(完結)辺境伯の一人息子に婚約破棄された美貌の子爵令嬢はスパダリに愛される

青空一夏

文字の大きさ
2 / 6

2 お互いが不幸な関係 ワガママーナside / ソラside

しおりを挟む
🍀ワガママーナside


「ソラ、あなたは髪の結い方が雑なのよ? 本当に不器用な人ねぇ! だから子爵令嬢なんて嫌だったのよ! あなたがベントレー様に側にいたいからと頼んだのでしょう? どこまで図々しいのかしら」
ワガママーナはソラがベントレーの婚約者だったことを知りながらも自らの侍女にすることを承諾したが、それは決して優しい気持ちからではなかった。美しいけれど身分の低いソラを侍女として置いておけばいつでも貶めることができるからであった。

(これほどの美貌だもの。王都にでも行って高位貴族の侍女にでもなられたら玉の輿に乗って幸せな結婚をしちゃうわ。私の夫の元婚約者が私より幸せになるなんて許せないわよ! ソラは私の侍女として一生飼い殺してやる!)

どす黒い意地の悪い気持ちがこみ上げてくるワガママーナにとってソラはなにをしても気にくわない侍女なのである。


「ねぇ、子爵令嬢って惨めよね? そんなに綺麗でも好きな男性は王女である私に取られて、おまけに私の侍女になるなんて女としてのプライドもないのね」

「辺境伯家のご命令ですから子爵令嬢の私が逆らえるはずもありません。両親にも逆らえませんし・・・・・・」

「嘘をおっしゃい! ソラがベントレー様を諦められなくてここにいるのでしょう? ソラが泣いて頼むから仕方なくとスノーホワイト辺境伯様はおっしゃっていたわ。私は心の広い優しい王女だから承諾してあげたのよ。でも実際は貴方の性根はあさましいし反吐がでるわよ。きっとベントレーを誘惑しようとして私の侍女になりたがったのでしょう?」
容赦なく扇で手を叩かれ、赤く染まった手の甲に血が滲む。扇の飾りのサファイアが凶器となってソラの皮膚を裂いたからである。

血が流れた手の甲を意地悪く眺めて思いっきり高笑いをするワガママーナはさらにソラに言葉を投げつけた。
「私の扇を血で汚した罰だわ。今日の夕飯は水だけよ。下がりなさい」

「かしこまりました。ですが私はそのような気持ちは全く持っておりません」
気丈にもそう答えたソラの頬を思わず叩きそうになりグッと堪えた。

(顔に傷をつけるのは目立ちすぎてまずいわ。それにしても侍女の質素な服を着ていながら私より美しいなんて癪に障るわ。あの悲しげな顔だってわざとらしいのよっ! ベントレー様はソラをチラチラと見ることをやめないし・・・・・・あぁ、いらつく!)

ワガママーナは腹いせに固い定規を手に持ちソラの背中に向かって振り下ろした。愛しい夫の心に少しでも居座っている女の存在は許せないけれど、それを手元に置いて痛めつけるのも一興なのだった。そんなドロドロの感情に支配されていたワガママーナが囚われていたのは恋する女の猛烈な嫉妬心だけである。

(ふん! 背中なら服をきていれば痣になってもわからないわよね)







🍀ソラside


 ソラは天空から雪が舞う窓の外を見やりながらあの幼い頃を思い出していた。あの三日間はベントレーと仲良く雪の上を転がり回り心の底から笑うことができたのに・・・・・・今はほんの少し微笑む為に口角をあげることすら難しいのだった。

「かしこまりました。ですが私はそのような気持ちは全く持っておりません」
ベントレーを誘惑する気など毛頭ないソラは丁重にそう答えたが、余計にワガママーナを怒らせたようであった。

背中に鋭い痛みが走り、長く固い定規で叩かれたと知る。

(いっそのこと剣で刺し殺してくれればいいのに・・・・・・)

 毎日が地獄のようなソラにとってもうこの世界にいるべき理由は見いだせないのだった。
ソラに割り当てられた部屋の暖炉には薪もなく、家具は古びたベッドとライティングデスクと固い椅子のみ。
侍女というよりは下女の部屋で生活をし、毎回ワガママーナに嫌みを言われ時には折檻まで受けるのだ。


 ベントレーがワガママーナと仲睦まじく時を過ごす様を見るにつけ、ソラの心に雪が少しづつ降り積もっていく。それは氷の塊になり冷たく心の底に積まれていき、もう溶けることは決してないに違いない。

「おめでとうございます! ご懐妊です」
ワガママーナに子供ができたことが判明した瞬間の医師の言葉は、ソラには遠い異国の言葉のように無機質に響いたのだった。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

断罪されそうになった侯爵令嬢が頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるに至るまでの話。

あの時削ぎ落とした欲
恋愛
流されるままに生きていた侯爵令嬢エリスは、元平民の自由奔放な少女と出会うことで心を取り戻していく。 ショートショート『断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。』の前日譚です。

【完結】辺境伯令嬢は国境で騎士領主になりたいのに!

葉桜鹿乃
恋愛
辺境伯令嬢バーバレラ・ドミニクは日夜剣と政治、国境の守りに必要な交渉術や社交性、地理といった勉強に励んでいた。いずれ、辺境伯となった時、騎士として最前線に立ち国を守る、そんな夢を持っていた。 社交界には興味はなく、王都に行ったこともない。 一人娘なのもあって、いつかは誰か婿をとって家督は自分が継ぐと言って譲らず、父親に成人した17の時に誓約書まで書かせていた。 そして20歳の初夏に差し掛かる頃、王都と領地を往来する両親が青い顔で帰ってきた。 何事かと話を聞いたら、バーバレラが生まれる前に父親は「互いの子が20歳まで独身なら結婚させよう」と、親友の前公爵と約束を交わして、酒の勢いで証書まで書いて母印を押していたらしい?! その上王都では、バーバレラの凄まじい悪評(あだ名は『怪物姫』)がいつの間にか広がっていて……?! お相手は1つ年上の、文武両道・眉目秀麗・社交性にだけは難あり毒舌無愛想という現公爵セルゲウス・ユージーンで……このままだとバーバレラは公爵夫人になる事に! そして、セルゲウスはバーバレラを何故かとても溺愛したがっていた?! そのタイミングを見計らっていたように、隣の領地のお婿さん候補だった、伯爵家次男坊まで求愛をしに寄ってきた!が、その次男坊、バーバレラの前でだけは高圧的なモラハラ男……?! 波瀾万丈のコメディタッチなすれ違い婚姻譚!ハッピーエンドは保証します! ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも別名義で掲載予定です。 ※1日1話更新、できるだけ2話更新を目指しますが力尽きていた時はすみません。長いお話では無いので待っていてください。

「聖女失格」と追放された令嬢ですが、辺境伯に溺愛されて覚醒しました

桜月あいす
恋愛
妹に婚約者を奪われ、「聖女の素質なし」と王都から追放された伯爵令嬢リュシエル。 唯一の「罪滅ぼし」として与えられたのは、死地と呼ばれる辺境への嫁入りだった。 冷たい目をした若き辺境伯レオニス。 政略の犠牲として押しつけられた自分が、彼の邪魔にならないようにと、リュシエルはひたむきに役目を果たしていく。 ──ただ、ほんの少しでも、この地で必要とされたいと願って。 けれどある日、彼の言葉と腕に抱かれた夜、リュシエルの中で何かが目覚めた。 聖女失格と捨てられた令嬢が、愛と誇りを取り戻す、溺愛×ざまぁの甘く熱い逆転劇。

王太子殿下から逃げようとしたら、もふもふ誘拐罪で逮捕されて軟禁されました!!

屋月 トム伽
恋愛
ルティナス王国の王太子殿下ヴォルフラム・ルティナス王子。銀髪に、王族には珍しい緋色の瞳を持つ彼は、容姿端麗、魔法も使える誰もが結婚したいと思える殿下。 そのヴォルフラム殿下の婚約者は、聖女と決まっていた。そして、聖女であったセリア・ブランディア伯爵令嬢が、婚約者と決められた。 それなのに、数ヶ月前から、セリアの聖女の力が不安定になっていった。そして、妹のルチアに聖女の力が顕現し始めた。 その頃から、ヴォルフラム殿下がルチアに近づき始めた。そんなある日、セリアはルチアにバルコニーから突き落とされた。 突き落とされて目覚めた時には、セリアの身体に小さな狼がいた。毛並みの良さから、逃走資金に銀色の毛を売ろうと考えていると、ヴォルフラム殿下に見つかってしまい、もふもふ誘拐罪で捕まってしまった。 その時から、ヴォルフラム殿下の離宮に軟禁されて、もふもふ誘拐罪の償いとして、聖獣様のお世話をすることになるが……。

婚約破棄された侯爵令嬢、帝国最強騎士に拾われて溺愛される

夜桜
恋愛
婚約者である元老院議員ディアベルに裏切られ、夜会で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢ルイン。 さらにバルコニーから突き落とされ、命を落としかけた彼女を救ったのは、帝国自由騎士であるジョイアだった。 目を覚ましたルインは、落下のショックで記憶を失っていた。 優しく寄り添い守ってくれるジョイアのもとで、失われた過去と本当の自分を探し始める。 一方、ルインが生きていると知ったディアベルと愛人セリエは、再び彼女を排除しようと暗躍する。 しかし、ルインの中に眠っていた錬金術師としての才能が覚醒し、ジョイアや父の助けを得て、裏切った元婚約者に立ち向かう力を取り戻していく。

『沈黙の聖女』と呼ばれ蔑まれる私ですが、喋れない代わりに『神々の心の声』が全部聞こえるので、そろそろ神託(と称して暴露)の時間です

白桃
恋愛
言葉を失った聖女候補、アリアンナ。神殿で「役立たず」と虐げられる彼女の唯一の慰めは、神々の(かなり俗っぽい)心の声を聞くことだった。ある日、ライバルにいじめられているところを、真面目な騎士団長ライオスに助けられる。彼もまた、内心ではアリアンナを心配し、惹かれているようで…? 声なき聖女候補と、その心の声(と神々の声)が織りなす、ちょっと不思議で心温まる恋物語が今はじまる。

結婚相手が見つからないので家を出ます~気づけばなぜか麗しき公爵様の婚約者(仮)になっていました~

Na20
恋愛
私、レイラ・ハーストンは結婚適齢期である十八歳になっても婚約者がいない。積極的に婿探しをするも全戦全敗の日々。 これはもう仕方がない。 結婚相手が見つからないので家は弟に任せて、私は家を出ることにしよう。 私はある日見つけた求人を手に、遠く離れたキルシュタイン公爵領へと向かうことしたのだった。 ※ご都合主義ですので軽い気持ちでさら~っとお読みください ※小説家になろう様でも掲載しています

【完結】旦那様に隠し子がいるようです。でも可愛いから全然OK!

曽根原ツタ
恋愛
 実家の借金返済のため、多額の支度金を用意してくれるという公爵に嫁ぐことを父親から押し付けられるスフィミア。冷酷無慈悲、引きこもりこ好色家と有名な公爵だが、超ポジティブな彼女は全く気にせずあっさり縁談を受けた。  公爵家で出迎えてくれたのは、五歳くらいの小さな男の子だった。 (まぁ、隠し子がいらっしゃったのね。知らされていなかったけれど、可愛いから全然OK!)  そして、ちょっとやそっとじゃ動じないポジティブ公爵夫人が、可愛い子どもを溺愛する日々が始まる。    一方、多額の支度金を手に入れたスフィミアの家族は、破滅の一途を辿っていて……? ☆小説家になろう様でも公開中

処理中です...