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3 自然とマリーナから防壁を築いていくローズ
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謎に涙目になりしきりに腕を掻いているマリーナと一緒に王宮に向かうが、気が重いったらない。
――どうしたら皇太子に嫌われるかな。これが重要なのよね。はじめからマリーナが選ばれればあたしは殺されないはず。だとすればマリーナを売り込んであたしの至らなさをアピールすればいいのよ!
王宮に着き早速容姿のチェックからされるけれどこれはあたしもマリーナもいとも簡単にクリアしてしまう。あたしローズは整いすぎた顔立ちが冷たく感じる大人っぽいタイプだし、妹マリーナは愛くるしい瞳の可愛らしい美少女だったからだ。
あたしは早速マリーナの世話をあれこれやきはじめた。マリーナの髪をしっかり整え髪飾りの位置を直し、頬には携帯用の紅を少しだけ塗ってあげたくらいだ。
「お姉様、なんで人前で私の世話を細々となさるんですの? 恥ずかしいです! 私はもう大人ですよ!」
真っ赤になって怒るマリーナが案外かわいい。
「あら、いくつになってもあなたは可愛い私の妹でしょう? だからね、ぜひあなたに皇太子妃になってほしいのよ。なので、こうして髪を整え紅をさしているんじゃないの! あ、リップも貸してあげるわ。これ、あげるから持っていなさいよ。新色ですって。お母様からいただいたのよ」
あたしはお母様からもらったばかりのリップをマリーナの手に握らせた。
皇太子妃候補選考委員会の一人があたしに近づいて質問してくる。
「お二人は姉妹であってもライバルですよ? ローズ様は皇太子妃候補になりたくないのですか?」
「私は妹がとても皇太子妃になりたいのを知っております。その深い気持ちに比べたら私の気持ちなどごく浅いものです。なので、今回は妹を応援するつもりで参りました」
あたしはまさしくこれが本心だったのでにっこりと微笑んでこの気持ちを伝えた。
「素晴らしい! 妹思いの上に自己犠牲が美しい。このような方こそ皇太子妃に相応しいでしょう」
「いいえ! 皇太子妃には妹こそ相応しいですわ。ほら、このマリーナの大きな瞳をご覧ください。皇太子への愛が溢れておりますし、語学は母国語しか話せませんが努力次第でなんとかなりますし、確か地理も歴史も疎いですがそれもこの私が教えてあげれば完璧なのですわ。なにより、皇太子妃になりたいというこの熱意は凄まじく……」
青ざめたマリーナは口をパクパクさせているけれどここはもう一押しだと思う。
「私は妹マリーナの応援をしたいので、この皇太子妃候補のリストから外してくださいませ」
必死でお願いしてみるあたしだ。あとでお父様に叱られたっていいわ。
殺される未来しかない皇妃になったって意味がないもの。ここは全力回避をしたい!
「それはならん! この国の年頃の女性は全て兄上の妻になる資格を与えられる。しかしなかなか珍しいことを言う女だな。そなたの名前は?」
いつの間にか傍らに立っていた美しい貴公子があたしに尋ねた。
「ローズ・エメラルド侯爵令嬢でございます」
「エメラルド家の長女か。私は第二皇子のフィンリーだ。お前は面白いから、皇太子妃候補に選ばれなかったら私の妃候補にしてやろう」
――ひぃ~~。どっちも御免被るわ。妃と名前がつく立場には心底恐怖しかなかった。しかも第2皇子なんて漫画にいたっけ?
そうして、それからなされた皇太子殿下を交えた面接の折には自分の長所など一切言わずして、妹マリーナの長所ばかりを並べ立て、自分の短所は包み隠さずお話し申しあげたのだった。
結果はどちらもなぜか皇太子候補に選ばれてしまったが……けれどあたしは思わぬことを選考委員会の方々から聞いた。
「マリーナ嬢はローズ嬢にいじめられているようなことを終始皇太子殿下におっしゃっていましたが、ローズ嬢はマリーナ嬢の長所を熱心に語られて心底妹を大事にしているのがわかりました。妹さんはどうやら虚言癖があるようですな。これが選考委員の概ねの印象です。しかし、皇太子殿下はかわいいマリーナ嬢を気に入られたようでして候補に残されましたが、我々の虚言癖だという印象は拭えません」
「あのぅ~~なにかの間違いでは? けっしてマリーナは虚言癖などではありません。まぁ、一種の被害妄想が大きくなっていく病気ですから。悪気はないのですよ?」
あたしの言葉に他の選考委員会の方々も頷き納得していたようだった。
「確かに病気ですな。これだけ妹を褒め称えている姉に、その姉から意地悪をされているとこのような場所で漏らす妹。病気だとすれば辻褄があう。これはきっちり記録にも残し皇帝陛下や皇后殿下にはご報告申しあげましょう」
かくしてマリーナは虚言癖のような病気というレッテルを皇帝陛下と皇后殿下から貼られ記録にも残ることになったのだった。
――どうしたら皇太子に嫌われるかな。これが重要なのよね。はじめからマリーナが選ばれればあたしは殺されないはず。だとすればマリーナを売り込んであたしの至らなさをアピールすればいいのよ!
王宮に着き早速容姿のチェックからされるけれどこれはあたしもマリーナもいとも簡単にクリアしてしまう。あたしローズは整いすぎた顔立ちが冷たく感じる大人っぽいタイプだし、妹マリーナは愛くるしい瞳の可愛らしい美少女だったからだ。
あたしは早速マリーナの世話をあれこれやきはじめた。マリーナの髪をしっかり整え髪飾りの位置を直し、頬には携帯用の紅を少しだけ塗ってあげたくらいだ。
「お姉様、なんで人前で私の世話を細々となさるんですの? 恥ずかしいです! 私はもう大人ですよ!」
真っ赤になって怒るマリーナが案外かわいい。
「あら、いくつになってもあなたは可愛い私の妹でしょう? だからね、ぜひあなたに皇太子妃になってほしいのよ。なので、こうして髪を整え紅をさしているんじゃないの! あ、リップも貸してあげるわ。これ、あげるから持っていなさいよ。新色ですって。お母様からいただいたのよ」
あたしはお母様からもらったばかりのリップをマリーナの手に握らせた。
皇太子妃候補選考委員会の一人があたしに近づいて質問してくる。
「お二人は姉妹であってもライバルですよ? ローズ様は皇太子妃候補になりたくないのですか?」
「私は妹がとても皇太子妃になりたいのを知っております。その深い気持ちに比べたら私の気持ちなどごく浅いものです。なので、今回は妹を応援するつもりで参りました」
あたしはまさしくこれが本心だったのでにっこりと微笑んでこの気持ちを伝えた。
「素晴らしい! 妹思いの上に自己犠牲が美しい。このような方こそ皇太子妃に相応しいでしょう」
「いいえ! 皇太子妃には妹こそ相応しいですわ。ほら、このマリーナの大きな瞳をご覧ください。皇太子への愛が溢れておりますし、語学は母国語しか話せませんが努力次第でなんとかなりますし、確か地理も歴史も疎いですがそれもこの私が教えてあげれば完璧なのですわ。なにより、皇太子妃になりたいというこの熱意は凄まじく……」
青ざめたマリーナは口をパクパクさせているけれどここはもう一押しだと思う。
「私は妹マリーナの応援をしたいので、この皇太子妃候補のリストから外してくださいませ」
必死でお願いしてみるあたしだ。あとでお父様に叱られたっていいわ。
殺される未来しかない皇妃になったって意味がないもの。ここは全力回避をしたい!
「それはならん! この国の年頃の女性は全て兄上の妻になる資格を与えられる。しかしなかなか珍しいことを言う女だな。そなたの名前は?」
いつの間にか傍らに立っていた美しい貴公子があたしに尋ねた。
「ローズ・エメラルド侯爵令嬢でございます」
「エメラルド家の長女か。私は第二皇子のフィンリーだ。お前は面白いから、皇太子妃候補に選ばれなかったら私の妃候補にしてやろう」
――ひぃ~~。どっちも御免被るわ。妃と名前がつく立場には心底恐怖しかなかった。しかも第2皇子なんて漫画にいたっけ?
そうして、それからなされた皇太子殿下を交えた面接の折には自分の長所など一切言わずして、妹マリーナの長所ばかりを並べ立て、自分の短所は包み隠さずお話し申しあげたのだった。
結果はどちらもなぜか皇太子候補に選ばれてしまったが……けれどあたしは思わぬことを選考委員会の方々から聞いた。
「マリーナ嬢はローズ嬢にいじめられているようなことを終始皇太子殿下におっしゃっていましたが、ローズ嬢はマリーナ嬢の長所を熱心に語られて心底妹を大事にしているのがわかりました。妹さんはどうやら虚言癖があるようですな。これが選考委員の概ねの印象です。しかし、皇太子殿下はかわいいマリーナ嬢を気に入られたようでして候補に残されましたが、我々の虚言癖だという印象は拭えません」
「あのぅ~~なにかの間違いでは? けっしてマリーナは虚言癖などではありません。まぁ、一種の被害妄想が大きくなっていく病気ですから。悪気はないのですよ?」
あたしの言葉に他の選考委員会の方々も頷き納得していたようだった。
「確かに病気ですな。これだけ妹を褒め称えている姉に、その姉から意地悪をされているとこのような場所で漏らす妹。病気だとすれば辻褄があう。これはきっちり記録にも残し皇帝陛下や皇后殿下にはご報告申しあげましょう」
かくしてマリーナは虚言癖のような病気というレッテルを皇帝陛下と皇后殿下から貼られ記録にも残ることになったのだった。
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