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4 ルビー&ルカ大商会ができた
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「まぁ、ルカ様。このようなところで奇遇ですわね? 今のお話は本当ですか?」
「えぇ、本当ですよ。その若い男は、たちが悪いヒモのような奴でした。サファイアは金遣いも荒くて、注意しても少しも直らない。外泊することも頻繁にありました」
「まぁ、そんなこととは知らなくて・・・・・あの時は、よくルカ様の話も聞かずにごめんなさい」
「いいんですよ。俺も早く離婚したかったですから。ルビーさんは妹思いのお姉さんだなって感心していましたし、そんなあなたの心が踏みにじられなければいいと願ってましたから。姉が妹の味方をするのは当然ですよ。ルビーさんは悪くないです」
「ここで立ち話もなんですから、僕たちと一緒に呑みませんか? 今日はルビー商会、立ち上げのお目出度い日ですからね!」
助手の一人がルカ様を誘う。
「ルビー商会? すごいですね! 離婚を機に新たに商会を立ち上げるなんて」
「いいえ、ルーベン商会から私の部署だけが独立するというだけですわ。私が調香した香水の権利は、王家に申請済みで守られていますので」
「へぇーー。俺は陶器職人なんで、香水のような洒落た業界のことはよく知りません。買ったこともないですしね。あのキツい香りは苦手なんですよ」
「従来の香水はとても濃度が濃くて、そう言う方は多かったですよね。私の調香するものはもっと自然で、ほのかな香りを楽しむものなんですよ。ところで、ルカ様が陶器職人? それは初めて聞いたような気がします。陶器を焼くなんて素敵だわ。陶芸って、してみたいことの一つでしたもの」
「なら、どうぞ俺の工房に来てくださいよ。独立したばかりで小さな工房ですけど。あぁ、女性一人で来るのもまずいか・・・・・・なんなら、陶器に興味がある誰かを誘って・・・・・・」
「あら、私もやってみたいわ」
「面白そう! 僕もやってみちゃダメかな?」
助手2人が早速手をあげた。
「どうぞ、皆さんで来てくださいよ!」
☆彡・.。*☆彡
ルビー商会が休日のある日、助手の2人を連れて工房にお邪魔した。そこは、こじんまりとしているがとても整頓されており、几帳面な性格なことがうかがえる。
「手回しろくろは、中央に粘土を置いたら手でまわしながら形を整えていってください。ほら、こんなふうにね?」
ルカ様の丁寧な説明に、初心者の私でも満足のいくティーカップを作ることができた。調香する時間も楽しい時間ではあったけれど、こうして新しい事に挑戦するのはとても新鮮だ。
「うん、その手つきはとても良いです。この持ち手はもう少し細くした方がいいかもしれないですね。あぁ、上手だなぁ。とても器用だ」
「初めてとは思えないほど素敵なティーカップができましたね。ルビー様は才能がありますよ」
ルカ様に何度も褒められた私は、心がふわりと温かくなる。
夫からは一度も褒められたことはない。私が調香師として初めてルーベン商会に雇われたのはずいぶん昔のことだけれど、その香水が初めて大ヒットしたときに喜んでくれて「すごいな」と言っただけ。
やがて彼の妻になると私の香水はヒットするのが当たり前で、少しでも売り上げがいかないと貶すようになった。 貴族の方達のお茶会にも頻繁にお招きいただき人脈も作ってきた私だが、夫は華やかな場所は気後れすると言い一度も出ずじまい。
ルーベン商会が安定した大きな利益をあげるようになっていくと、夫はそれを使うことばかりを考え、香水の調合・部下達の管理やら社交界でのお付き合い(お得意様への対応)等は妻の私に全て丸投げする。
お陰でルーベン商会の実権は、ほぼ私が握っている形になり結果的に良かったわ・・・・・・なんて、もの思いにふけっていると、工房の隅にとても鮮やかなバラが描かれたティーカップセットを見つけた。
「ルカ様。あのティーカップはとても素敵ですね? あのバラは見事ですわ。女性が特に好むデザインだと思います」
「あぁ、あれは試作品なんですよ。ちょっと派手かなとは思ったんですけど深紅のバラをカップに描きました。実は俺、陶芸も好きだけど絵描きにもなりたかったから」
「素晴らしいわ! これをお借りしてもいいかしら? 明日の伯爵家のお茶会に持っていきたいわ。きっと良い反響が得られてよ?」
「え? 貴族の方にですか? ダメですよ。こんなのが貴族様のお気に召すわけがない」
「いいえ、絶対気に入ってくださるわ。そうだ、ルカ様も一緒に出席してみたらどうかしら?」
「え、いや・・・・・・俺は・・・・・・」
☆彡・.。*☆彡
辞退しようとするルカ様を着飾らせ、一緒にお茶会に出席。よく見たら、ルカ様はかなり美形だったことに気づく。今まで妹の夫というだけで顔もよく見ていなかった私は、ちょっとだけドキリとした。
サロンで寛ぐ貴婦人方は、ルカ様を見てパッと顔を輝かせる。やはりイケメンはそこに存在するだけで女性の気持ちを高揚させてくれるのだ。
その日は新作香水の予約が殺到し、私は嬉しい悲鳴をあげた。
「ところでお知らせがあります。私の香水は今後、ルーベン商会から独立したルビー商会が扱うことになります」
「まぁ、急なお話ね。なにかあったの?」
「ルビー商会、なんて素敵な響きだこと。応援するわ!」
「ありがとうございます。夫が妹を選び屋敷を追い出されたので独立してみました」
私は苦笑しながらも、ありのままを話していた。こんな時は隠さず正直に言ったほうが、貴婦人方の同情も引けるという計算もあった。
案の定、貴婦人方は一瞬ポカンとした後、顔を真っ赤にして怒りだした。
「はぁ? 冗談じゃありませんわ。もう一切ルーベンス商会からはなにも買いませんわ」
「まったくですわ。最低の男性ですこと!」
「で、そちらの男性は?」
「妹の元夫ですの。妹に暴力夫の濡れ衣を着せられた可哀想な男性なのですわ・・・・・・でも、とても腕の良い陶器職人でして・・・・・・」
ルカ様は例のティーカップを見せて、たちまち人気者になっていく。彼の焼き物と絵の才能は社交界に広く知れ渡るようになった。
私はルカ様に繊細な季節の花々を描いた香水瓶を作ってもらった。そこに私の香水を詰めて売ると、かつてないほどの売り上げをみせ諸外国にまで販路が広がっていく。
やがて私とルカ様は共同経営者として協力しあい、私達のルビー&ルカ商会は大商会になっていった。
一方、私の元夫と妹サファイアは・・・・・・
「えぇ、本当ですよ。その若い男は、たちが悪いヒモのような奴でした。サファイアは金遣いも荒くて、注意しても少しも直らない。外泊することも頻繁にありました」
「まぁ、そんなこととは知らなくて・・・・・あの時は、よくルカ様の話も聞かずにごめんなさい」
「いいんですよ。俺も早く離婚したかったですから。ルビーさんは妹思いのお姉さんだなって感心していましたし、そんなあなたの心が踏みにじられなければいいと願ってましたから。姉が妹の味方をするのは当然ですよ。ルビーさんは悪くないです」
「ここで立ち話もなんですから、僕たちと一緒に呑みませんか? 今日はルビー商会、立ち上げのお目出度い日ですからね!」
助手の一人がルカ様を誘う。
「ルビー商会? すごいですね! 離婚を機に新たに商会を立ち上げるなんて」
「いいえ、ルーベン商会から私の部署だけが独立するというだけですわ。私が調香した香水の権利は、王家に申請済みで守られていますので」
「へぇーー。俺は陶器職人なんで、香水のような洒落た業界のことはよく知りません。買ったこともないですしね。あのキツい香りは苦手なんですよ」
「従来の香水はとても濃度が濃くて、そう言う方は多かったですよね。私の調香するものはもっと自然で、ほのかな香りを楽しむものなんですよ。ところで、ルカ様が陶器職人? それは初めて聞いたような気がします。陶器を焼くなんて素敵だわ。陶芸って、してみたいことの一つでしたもの」
「なら、どうぞ俺の工房に来てくださいよ。独立したばかりで小さな工房ですけど。あぁ、女性一人で来るのもまずいか・・・・・・なんなら、陶器に興味がある誰かを誘って・・・・・・」
「あら、私もやってみたいわ」
「面白そう! 僕もやってみちゃダメかな?」
助手2人が早速手をあげた。
「どうぞ、皆さんで来てくださいよ!」
☆彡・.。*☆彡
ルビー商会が休日のある日、助手の2人を連れて工房にお邪魔した。そこは、こじんまりとしているがとても整頓されており、几帳面な性格なことがうかがえる。
「手回しろくろは、中央に粘土を置いたら手でまわしながら形を整えていってください。ほら、こんなふうにね?」
ルカ様の丁寧な説明に、初心者の私でも満足のいくティーカップを作ることができた。調香する時間も楽しい時間ではあったけれど、こうして新しい事に挑戦するのはとても新鮮だ。
「うん、その手つきはとても良いです。この持ち手はもう少し細くした方がいいかもしれないですね。あぁ、上手だなぁ。とても器用だ」
「初めてとは思えないほど素敵なティーカップができましたね。ルビー様は才能がありますよ」
ルカ様に何度も褒められた私は、心がふわりと温かくなる。
夫からは一度も褒められたことはない。私が調香師として初めてルーベン商会に雇われたのはずいぶん昔のことだけれど、その香水が初めて大ヒットしたときに喜んでくれて「すごいな」と言っただけ。
やがて彼の妻になると私の香水はヒットするのが当たり前で、少しでも売り上げがいかないと貶すようになった。 貴族の方達のお茶会にも頻繁にお招きいただき人脈も作ってきた私だが、夫は華やかな場所は気後れすると言い一度も出ずじまい。
ルーベン商会が安定した大きな利益をあげるようになっていくと、夫はそれを使うことばかりを考え、香水の調合・部下達の管理やら社交界でのお付き合い(お得意様への対応)等は妻の私に全て丸投げする。
お陰でルーベン商会の実権は、ほぼ私が握っている形になり結果的に良かったわ・・・・・・なんて、もの思いにふけっていると、工房の隅にとても鮮やかなバラが描かれたティーカップセットを見つけた。
「ルカ様。あのティーカップはとても素敵ですね? あのバラは見事ですわ。女性が特に好むデザインだと思います」
「あぁ、あれは試作品なんですよ。ちょっと派手かなとは思ったんですけど深紅のバラをカップに描きました。実は俺、陶芸も好きだけど絵描きにもなりたかったから」
「素晴らしいわ! これをお借りしてもいいかしら? 明日の伯爵家のお茶会に持っていきたいわ。きっと良い反響が得られてよ?」
「え? 貴族の方にですか? ダメですよ。こんなのが貴族様のお気に召すわけがない」
「いいえ、絶対気に入ってくださるわ。そうだ、ルカ様も一緒に出席してみたらどうかしら?」
「え、いや・・・・・・俺は・・・・・・」
☆彡・.。*☆彡
辞退しようとするルカ様を着飾らせ、一緒にお茶会に出席。よく見たら、ルカ様はかなり美形だったことに気づく。今まで妹の夫というだけで顔もよく見ていなかった私は、ちょっとだけドキリとした。
サロンで寛ぐ貴婦人方は、ルカ様を見てパッと顔を輝かせる。やはりイケメンはそこに存在するだけで女性の気持ちを高揚させてくれるのだ。
その日は新作香水の予約が殺到し、私は嬉しい悲鳴をあげた。
「ところでお知らせがあります。私の香水は今後、ルーベン商会から独立したルビー商会が扱うことになります」
「まぁ、急なお話ね。なにかあったの?」
「ルビー商会、なんて素敵な響きだこと。応援するわ!」
「ありがとうございます。夫が妹を選び屋敷を追い出されたので独立してみました」
私は苦笑しながらも、ありのままを話していた。こんな時は隠さず正直に言ったほうが、貴婦人方の同情も引けるという計算もあった。
案の定、貴婦人方は一瞬ポカンとした後、顔を真っ赤にして怒りだした。
「はぁ? 冗談じゃありませんわ。もう一切ルーベンス商会からはなにも買いませんわ」
「まったくですわ。最低の男性ですこと!」
「で、そちらの男性は?」
「妹の元夫ですの。妹に暴力夫の濡れ衣を着せられた可哀想な男性なのですわ・・・・・・でも、とても腕の良い陶器職人でして・・・・・・」
ルカ様は例のティーカップを見せて、たちまち人気者になっていく。彼の焼き物と絵の才能は社交界に広く知れ渡るようになった。
私はルカ様に繊細な季節の花々を描いた香水瓶を作ってもらった。そこに私の香水を詰めて売ると、かつてないほどの売り上げをみせ諸外国にまで販路が広がっていく。
やがて私とルカ様は共同経営者として協力しあい、私達のルビー&ルカ商会は大商会になっていった。
一方、私の元夫と妹サファイアは・・・・・・
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