(完結)妹に情けをかけたら追い出されました(全5話)

青空一夏

文字の大きさ
4 / 10

4 ルビー&ルカ大商会ができた

しおりを挟む
「まぁ、ルカ様。このようなところで奇遇ですわね? 今のお話は本当ですか?」

「えぇ、本当ですよ。その若い男は、たちが悪いヒモのような奴でした。サファイアは金遣いも荒くて、注意しても少しも直らない。外泊することも頻繁にありました」

「まぁ、そんなこととは知らなくて・・・・・あの時は、よくルカ様の話も聞かずにごめんなさい」

「いいんですよ。俺も早く離婚したかったですから。ルビーさんは妹思いのお姉さんだなって感心していましたし、そんなあなたの心が踏みにじられなければいいと願ってましたから。姉が妹の味方をするのは当然ですよ。ルビーさんは悪くないです」

 
「ここで立ち話もなんですから、僕たちと一緒に呑みませんか? 今日はルビー商会、立ち上げのお目出度い日ですからね!」
 助手の一人がルカ様を誘う。

「ルビー商会? すごいですね! 離婚を機に新たに商会を立ち上げるなんて」

「いいえ、ルーベン商会から私の部署だけが独立するというだけですわ。私が調香した香水の権利は、王家に申請済みで守られていますので」

「へぇーー。俺は陶器職人なんで、香水のような洒落た業界のことはよく知りません。買ったこともないですしね。あのキツい香りは苦手なんですよ」

「従来の香水はとても濃度が濃くて、そう言う方は多かったですよね。私の調香するものはもっと自然で、ほのかな香りを楽しむものなんですよ。ところで、ルカ様が陶器職人? それは初めて聞いたような気がします。陶器を焼くなんて素敵だわ。陶芸って、してみたいことの一つでしたもの」

「なら、どうぞ俺の工房に来てくださいよ。独立したばかりで小さな工房ですけど。あぁ、女性一人で来るのもまずいか・・・・・・なんなら、陶器に興味がある誰かを誘って・・・・・・」

「あら、私もやってみたいわ」
「面白そう! 僕もやってみちゃダメかな?」
 助手2人が早速手をあげた。

「どうぞ、皆さんで来てくださいよ!」




☆彡・.。*☆彡




 ルビー商会が休日のある日、助手の2人を連れて工房にお邪魔した。そこは、こじんまりとしているがとても整頓されており、几帳面な性格なことがうかがえる。

「手回しろくろは、中央に粘土を置いたら手でまわしながら形を整えていってください。ほら、こんなふうにね?」
 
 ルカ様の丁寧な説明に、初心者の私でも満足のいくティーカップを作ることができた。調香する時間も楽しい時間ではあったけれど、こうして新しい事に挑戦するのはとても新鮮だ。

「うん、その手つきはとても良いです。この持ち手はもう少し細くした方がいいかもしれないですね。あぁ、上手だなぁ。とても器用だ」

「初めてとは思えないほど素敵なティーカップができましたね。ルビー様は才能がありますよ」

 ルカ様に何度も褒められた私は、心がふわりと温かくなる。


 
 夫からは一度も褒められたことはない。私が調香師として初めてルーベン商会に雇われたのはずいぶん昔のことだけれど、その香水が初めて大ヒットしたときに喜んでくれて「すごいな」と言っただけ。

 やがて彼の妻になると私の香水はヒットするのが当たり前で、少しでも売り上げがいかないと貶すようになった。   貴族の方達のお茶会にも頻繁にお招きいただき人脈も作ってきた私だが、夫は華やかな場所は気後れすると言い一度も出ずじまい。

 ルーベン商会が安定した大きな利益をあげるようになっていくと、夫はそれを使うことばかりを考え、香水の調合・部下達の管理やら社交界でのお付き合い(お得意様への対応)等は妻の私に全て丸投げする。


 お陰でルーベン商会の実権は、ほぼ私が握っている形になり結果的に良かったわ・・・・・・なんて、もの思いにふけっていると、工房の隅にとても鮮やかなバラが描かれたティーカップセットを見つけた。




「ルカ様。あのティーカップはとても素敵ですね? あのバラは見事ですわ。女性が特に好むデザインだと思います」

「あぁ、あれは試作品なんですよ。ちょっと派手かなとは思ったんですけど深紅のバラをカップに描きました。実は俺、陶芸も好きだけど絵描きにもなりたかったから」

「素晴らしいわ! これをお借りしてもいいかしら? 明日の伯爵家のお茶会に持っていきたいわ。きっと良い反響が得られてよ?」

「え? 貴族の方にですか? ダメですよ。こんなのが貴族様のお気に召すわけがない」

「いいえ、絶対気に入ってくださるわ。そうだ、ルカ様も一緒に出席してみたらどうかしら?」

「え、いや・・・・・・俺は・・・・・・」



☆彡・.。*☆彡




 辞退しようとするルカ様を着飾らせ、一緒にお茶会に出席。よく見たら、ルカ様はかなり美形だったことに気づく。今まで妹の夫というだけで顔もよく見ていなかった私は、ちょっとだけドキリとした。

 サロンで寛ぐ貴婦人方は、ルカ様を見てパッと顔を輝かせる。やはりイケメンはそこに存在するだけで女性の気持ちを高揚させてくれるのだ。
 その日は新作香水の予約が殺到し、私は嬉しい悲鳴をあげた。


 


「ところでお知らせがあります。私の香水は今後、ルーベン商会から独立したルビー商会が扱うことになります」
 
「まぁ、急なお話ね。なにかあったの?」

「ルビー商会、なんて素敵な響きだこと。応援するわ!」

「ありがとうございます。夫が妹を選び屋敷を追い出されたので独立してみました」
 私は苦笑しながらも、ありのままを話していた。こんな時は隠さず正直に言ったほうが、貴婦人方の同情も引けるという計算もあった。

 案の定、貴婦人方は一瞬ポカンとした後、顔を真っ赤にして怒りだした。

「はぁ? 冗談じゃありませんわ。もう一切ルーベンス商会からはなにも買いませんわ」

「まったくですわ。最低の男性ですこと!」

「で、そちらの男性は?」

「妹の元夫ですの。妹に暴力夫の濡れ衣を着せられた可哀想な男性なのですわ・・・・・・でも、とても腕の良い陶器職人でして・・・・・・」

 ルカ様は例のティーカップを見せて、たちまち人気者になっていく。彼の焼き物と絵の才能は社交界に広く知れ渡るようになった。

 

 私はルカ様に繊細な季節の花々を描いた香水瓶を作ってもらった。そこに私の香水を詰めて売ると、かつてないほどの売り上げをみせ諸外国にまで販路が広がっていく。

 やがて私とルカ様は共同経営者として協力しあい、私達のルビー&ルカ商会は大商会になっていった。




 一方、私の元夫と妹サファイアは・・・・・・

しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

妹が処刑さる……あの、あれは全て妹にあげたんです。

MME
恋愛
妹が好きだ。妹が欲しい物はみんなあげる。それであの娘が喜ぶなら何だって。それが婚約者だって。どうして皆が怒っているんだろう。お願いです妹を処刑しないで下さい。あれはあげたんです。私が我慢すればいいのです。

私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?

狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」 「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」 「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」 「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」 「だから、お前の夫が俺だって──」 少しずつ日差しが強くなっている頃。 昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。 ……誰コイツ。

私との婚約を破棄した王子が捕まりました。良かった。良かった。

狼狼3
恋愛
冤罪のような物を掛けられて何故か婚約を破棄された私ですが、婚約破棄をしてきた相手は、気付けば逮捕されていた。 そんな元婚約者の相手の今なんか知らずに、私は優雅に爺とお茶を飲む。

奈落を封印する聖女ですが、可愛い妹が追放されたので、国を見捨てる事にしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 ファンケン公爵家の長女クラリスは本来家を継ぐ立場だった。だが奈落の底に住む魔族を封印する奈落の聖女に選ばれてしまった。聖なる役目を果たすため、クラリスは聖女となり、次女のエレノアが後継者となった。それから五年、両親が相次いで亡くなり、エレノアは女性ながら公爵となり莫大な資産を引き継いだ。その財産に目をつけたのが、日頃から素行の悪い王太子アキーレヌだった。愛人のキアナと結託し、罠を仕掛けた。まず国王を動かし、エレノアを王太子の婚約者とした。その上で強引に婚前交渉を迫り、エレノアが王太子を叩くように仕向け、不敬罪でお家断絶・私財没収・国外追放刑とした。それを奈落を封じる神殿で聞いたクラリスは激怒して、国を見捨てエレノアと一緒に隣国に行くことにしたのだった。

初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」 男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。 初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。 その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。 しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。 社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。 一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。  ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...