(完結)妹に情けをかけたら追い出されました(全5話)

青空一夏

文字の大きさ
9 / 10
番外編

その後のサファイアー3 

しおりを挟む
「そう言えば名前を言ってなかったな。俺の名前はテデイ。明日から俺は隣国へ旅立つから、今日が最後だ」

「えぇ、今日で最後ね。だったら、あなたの女装でなくて男性の格好が見たいわ。最後だから私と男性の姿で街を歩いてほしいの」

「はぁーー。そんなことをなんで強請るんだよ。面倒くさい奴・・・・・・俺に惚れたか?」

「うふふふ、まさか・・・・・・でもいいでしょう? 思い出にしたいの。私の旅の最後の思い出」

「そっか。まぁ、叶えてやるか」

 男性の服を着たテディも、やっぱりすっごく素敵だ。キラキラ光る金髪と、蒼く澄み渡る空を切り取ったような瞳。高い鼻梁に形のいい唇。

「綺麗ねぇ。テディって本当に綺麗だと思うわ。それに強いし優しい。私は一生忘れないわ。この10日間、ありがとう」
 私からお礼を言われたテディの顔は照れて真っ赤だ。

 最後のベネチララ。思いっきり楽しもう。


「サンマルコメ寺院の鐘楼に一緒に登りましょうよ。最後にベネチララの町並みとラグーンを見て目に焼き付けなきゃ」

「また行きたいのか? まぁ、いいけどな。あそこは混むから、これからすぐ行こう。早朝が空いてていいんだ」

 広場からの高さは90メートルほどある。そこからはこの国の素晴らしい町並みが広がる。頭上にある大きな鐘が鳴ると耳が割れるほど大きな音でびっくりする。慌てて耳を塞ぎ二人で大笑い。

 いつの間にか、手を繋ぎあってドドゥカーレ宮殿の豪華に装飾された部屋を見て回る。
「迷路みたいだから、迷子にならないようにな」
 そう言って私に伸ばした彼の手を、ずっと離したくない気がした。


 リアルトマ橋でお買い物をするのも楽しかった。ここはショッピングウォークで吹きガラスやジュエリーなどを買うことができる。

「これ、お姉様にとても似合いそうだわ。これを買う」

「お前さっきから、ねーさん、ねーさんって、自分のも買えよ」

「ううん、いらない。だって私はここの町並みとか運河とか、綺麗なものをたくさん心の中にしまっておけたから。ほら、あなたとも会えたしね!」

「そっか・・・・・・」
 テディは眩しそうな眼差しで私を見つめた。



 夕方になり一緒に夕食とワインを楽しみ、彼は私に小さな包みを差し出す。
「ほら、取っとけよ。お前に似合いそうなブレスレットがあったからな。俺からのプレゼントさ。たまにはそれを見て俺を思い出せ」

「まぁ、綺麗! ありがとう。ずっと大事にするね」
 スカイブルーのベネチラランガラスのブレスレットだ。その綺麗な色合いは彼の瞳と同じ。素直に嬉しい、と思った。



 ホテルに戻る途中のソットポルテゴ(トンネル)もテディがいるから怖くない。

「どっちがホテルに先につくか競争しましょう!」彼がとめるのも構わず、ほろ酔いの私は駆けだした。

 そこには柄の悪い男達がたむろしていて、私はすぐにそいつらに捕まった。後から駆けてきたテディを見て、そいつらの一人はニヤリと笑う。

「おやおや、お前って男だったのか? それじゃ、こいつはお前の女か。なら、この女を傷つけたくなかったら抵抗するなよ」

 私の首筋にあたる鋭い刃物。ひやりとした感触に酔いが一気にさめた。テディはすぐに武器を全て路上に投げて、男達の殴られるままに少しも抵抗しない。

(私のせいだ、テディは一人ならすっごく強いのに・・・・・・死んじゃう、このままだと、彼が殴り殺されちゃう・・・・・・)



 私を押さえつけている男の腕を噛み、足を踏みつけ必死に抵抗して彼の側に寄れば、彼は即座に反撃して男達を倒していく。でも、男達の一人が隠し持っていたナイフが彼のお腹を切り裂いた。

 赤い血が流れて、刺した男は満足そうに駆け去っていく。



 (テディの血が止まらない。どうしてよ。こんなところで死なないでよ。私を一人にしないでよ!)


「お願い、死なないで・・・・・・一緒にずっといたいよ。私を一人にしないでよ!」

「こんな傷で死ぬかよ」

 笑いながら言うテディは私の髪をそっと撫でた。



しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

妹が処刑さる……あの、あれは全て妹にあげたんです。

MME
恋愛
妹が好きだ。妹が欲しい物はみんなあげる。それであの娘が喜ぶなら何だって。それが婚約者だって。どうして皆が怒っているんだろう。お願いです妹を処刑しないで下さい。あれはあげたんです。私が我慢すればいいのです。

私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?

狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」 「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」 「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」 「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」 「だから、お前の夫が俺だって──」 少しずつ日差しが強くなっている頃。 昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。 ……誰コイツ。

私との婚約を破棄した王子が捕まりました。良かった。良かった。

狼狼3
恋愛
冤罪のような物を掛けられて何故か婚約を破棄された私ですが、婚約破棄をしてきた相手は、気付けば逮捕されていた。 そんな元婚約者の相手の今なんか知らずに、私は優雅に爺とお茶を飲む。

奈落を封印する聖女ですが、可愛い妹が追放されたので、国を見捨てる事にしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 ファンケン公爵家の長女クラリスは本来家を継ぐ立場だった。だが奈落の底に住む魔族を封印する奈落の聖女に選ばれてしまった。聖なる役目を果たすため、クラリスは聖女となり、次女のエレノアが後継者となった。それから五年、両親が相次いで亡くなり、エレノアは女性ながら公爵となり莫大な資産を引き継いだ。その財産に目をつけたのが、日頃から素行の悪い王太子アキーレヌだった。愛人のキアナと結託し、罠を仕掛けた。まず国王を動かし、エレノアを王太子の婚約者とした。その上で強引に婚前交渉を迫り、エレノアが王太子を叩くように仕向け、不敬罪でお家断絶・私財没収・国外追放刑とした。それを奈落を封じる神殿で聞いたクラリスは激怒して、国を見捨てエレノアと一緒に隣国に行くことにしたのだった。

初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」 男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。 初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。 その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。 しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。 社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。 一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。  ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...