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1 義理の妹に嵌められました
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ーーウリ男爵家のサロンにてーー
「なんで、お前はさぁ~~子供の一人も産めねぇんだよぉ! 顔だけ綺麗でも跡継ぎも産めねぇんじゃ、不良品だなっつ!」
頬を叩かれ腹を蹴られて泣き叫んでも、夫の両親はそれを笑って見ているだけです。夫は酔っ払いヘラヘラと笑いながら、私を叩くのです。
ここは地獄なのでしょう? 死んだら……素敵な世界に行けますか? それほど夢のようなところでなくてもいいのです。せめて殴られず、トゲだらけの言葉をなげつけられない世界に行きたい……
私は2年前まではアーリア・ヴァーノン侯爵令嬢でした。このようなことになったのは、義理の妹のイェーナの策略にはまったからです……あの貴族だけが通う学園で王太子殿下に見初められた私に、イェーナが仕掛けた罠は醜悪なものでした。
☆彡★彡☆彡
ーー2年前の学園にてーー
「お姉様、王太子殿下がお呼びですわ。資料室に来てほしいのですって」
「資料室……?」
私はなぜ妹の言葉を素直に信じたのでしょう。そこには以前から私につきまとっていた素行の悪いウリ男爵嫡男のカールが待ち構えていたのでした。
必死に抵抗をするも、男の力には勝つこともできず……
「あら、お姉様。また、このようなところでカールと密会していたのね? あれほどお止めになるよう忠告してさしあげたのに。しかも、今日はいつもよりずいぶん激しくなさったみたいね? すっかり髪が乱れていましてよ?」
その直後に妹は王太子殿下を伴って現れ、にまにまと笑いながら私に声をかけました。
ドレスは破かれ髪も乱れた私の身になにが起こったか、すぐに察した王太子殿下は汚いものを見るような眼差しで私を眺めています。
「お姉様は、もとからカールと恋仲ですわ」
「あぁ、アーリアと俺はずっと前からこういう関係だ」
☆彡★彡☆彡
イェーナとカールのこの言葉で王太子殿下からはすっかり軽蔑され、私は無理矢理カールに嫁がされたのでした。
どんなにお父様に説明しても信じてもらえず、持参金も持たされずウリ男爵家に嫁いだ私には、乱暴者のカールから虐待される日々が待っていました。
義理の妹はその後、王太子妃になりましたが、たまにウリ男爵家にやって来て私をあざ笑います。
「あっははは。かつては、月の女神様と謳われたお姉様のなんてみすぼらしいこと! そのドレスは雑巾より色あせているではありませんか! カール、この女はいくらでも殴っていいですわ。王太子殿下の好意を受け取りながら浮気していた大罪人ですからねぇ」
「はい、王太子妃殿下。この女は私の奴隷ですよ! 見目麗しいから正妻にしてやったのに、跡継ぎも産まねぇんだ。娼館にでも売り飛ばすかなぁ。この女を庇う奴なんてこの世に一人もいないからなぁーー」
「えぇ。お父様は私だけが実の娘だとおっしゃっています。この姉は多分、お父様の先妻が浮気でもしてつくった子でしょう」
神様……お願いします……あの日に戻らせてほしいのです……あの2年前の日に……今度はあの妹には騙されない。
お父様はあの後妻が来るまでは私を溺愛してくださったのに……お母様が亡くなってなにもかもが変わった……
私に庇ってくれる身内はいない……その通りです。……お母様のお兄様はエフレイン・アンバー侯爵様だけれど、お母様はアンバー侯爵様に背きました。
お母様がお父様を愛して、アンバー侯爵様の反対を押し切って嫁いだからだと聞かされています。婚姻後は一度も会わないままお母様は亡くなりました。
当主の意向に背いた者は、当主から許されない限り自分から会いにいくことはできない。それは兄妹でも変わらない常識です。
だから……私もお会いしたことはないし、このような立場になっては二度と会うこともかなわないでしょう。
私も伯父様にお会いしたことが一度でもあれば、庇ってくださっただろうか? 女だけれど身を守る技ぐらい覚えておけばカールから逃げ出せたのだろか? あの義理の妹が邪悪なことがわかっていて資料室に行かなければ、こんなことにはならなかったのだろうか?
私はそんなことを思い浮かべながら、夫から娼館に売られたその日に、そこに向かう途中の馬車の事故で亡くなった……はずでした。
☆彡★彡☆彡
目覚めれば実家にいて、専属侍女のイワナが私の部屋に入ってくるところでした。
「イワナ……田舎に帰ったのじゃないのね……」
「へ? 田舎にですか? まさか。私はずっとアーリア様に、お仕えますよ」
「……私ね。どうやら長い夢を見ていたようよ? 今日の日にちを教えてちょうだい」
私が聞いた日付は、ちょうどお母様がなくなる一週間前です。私は早速身支度を整えて、お母様にお会いします。病で一年近く寝込んだお母様は記憶の通りに痩せ細っています。しっかりと抱きしめて、お母様の面影を目に焼き付けます。こうして再会できたことが夢のようでしたが、ぐずぐずしている暇はありません。
「お母様。アンバー侯爵様にお会いしたくありませんか?」
「え? お兄様に?……それは、もちろん会いたいわ……でも……お兄様に逆らってウンベルトと一緒になった私です。こちらからは会いにいくこともできません」
「お手紙だけでも書いてみましょう。私も書きます。病で一年近くも具合が悪いこともお知らせしましょう」
私はお母様を説得して、まずは伯父様に会うことからはじめようとしています。以前はしなかったことを積み重ねていきます。明るい未来を手に入れるために!
「なんで、お前はさぁ~~子供の一人も産めねぇんだよぉ! 顔だけ綺麗でも跡継ぎも産めねぇんじゃ、不良品だなっつ!」
頬を叩かれ腹を蹴られて泣き叫んでも、夫の両親はそれを笑って見ているだけです。夫は酔っ払いヘラヘラと笑いながら、私を叩くのです。
ここは地獄なのでしょう? 死んだら……素敵な世界に行けますか? それほど夢のようなところでなくてもいいのです。せめて殴られず、トゲだらけの言葉をなげつけられない世界に行きたい……
私は2年前まではアーリア・ヴァーノン侯爵令嬢でした。このようなことになったのは、義理の妹のイェーナの策略にはまったからです……あの貴族だけが通う学園で王太子殿下に見初められた私に、イェーナが仕掛けた罠は醜悪なものでした。
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ーー2年前の学園にてーー
「お姉様、王太子殿下がお呼びですわ。資料室に来てほしいのですって」
「資料室……?」
私はなぜ妹の言葉を素直に信じたのでしょう。そこには以前から私につきまとっていた素行の悪いウリ男爵嫡男のカールが待ち構えていたのでした。
必死に抵抗をするも、男の力には勝つこともできず……
「あら、お姉様。また、このようなところでカールと密会していたのね? あれほどお止めになるよう忠告してさしあげたのに。しかも、今日はいつもよりずいぶん激しくなさったみたいね? すっかり髪が乱れていましてよ?」
その直後に妹は王太子殿下を伴って現れ、にまにまと笑いながら私に声をかけました。
ドレスは破かれ髪も乱れた私の身になにが起こったか、すぐに察した王太子殿下は汚いものを見るような眼差しで私を眺めています。
「お姉様は、もとからカールと恋仲ですわ」
「あぁ、アーリアと俺はずっと前からこういう関係だ」
☆彡★彡☆彡
イェーナとカールのこの言葉で王太子殿下からはすっかり軽蔑され、私は無理矢理カールに嫁がされたのでした。
どんなにお父様に説明しても信じてもらえず、持参金も持たされずウリ男爵家に嫁いだ私には、乱暴者のカールから虐待される日々が待っていました。
義理の妹はその後、王太子妃になりましたが、たまにウリ男爵家にやって来て私をあざ笑います。
「あっははは。かつては、月の女神様と謳われたお姉様のなんてみすぼらしいこと! そのドレスは雑巾より色あせているではありませんか! カール、この女はいくらでも殴っていいですわ。王太子殿下の好意を受け取りながら浮気していた大罪人ですからねぇ」
「はい、王太子妃殿下。この女は私の奴隷ですよ! 見目麗しいから正妻にしてやったのに、跡継ぎも産まねぇんだ。娼館にでも売り飛ばすかなぁ。この女を庇う奴なんてこの世に一人もいないからなぁーー」
「えぇ。お父様は私だけが実の娘だとおっしゃっています。この姉は多分、お父様の先妻が浮気でもしてつくった子でしょう」
神様……お願いします……あの日に戻らせてほしいのです……あの2年前の日に……今度はあの妹には騙されない。
お父様はあの後妻が来るまでは私を溺愛してくださったのに……お母様が亡くなってなにもかもが変わった……
私に庇ってくれる身内はいない……その通りです。……お母様のお兄様はエフレイン・アンバー侯爵様だけれど、お母様はアンバー侯爵様に背きました。
お母様がお父様を愛して、アンバー侯爵様の反対を押し切って嫁いだからだと聞かされています。婚姻後は一度も会わないままお母様は亡くなりました。
当主の意向に背いた者は、当主から許されない限り自分から会いにいくことはできない。それは兄妹でも変わらない常識です。
だから……私もお会いしたことはないし、このような立場になっては二度と会うこともかなわないでしょう。
私も伯父様にお会いしたことが一度でもあれば、庇ってくださっただろうか? 女だけれど身を守る技ぐらい覚えておけばカールから逃げ出せたのだろか? あの義理の妹が邪悪なことがわかっていて資料室に行かなければ、こんなことにはならなかったのだろうか?
私はそんなことを思い浮かべながら、夫から娼館に売られたその日に、そこに向かう途中の馬車の事故で亡くなった……はずでした。
☆彡★彡☆彡
目覚めれば実家にいて、専属侍女のイワナが私の部屋に入ってくるところでした。
「イワナ……田舎に帰ったのじゃないのね……」
「へ? 田舎にですか? まさか。私はずっとアーリア様に、お仕えますよ」
「……私ね。どうやら長い夢を見ていたようよ? 今日の日にちを教えてちょうだい」
私が聞いた日付は、ちょうどお母様がなくなる一週間前です。私は早速身支度を整えて、お母様にお会いします。病で一年近く寝込んだお母様は記憶の通りに痩せ細っています。しっかりと抱きしめて、お母様の面影を目に焼き付けます。こうして再会できたことが夢のようでしたが、ぐずぐずしている暇はありません。
「お母様。アンバー侯爵様にお会いしたくありませんか?」
「え? お兄様に?……それは、もちろん会いたいわ……でも……お兄様に逆らってウンベルトと一緒になった私です。こちらからは会いにいくこともできません」
「お手紙だけでも書いてみましょう。私も書きます。病で一年近くも具合が悪いこともお知らせしましょう」
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