はオーナーが客の様子を確認することができるようマジックミラーになっていた。そのミラーにはフィンレーが愛おしい女性にチョコレイトを食べさせる様子が映し出されていたのである。
マリーはフィンレーが差し出すチョコレイトをその手から取ろうとしてフィンレーに「違うな」と窘められた。
「いいかい? この場合の正しい作法は口を大きく開けることだよ」
マリーは戸惑いながらも口をひな鳥のように開けて……マリーの舌にそっとチョコレイト置いたフィンレーは満足気に微笑んだのだった。
マリーが頬を染める様子に「公爵家の結婚式にはぜひチョコレイトケーキを開発して献上しなければ……」いそいそと仕事場に戻るオーナだった。
ーローズsideー
一方、ローズは六つ子という異常な事態に、大きすぎるお腹を抱え身動きができなくなっていた。吐き気とその後におとずれる異常な食欲。ローズ本人も入れて7人分の食事を摂ると吐く。吐くからまた食べる。エンドレスである。加えてライアンまでがそのようなことになっているのだから、キャメロン家の食費はこの夫妻だけで実に14人分にもなった。
ローズは領主としては凡庸、ライアンは文官としては並。領地経営は次第に傾きライアンはたび重なる欠勤に降格されていた。おまけに有能な執事や使用人はフィンレーによって公爵家に全て引き抜かれていたのだ。侍女ですら一人もいなくなりメイド二人しかいない今、部屋は荒れ果て庭にも草が生い茂る。
「困ったわ。借金がどんどん増えていくのはなぜよ? ライアン、なんとかしてよっ! あんた、男でしょう?」
「いや、このつわりのとばっちりで僕も出仕できずに降格、ついにはクビと先日通知が来たよ。もうどうしていいかわからないよぉ。うっぷ! うげぇ~」
「なんてことなの! もう爵位を手放すしかないじゃない。どうしよう……」
「あ、マリーに爵位を譲ってフィンレー様から金をせしめようよ。あの方は宮廷魔法使いなんだろ? トップシークレット扱いの宮廷魔法使いの年俸は宰相の2倍らしい」
「宰相の2倍? 嘘でしょう? 宰相の年俸だってこのキャメロン伯爵家の年収のおよそ5倍だって聞いているわよ」
「あぁ、あるところには金が有り余っているんだよな。マリーに爵位を譲れば高額をきっと払ってくれるよ。フィンレー様は僕のお古がお気に召したらしいから」
「うふふ。とてもいい案よね? うげぇ~、また気持ち悪くなってきたわ」
「うぶっ。僕もさっきの3倍も気持ち悪いよ。このつわりは異常だよ。なぜ僕までこのようなことになるんだよぉぉお」
「それは……うっぷ……フィンレー、絶対あいつのせいよっ!」
ローズがそう呟いた瞬間、王宮の宮廷魔法使い専用の豪奢な執務室でフィンレーが声をあげて笑った。フィンレーの目の前の大きな水晶の球には、キャメロン家が映っていたのである。
「また虫けらをからかっているのですか? 宮廷魔法使い様もお人が悪い。それほどこの二人が憎いのですか?」
部下の一人がクビを捻って尋ねる。
「あぁ、殺したいほど憎いね。だがこの女は俺の大事なマリーの実の姉だからそうもいかないのさ。しかし俺の女を泣かせた罪はとてつもなく重い!特にこの男……許せんな……」
部下の男達は大いに納得した。デスティニー公爵家の男は愛する女の為には命すら賭ける溺愛気質で有名だったのである。
「どうぞ、こちらのお部屋でお待ちくださいませ。すぐに店主が参りますので」
フィンレーと同行したマリーに、店員は上位貴族専用の応接室に通す。
「デスティニー公爵家の御用向きならばこちらからお伺いしましたのに……わざわざのご足労、ありがとうございます」
店のオーナーが1分もしないうちに現れ自ら接客し始めた。紅茶と試食用に数多のチョコレイトを上品にデザート皿に盛ってしずしずとやって来る店員。どの店員も洗練されよく教育されている。
「いい店だな。それに、うん。このチョコレイトは甘いが俺にも合うな。この苦みのあるタイプがうまい。俺の部下にも食べさせてやるかな。ほろ苦いそれほど甘くないタイプを10箱と母上が好きそうなミルクがたっぷり配合された甘いものを20箱。マリーが好きなものは50箱、購入しよう」
フィンレーの最後の言葉にキラリと眼を輝かせたオーナーはマリーに最上級の礼をし、恭しく尋ねる。
「どうぞ、高貴なお方。お好きなチョコレイトをなんなりとお申し付けくださいませ。未来の公爵夫人の為ならばマリー様の為だけに特別なチョコレイトもお作りしましょう。マリー様をイメージしたチョコレイト菓子を作らせていただく栄誉を私めにどうかお与えください」
「え! 私はただのエルサ様の家庭教師です。未来の公爵夫人なんてとんでもないです!フィンレー様に失礼ですわ」
マリーは仰天して叫んだが店のオーナーは、「うんうん、これからですね」と意味深な言葉を呟き楽しげに笑って応接室を後にしたのだった。
デスティニー公爵家は貴族社会では珍しく政略結婚を良しとしない。これは政略結婚に頼らなくても揺るぎない地位と莫大な資産を抱えているからできることだった。ゆえに代々、この一族は恋愛結婚を推奨してきたのである。そして当主は平民ですら夫人に迎えることができた。先々代の当主夫人は大商人の娘ではあったが平民だったのである。
「マリー様には最上級のおもてなしをしてさしあがろ! デスティニー公爵家の男は惚れた女は必ず夫人に迎える。ふふふ。あの様子じゃぁ、マリー様に逃げ場はないな」
応接室の鏡はオーナーが客の様子を確認することができるようマジックミラーになっていた。そのミラーにはフィンレーが愛おしい女性にチョコレイトを食べさせる様子が映し出されていたのである。
マリーはフィンレーが差し出すチョコレイトをその手から取ろうとしてフィンレーに「違うな」と窘められた。
「いいかい? この場合の正しい作法は口を大きく開けることだよ」
マリーは戸惑いながらも口をひな鳥のように開けて……マリーの舌にそっとチョコレイト置いたフィンレーは満足気に微笑んだのだった。
マリーが頬を染める様子に「公爵家の結婚式にはぜひチョコレイトケーキを開発して献上しなければ……」いそいそと仕事場に戻るオーナだった。
ーローズsideー
一方、ローズは六つ子という異常な事態に、大きすぎるお腹を抱え身動きができなくなっていた。吐き気とその後におとずれる異常な食欲。ローズ本人も入れて7人分の食事を摂ると吐く。吐くからまた食べる。エンドレスである。加えてライアンまでがそのようなことになっているのだから、キャメロン家の食費はこの夫妻だけで実に14人分にもなった。
ローズは領主としては凡庸、ライアンは文官としては並。領地経営は次第に傾きライアンはたび重なる欠勤に降格されていた。おまけに有能な執事や使用人はフィンレーによって公爵家に全て引き抜かれていたのだ。侍女ですら一人もいなくなりメイド二人しかいない今、部屋は荒れ果て庭にも草が生い茂る。
「困ったわ。借金がどんどん増えていくのはなぜよ? ライアン、なんとかしてよっ! あんた、男でしょう?」
「いや、このつわりのとばっちりで僕も出仕できずに降格、ついにはクビと先日通知が来たよ。もうどうしていいかわからないよぉ。うっぷ! うげぇ~」
「なんてことなの! もう爵位を手放すしかないじゃない。どうしよう……」
「あ、マリーに爵位を譲ってフィンレー様から金をせしめようよ。あの方は宮廷魔法使いなんだろ? トップシークレット扱いの宮廷魔法使いの年俸は宰相の2倍らしい」
「宰相の2倍? 嘘でしょう? 宰相の年俸だってこのキャメロン伯爵家の年収のおよそ5倍だって聞いているわよ」
「あぁ、あるところには金が有り余っているんだよな。マリーに爵位を譲れば高額をきっと払ってくれるよ。フィンレー様は僕のお古がお気に召したらしいから」
「うふふ。とてもいい案よね? うげぇ~、また気持ち悪くなってきたわ」
「うぶっ。僕もさっきの3倍も気持ち悪いよ。このつわりは異常だよ。なぜ僕までこのようなことになるんだよぉぉお」
「それは……うっぷ……フィンレー、絶対あいつのせいよっ!」
ローズがそう呟いた瞬間、王宮の宮廷魔法使い専用の豪奢な執務室でフィンレーが声をあげて笑った。フィンレーの目の前の大きな水晶の球には、キャメロン家が映っていたのである。
「また虫けらをからかっているのですか? 宮廷魔法使い様もお人が悪い。それほどこの二人が憎いのですか?」
部下の一人がクビを捻って尋ねる。
「あぁ、殺したいほど憎いね。だがこの女は俺の大事なマリーの実の姉だからそうもいかないのさ。しかし俺の女を泣かせた罪はとてつもなく重い!特にこの男……許せんな……」
部下の男達は大いに納得した。デスティニー公爵家の男は愛する女の為には命すら賭ける溺愛気質で有名だったのである。
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