[完結]出来損ないと言われた令嬢、実は規格外でした!

青空一夏

文字の大きさ
17 / 29

16 真の聖女 

しおりを挟む
 追い詰められたメルバは震える手を伸ばし、国王陛下の上にかざした。瞬間、眩い光がほとばしり、大聖堂の空気を揺らし――その輝きに、場のあちらこちらからどよめきが漏れる。

  「おお! まさか、本当に癒しの奇跡を・・・・・・?」
  「本物の聖女だったのか?」
 一瞬だけ、誰もが息を呑んだ。

 だが、光が消え去った後も、国王陛下は苦しげに胸を押さえたまま、うめき声を漏らしていた。顔色は蒼白のまま、容態に変化はない。

 静寂を裂くように、最初は小さな失笑が貴族達から漏れた。

  「なんだ、見かけ倒しか」
  「結局、口ばかりの聖女だな。いや、聖女でも何でもないか。ただの嘘つきだな」
  「眩しく光っただけで、何も癒せてはいないではないか! 偽物め!」

 やがてその嘲りは波紋のように広がり、冷笑と軽蔑が大聖堂全体を覆っていった。
 
 「メルバ! もっと本気を出せ! 何をしている!」

 お父様が青ざめた顔で立ち上がり、娘を叱咤する声を大聖堂に響かせた。苛立ちと狼狽が滲んだ声音だった。

 その傍らで、アメリは顔面蒼白のまま震えていた。唇を噛みしめ、絞り出すように声を上げる。
 「メ、メルバは、今日は体調が優れないのですわ。だから、きっと本来の力を出せないのです」
 必死の弁明も空しく、貴族たちの視線は冷たさを増していくばかりだった。
 
 国王陛下は相変わらず苦しそうで・・・・・・放っておけず、気がつけば体が動いていた。私は国王陛下の前に跪き、両手をかざす。緊張で手が小刻みに震えた。

 怖い。もし私が失敗したら・・・・・・。けれど、目の前で苦しむ陛下をただ見ていることなどできなかった。

 ――次の瞬間。

 私の掌から、まばゆいばかりの光があふれ出した。さきほどメルバが放った光など比べものにならない、圧倒的な輝きが大聖堂を満たしていく。高い天井のステンドグラスが光を受けて虹色にきらめき、ざわめいていた人々が思わず息を呑んだ。

 眩しさの中で、国王陛下の顔色が徐々に変わっていくのがわかる。青ざめていた頬に血の気が戻り、荒かった呼吸も落ち着いていく。

 「おお・・・・・・」

  驚嘆の声があがる。誰のものか分からない。けれど、大聖堂のあちらこちらから、畏敬のざわめきが広がっていった。

 やがて光が収まったとき、国王陛下はゆっくりと身を起こされた。先ほどまで苦しげにうずくまっていたとは思えないほど、凛々しい眼差しで貴族たちを見渡す。

 「胸を締めつけていた痛みが消えた。これほど清々しい気分は久しくなかったぞ」

 陛下が静かにそうおっしゃると、大聖堂内がどよめきに包まれた。私は汗を滲ませながらも、両手を下ろした。張り詰めていた息がようやく吐き出せ、ほっとする。

 「なんと・・・・・・回復なされたぞ!」
 「おお、陛下が・・・・・・!」
 「たちまち苦しみが消え去るとは・・・・・・まるで奇跡ではないか」
 周囲の貴族たちが口々に声を上げた。

 「やはり、あの黒髪の女性こそ・・・・・・本物の聖女に違いない!」
 彼らの視線が一斉に私へ注がれた。私はどう反応すればよいのか分からず、ただ戸惑うばかりだった。

 「この女性こそ真の聖女――スカーレット嬢なのです。さあ、元の姿に戻っておくれ」

 スチュアート様の言葉に従い、私は指輪を外した。瞬く間に黒髪は燃えるようなルビー色へ、瞳は深いサファイアブルーへと戻っていく。

 「そっ、そんな・・・・・・どうして生きているの? おかしいじゃない」

 アメリとメルバが、幽霊でも見たかのように青ざめ、怯えきった声でつぶやいた。その言葉は、あまりに不用意で、しかし紛れもなく彼女たちの本音だった。

 そして、それはしっかりと国王陛下の耳に届いていた。

 「今の発言、聞き捨てならぬ。なぜ、スカーレット嬢が生きているとおかしいのだ? 貴様ら、一体どういうつもりで口にしたのか、余の前で明らかにせよ!」

 国王陛下の声は低く、大聖堂を震わせるほどの怒気に満ちていたのだった。
 
 
 




しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】 聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。 「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」 甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!? 追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。

魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす

三谷朱花
恋愛
 ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。  ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。  伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。  そして、告げられた両親の死の真相。  家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。    絶望しかなかった。  涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。  雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。  そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。  ルーナは死を待つしか他になかった。  途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。  そして、ルーナがその温もりを感じた日。  ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。

【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます

コトミ
恋愛
 セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。 「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」  困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。

地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!

日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」    学園のアイドル、マルスからの突然の告白。  憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。 「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」  親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。 「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。

「華がない」と婚約破棄された私が、王家主催の舞踏会で人気です。

百谷シカ
恋愛
「君には『華』というものがない。そんな妻は必要ない」 いるんだかいないんだかわからない、存在感のない私。 ニネヴィー伯爵令嬢ローズマリー・ボイスは婚約を破棄された。 「無難な妻を選んだつもりが、こうも無能な娘を生むとは」 父も私を見放し、母は意気消沈。 唯一の望みは、年末に控えた王家主催の舞踏会。 第1王子フランシス殿下と第2王子ピーター殿下の花嫁選びが行われる。 高望みはしない。 でも多くの貴族が集う舞踏会にはチャンスがある……はず。 「これで結果を出せなければお前を修道院に入れて離婚する」 父は無慈悲で母は絶望。 そんな私の推薦人となったのは、ゼント伯爵ジョシュア・ロス卿だった。 「ローズマリー、君は可愛い。君は君であれば完璧なんだ」 メルー侯爵令息でもありピーター殿下の親友でもあるゼント伯爵。 彼は私に勇気をくれた。希望をくれた。 初めて私自身を見て、褒めてくれる人だった。 3ヶ月の準備期間を経て迎える王家主催の舞踏会。 華がないという理由で婚約破棄された私は、私のままだった。 でも最有力候補と噂されたレーテルカルノ伯爵令嬢と共に注目の的。 そして親友が推薦した花嫁候補にピーター殿下はとても好意的だった。 でも、私の心は…… =================== (他「エブリスタ」様に投稿)

処理中です...