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3 自業自得なエリザベート※残酷シーンあり。R15。
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※残酷シーンあり。R15。
エリザベート・ハービィ伯爵令嬢とローマン・スタンレー辺境伯との結婚式は盛大に行われたがエリザベートは式直前にエリと入れ替わっていた。
「いいことを考えたわ! 結婚式なんて退屈だしちょうど花嫁のベールもかぶっていればお父様達にもばれやしないわ。エリが代わりに出なさいよ!」
ものぐさなエリザベートは、結婚式の花嫁役までエリに押しつけたのであった。
ベールの下の花嫁はエリ。誰もがエリザベートと疑わずに式は厳かに行われていった。そうしてエリザベートは式が終わると同時に入れ替わろうと思ってはいたが、ここでも面倒になってしまうのだった。
ローマン・スタンレー辺境伯の屋敷に着いてからもエリザベートはエリと変わろうとはしない。
「数日間はこのままでいいわ。私は侍女のふりをしていて適当にさぼっているから、エリはそのまま面倒な歓迎会やらお披露目の夜会に出なさいよ。その為にベール付きのファンシネーター(カクテルハット)をたくさんお母様から持たされたのよ。面倒なことはエリにやらせるようにってね!」
「……歓迎会やお披露目の時ぐらいは自分で出た方がいいとは思いますけれど……」
控えめに意見をするエリにエリザベートは舌打ちをする。
「なによ、文句あるの? 招待客に挨拶したり、ダンスやらマナーやらをチェックされるのはうんざりだわ。ほら、顔の半分が隠れるように濃いめの色合いのベール付きのファンシネーター(カクテルハット)をかぶっていれば大丈夫よ。考えてみたらスタンレー辺境伯の人達って私の肖像画しか見ていない人達だもの。ばれやしないわ」
そのようにしてエリザベートは面倒なことは全てエリに押しつけて自分は好き勝手に過ごしていた。そのうち、エリの体に異変が訪れた。吐き気がし匂いに敏感になり、昼間でも眠い日が多くなる。
夫婦の寝室で嘔吐しかけたエリにローマン・スタンレー辺境伯がお抱えの医師を呼ぶ。
「ご懐妊でございます! おめでとうございます」
エリはクスリを飲んでいたにも拘わらず妊娠をしたことに戸惑う。
明るい照明のもとで初めてエリの素顔を見たローマン・スタンレー辺境伯はにっこりとして言った。
「肖像画よりもずっと綺麗なんだね! 君に子供ができて俺はとても嬉しいよ」
「……私に子供ができたことを本当に喜んでいただけるのですか?……」
「あぁ、とても嬉しいよ。君はとても聡明だしおしとやかで優しい。理想の妻だと思うよ。俺は目の前にいる君に子供ができたことがたまらなく嬉しい」
エリの中でなにかが変わっていく瞬間であった。
自室に戻りエリがエリザベートに妊娠を告白すると声を荒げて責めてきたエリザベート。
「そんな子供はすぐに堕ろしなさいよっ! わざと妊娠したのね? そうでしょう? さすがはあの女の血筋よね? 子供を身籠もれば勝ちだと思った? お生憎様! その子もお姉様と同じように影でしか生きられないようにしてやるわ!」
エリザベートがそう毒づきながらエリを殴ろうとした時、エリは迷わず叫んだ。
「ローマン様! 私の侍女の気が狂いました!」
愛する妻の叫びに慌てて部屋に飛び込んで来たローマンはエリザベートを牢屋に閉じ込めたのだった。
「ちょっと待ってよ。私がエリザベートだってば! あなたの妻はこの私よ!」
その言葉に冷笑するローマンである。
「そうだ! お母様とお父様を呼んでよっ! どちらが本物か証明してくれるわ」
エリザベートは青ざめてなおもローマン・スタンレー辺境伯に縋ったが、ローマン・スタンレー辺境伯の言葉は冷たかった。
「どちらが本当のエリザベートなのかなんて俺に興味はない。俺が妻にしたのはお前ではなく今身籠もっている女性であり、愛しているのもお前ではないほうの女性だ。だから、彼女がエリザベートだ」
「そんな……おかしいわよ……真実はどうでもいいなんて。私がエリザべートだってば! あの女はお父様が使用人に産ませた卑しい子なのよ」
「そんなことはどうでもいい話だな。しかし、お望み通り懐妊のお祝いにはハービィ伯爵夫妻を招こう。いいことを考えたよ。お前のお仕置きはハービィ伯爵夫人にお願いする。だから、お前はハービィ伯爵家に引き取ってもらおう。だが、その前に俺からのお仕置きがある。俺の妻に取って代わろうとした嘘つきは大罪人だからな。顔に罪人の焼きコテをつけさせてもらおう。二度と俺の妻などと言えないようにな」
(止めてよ。止めてよぉーー。私の綺麗な顔にそんなものを近づけないで! )
真っ赤に焼かれたコテは恐ろしい凶器だ。家畜と罪人にしか押されない焼きコテはエリザベートとは無縁のはずのもの。それが徐々にエリザベートの顔に近づき、それに触れた髪はたちまち縮れて嫌な匂いを漂わせる。
恐怖は髪の焼ける匂いとともに忍び寄る。顔にゆっくりと近づいてくる凶器はエリザベートの顔にゆっくりと押しつけられていく。想像を絶する痛みに気を失いかけると、氷の入った水が容赦なく頭にかけられた。
まさに地獄の苦しみにエリザベートは涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を歪ませた。自分の顔の肉が焼け焦げる匂いに吐きながらもあまりの痛さに声も出ない。ただやっと息をしているけれど本気で死にたいと思った。
このすさまじい痛みは死よりも恐ろしい。顔の半分は溶けかかっているようにも思うし、もう右目は開くこともできない。ただじっとうずくまり、呪ったのは自分の両親だった。
「こんな計画をたてたお父様とお母様が悪い! ハービィ伯爵家に帰ったらお父様達にはいっぱい文句を言ってやるわ。それから、最高の医者を呼んでもらって治療をしてもらって……そうよ、お父様達が来てくれればきっと私は救われるはず……」
唇を噛みしめて痛みをじっと耐えるしかなかった。エリに酷いことをしたなどとはひとつも思わないエリザベートなのだった。
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
お詫び
更新に間があいてしまい申し訳ありませんでした。
また内容も当初とは違った感じになりました(•́ε•̀;ก)💦
次回で最終回です。
よろしくお願いします。
エリザベート・ハービィ伯爵令嬢とローマン・スタンレー辺境伯との結婚式は盛大に行われたがエリザベートは式直前にエリと入れ替わっていた。
「いいことを考えたわ! 結婚式なんて退屈だしちょうど花嫁のベールもかぶっていればお父様達にもばれやしないわ。エリが代わりに出なさいよ!」
ものぐさなエリザベートは、結婚式の花嫁役までエリに押しつけたのであった。
ベールの下の花嫁はエリ。誰もがエリザベートと疑わずに式は厳かに行われていった。そうしてエリザベートは式が終わると同時に入れ替わろうと思ってはいたが、ここでも面倒になってしまうのだった。
ローマン・スタンレー辺境伯の屋敷に着いてからもエリザベートはエリと変わろうとはしない。
「数日間はこのままでいいわ。私は侍女のふりをしていて適当にさぼっているから、エリはそのまま面倒な歓迎会やらお披露目の夜会に出なさいよ。その為にベール付きのファンシネーター(カクテルハット)をたくさんお母様から持たされたのよ。面倒なことはエリにやらせるようにってね!」
「……歓迎会やお披露目の時ぐらいは自分で出た方がいいとは思いますけれど……」
控えめに意見をするエリにエリザベートは舌打ちをする。
「なによ、文句あるの? 招待客に挨拶したり、ダンスやらマナーやらをチェックされるのはうんざりだわ。ほら、顔の半分が隠れるように濃いめの色合いのベール付きのファンシネーター(カクテルハット)をかぶっていれば大丈夫よ。考えてみたらスタンレー辺境伯の人達って私の肖像画しか見ていない人達だもの。ばれやしないわ」
そのようにしてエリザベートは面倒なことは全てエリに押しつけて自分は好き勝手に過ごしていた。そのうち、エリの体に異変が訪れた。吐き気がし匂いに敏感になり、昼間でも眠い日が多くなる。
夫婦の寝室で嘔吐しかけたエリにローマン・スタンレー辺境伯がお抱えの医師を呼ぶ。
「ご懐妊でございます! おめでとうございます」
エリはクスリを飲んでいたにも拘わらず妊娠をしたことに戸惑う。
明るい照明のもとで初めてエリの素顔を見たローマン・スタンレー辺境伯はにっこりとして言った。
「肖像画よりもずっと綺麗なんだね! 君に子供ができて俺はとても嬉しいよ」
「……私に子供ができたことを本当に喜んでいただけるのですか?……」
「あぁ、とても嬉しいよ。君はとても聡明だしおしとやかで優しい。理想の妻だと思うよ。俺は目の前にいる君に子供ができたことがたまらなく嬉しい」
エリの中でなにかが変わっていく瞬間であった。
自室に戻りエリがエリザベートに妊娠を告白すると声を荒げて責めてきたエリザベート。
「そんな子供はすぐに堕ろしなさいよっ! わざと妊娠したのね? そうでしょう? さすがはあの女の血筋よね? 子供を身籠もれば勝ちだと思った? お生憎様! その子もお姉様と同じように影でしか生きられないようにしてやるわ!」
エリザベートがそう毒づきながらエリを殴ろうとした時、エリは迷わず叫んだ。
「ローマン様! 私の侍女の気が狂いました!」
愛する妻の叫びに慌てて部屋に飛び込んで来たローマンはエリザベートを牢屋に閉じ込めたのだった。
「ちょっと待ってよ。私がエリザベートだってば! あなたの妻はこの私よ!」
その言葉に冷笑するローマンである。
「そうだ! お母様とお父様を呼んでよっ! どちらが本物か証明してくれるわ」
エリザベートは青ざめてなおもローマン・スタンレー辺境伯に縋ったが、ローマン・スタンレー辺境伯の言葉は冷たかった。
「どちらが本当のエリザベートなのかなんて俺に興味はない。俺が妻にしたのはお前ではなく今身籠もっている女性であり、愛しているのもお前ではないほうの女性だ。だから、彼女がエリザベートだ」
「そんな……おかしいわよ……真実はどうでもいいなんて。私がエリザべートだってば! あの女はお父様が使用人に産ませた卑しい子なのよ」
「そんなことはどうでもいい話だな。しかし、お望み通り懐妊のお祝いにはハービィ伯爵夫妻を招こう。いいことを考えたよ。お前のお仕置きはハービィ伯爵夫人にお願いする。だから、お前はハービィ伯爵家に引き取ってもらおう。だが、その前に俺からのお仕置きがある。俺の妻に取って代わろうとした嘘つきは大罪人だからな。顔に罪人の焼きコテをつけさせてもらおう。二度と俺の妻などと言えないようにな」
(止めてよ。止めてよぉーー。私の綺麗な顔にそんなものを近づけないで! )
真っ赤に焼かれたコテは恐ろしい凶器だ。家畜と罪人にしか押されない焼きコテはエリザベートとは無縁のはずのもの。それが徐々にエリザベートの顔に近づき、それに触れた髪はたちまち縮れて嫌な匂いを漂わせる。
恐怖は髪の焼ける匂いとともに忍び寄る。顔にゆっくりと近づいてくる凶器はエリザベートの顔にゆっくりと押しつけられていく。想像を絶する痛みに気を失いかけると、氷の入った水が容赦なく頭にかけられた。
まさに地獄の苦しみにエリザベートは涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を歪ませた。自分の顔の肉が焼け焦げる匂いに吐きながらもあまりの痛さに声も出ない。ただやっと息をしているけれど本気で死にたいと思った。
このすさまじい痛みは死よりも恐ろしい。顔の半分は溶けかかっているようにも思うし、もう右目は開くこともできない。ただじっとうずくまり、呪ったのは自分の両親だった。
「こんな計画をたてたお父様とお母様が悪い! ハービィ伯爵家に帰ったらお父様達にはいっぱい文句を言ってやるわ。それから、最高の医者を呼んでもらって治療をしてもらって……そうよ、お父様達が来てくれればきっと私は救われるはず……」
唇を噛みしめて痛みをじっと耐えるしかなかった。エリに酷いことをしたなどとはひとつも思わないエリザベートなのだった。
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
お詫び
更新に間があいてしまい申し訳ありませんでした。
また内容も当初とは違った感じになりました(•́ε•̀;ก)💦
次回で最終回です。
よろしくお願いします。
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