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後編その2-(ランス(夫)編)※R18ざまぁ
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※残酷です。コメディー風味なざまぁですが、死を連想する表現あり。とりあえずR18。
平凡な妻には欲情しなくて寝室も別にしていた。抱いたのは義務感にかられてほんの数回。暗闇でさっさと済ませて、すぐに自室のベッドに戻る。
妻の反応はおしとやかすぎて、まるでマグロを抱いているようだった。本当につまらない女と結婚したものだと思う。
ところが妻が最近、少しづつ変わった。以前はなんの飾りもないワンピースで、デザインもストンとした身体の線がまったく出ないものばかりを着ていた。それが身体にピッタリしたものを着るようになって、あまりのスタイルの良さに唖然とした。
「フランソワーズ。このスープすごくおいしいよ。いつもの倍おいしい」
久しぶりに妻の料理を褒めたのに、彼女はうなづくだけで前のように微笑まない。なにか落ち着かなくて、その日から食事の後片付けを手伝うようになった。
日を追う毎に、化粧を念入りにしだして見違えてしまう。妻はすっぴんでも整った顔立ちではあったから、長い睫を上向きにし深紅の口紅をつけ、頬紅を入れただけで大輪の花が咲いたようだ。定番になった細身の黒いワンピースは総レースで妖艶な色気が溢れていた。
「今日もすごく綺麗だね。そうだ、明日は外食しようか? 仕事が終わったら連絡するから、たまにはレストランで食事をしよう」
「まぁ、ありがとう。嬉しいわ」
微笑むと真珠のような歯がきらりと光った。
(こんなにフランソワーズって美人だったっけ? セクシーで危険な女そのものだよ)
「あのさ、そろそろ子供がほしいなって思わないか? 夫婦の寝室を作ってこれからは一緒に寝ようよ」
そそられる色気に、妻を抱きたくてたまらない衝動に駆られる。
「あら、別々の部屋で寝た方が身体が休まるとおっしゃったではありませんか? まだ私は子供を欲しくないので結構です」
「まだ欲しくないの? いつになったら欲しくなるのかな。あとでゆっくり話し合おうよ。あ、もしかして最近ずっと帰りが遅かったから怒っている? もう二度と帰りは遅くならないようにするよ」
「ふっ。別に怒っていませんわよ」
今までと違う妻の洗練された仕草に落ち着かない。
翌日、仕事を終えると私は待ち合わせのレストランに急いだ。花束のプレゼントも忘れない。考えたら妻には結婚してからなにもプレゼントしていなかったのだ。
しばらくレストランで待っていると、金髪でエメラルドグリーンの瞳のゴージャスな美女が、光沢のある細身のドレスを着こなして現れた。
「お待たせしました。夕方のチョコとマリーのお散歩に時間がかかってしまいましたわ」
「マ、マダムパピヨン? ・・・・・・マダムパピヨンがわたしの妻なのか? なんで黙っていたんだい? 変装までしてさ。わざと冴えない女を演じていたんだね? 全然気がつかなかった・・・・・・女性って髪や瞳の色、服装でずいぶん変わるんだね」
彼女を知らない男はいない。この国で最も有名な女性の一人だ。
「普通の男性と平凡な幸せが欲しかったのですわ。人間ってないものねだりなのですよ」
なんていう幸運なんだろう。マダムパピヨンなら大金持ちだし、仕事を辞めても養ってもらえる。この国一番の妖艶な女、極上の美女が妻だなんて!
「ねぇ、今住んでいる家は狭いと思わないかい? あれはわたしの収入にあわせた家だった。でもあなたならきっと・・・・・・もっと大きな屋敷を買えるよね?」
「あぁ、屋敷ね。もうすでに持っていますので、これ以上は必要ありませんわ」
「持っている? だったらそこにわたしも住まわせてよ」
「あら、私の夫からツバメになるおつもりですか? 年齢は私が1歳しか上ではないはずですが」
「1歳でも歳下は年下だよね? なんでも言うことを聞くから」
妻は艶やかに微笑み、この日の酒は最高においしかった。翌日、上司に辞表を提出。意気揚々と自宅に戻ると妻がいない。彼女の持ち物も全て消えていた。
ここは”パピヨン”の最上階、オーナーの住まいにもなっている空間だ。娼館の最上階にマダムパピヨンの住まいがあるなんて知らなかった。というか、このような高給娼館は貴族でなければ来られないから、私が知ることができるはずもない。
「なんのご用かしら?」
マダムパピヨンはわたしを蔑んだ瞳で見つめる。
「夫に向かってその言い方は酷いよ。仕事を辞めてきたんだよ」
「なぜ仕事を辞めたのですか?」
「だって、わたしの妻はマダムパピヨンだろう? 働くならここで働くよ。女の子の管理とか・・・・・・男だって必要だよね?」
「女の子の管理? ・・・・・・あぁ、ちょうどいいお仕事があるわね。ヘルプのヘルプがちょうどいなくなったところですわ。ふふふ、旦那様。せいぜい頑張ってくださいね」
ヘルプと呼ばれるそこそこ可愛い女達が、10人ほど大きな部屋に集まり愚痴っていた。
「あんの糞じじぃ、私に『なんちゃって拷問』したいって、本気でムチで叩いてきたのよ! あり得ない。見てよ、この傷。ヘルプをわざわざ指名してきたのよ。でもそのご褒美は馴染みの高級娼婦のものだって。むかつくから、そこのおじさん! 私にムチで叩かれなさいよ」
ヘルプの一人が小さなムチを持ち、わたしに向かって叫んだ。
「ひっ! 痛い! 痛い」
ムチはそれなりに本格的で、背中から血がしたたりひりひりと痛み出す。
「私なんて足の裏を1時間も舐めさせられたわ。ちょっと、おじさん! あたしの足を揉んだら2時間は足を舐めなさいよ。あ、その前に足の裏に汚れをたくさんつけてやるわ」
「・・・・・・」
「私なんてまた入れ歯いりワインを飲まされたよ。頭きちゃう。吐き出したものを食べろとか、しまいには爪をはがされそうになったのよ? 『奴隷ごっこ』しないか? ですって。なんでこんな高給娼館にそんなクズ客がいるの?」
「客は高級娼婦には絶対こんなことしないからね。娼婦によって使い分けているんだよ。ストレス解消用娼婦があたしらで、丁寧に優しく扱われるのが高級娼婦。どこに行っても、不公平はあるんだよ」
「だからガス抜きに、ヘルプのヘルプがいるのよ。この人にはなにをしてもいいって、マダムパピヨンがおっしゃっていたわ」
「え? なにをしてもいいの? へぇーー、私達より下がいるなんて愉快ね? ん? ちょっと待って、あんたはもしかしてランス文官?」
「え? 君は・・・・・・オフェリー?」
わたしはどうやら一番怒らせてはいけない女を妻にして、完璧に怒らせたことを悟ったのだ。オフェリーと私がここにいるということは決して偶然なわけがないから。
「ヘルプのヘルプって、3ヶ月ごとに用意されるんだって」
「なんで?」
「ふふふ。多分、なにをしてもいいおもちゃって、3ヶ月しか元気でいられないのよ」
その言葉にぞっとして慌てて逃げようとしても、10人の可愛い若い女達に行く手を阻まれた。
「うふ。逃がさないわよぉーー。私達のサンドバッグだもん」
オフェリーの目はすでに焦点があっていない。心が闇落ちしているのがわかる。つまり、正気ではないのだ。
(終わった・・・・・・マダムパピヨンならわたしの失踪などいくらでも誤魔化せる。死体だっていくらでも処理できるよ。妻がマダムパピヨンってわかっていたら、こんなバカ女なんかと浮気しなかったのに・・・・・・た、助けて・・・・・・)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
次回は、おまけ1話で完結です。マダムパピヨンが新たな夫と幸せになるお話。
平凡な妻には欲情しなくて寝室も別にしていた。抱いたのは義務感にかられてほんの数回。暗闇でさっさと済ませて、すぐに自室のベッドに戻る。
妻の反応はおしとやかすぎて、まるでマグロを抱いているようだった。本当につまらない女と結婚したものだと思う。
ところが妻が最近、少しづつ変わった。以前はなんの飾りもないワンピースで、デザインもストンとした身体の線がまったく出ないものばかりを着ていた。それが身体にピッタリしたものを着るようになって、あまりのスタイルの良さに唖然とした。
「フランソワーズ。このスープすごくおいしいよ。いつもの倍おいしい」
久しぶりに妻の料理を褒めたのに、彼女はうなづくだけで前のように微笑まない。なにか落ち着かなくて、その日から食事の後片付けを手伝うようになった。
日を追う毎に、化粧を念入りにしだして見違えてしまう。妻はすっぴんでも整った顔立ちではあったから、長い睫を上向きにし深紅の口紅をつけ、頬紅を入れただけで大輪の花が咲いたようだ。定番になった細身の黒いワンピースは総レースで妖艶な色気が溢れていた。
「今日もすごく綺麗だね。そうだ、明日は外食しようか? 仕事が終わったら連絡するから、たまにはレストランで食事をしよう」
「まぁ、ありがとう。嬉しいわ」
微笑むと真珠のような歯がきらりと光った。
(こんなにフランソワーズって美人だったっけ? セクシーで危険な女そのものだよ)
「あのさ、そろそろ子供がほしいなって思わないか? 夫婦の寝室を作ってこれからは一緒に寝ようよ」
そそられる色気に、妻を抱きたくてたまらない衝動に駆られる。
「あら、別々の部屋で寝た方が身体が休まるとおっしゃったではありませんか? まだ私は子供を欲しくないので結構です」
「まだ欲しくないの? いつになったら欲しくなるのかな。あとでゆっくり話し合おうよ。あ、もしかして最近ずっと帰りが遅かったから怒っている? もう二度と帰りは遅くならないようにするよ」
「ふっ。別に怒っていませんわよ」
今までと違う妻の洗練された仕草に落ち着かない。
翌日、仕事を終えると私は待ち合わせのレストランに急いだ。花束のプレゼントも忘れない。考えたら妻には結婚してからなにもプレゼントしていなかったのだ。
しばらくレストランで待っていると、金髪でエメラルドグリーンの瞳のゴージャスな美女が、光沢のある細身のドレスを着こなして現れた。
「お待たせしました。夕方のチョコとマリーのお散歩に時間がかかってしまいましたわ」
「マ、マダムパピヨン? ・・・・・・マダムパピヨンがわたしの妻なのか? なんで黙っていたんだい? 変装までしてさ。わざと冴えない女を演じていたんだね? 全然気がつかなかった・・・・・・女性って髪や瞳の色、服装でずいぶん変わるんだね」
彼女を知らない男はいない。この国で最も有名な女性の一人だ。
「普通の男性と平凡な幸せが欲しかったのですわ。人間ってないものねだりなのですよ」
なんていう幸運なんだろう。マダムパピヨンなら大金持ちだし、仕事を辞めても養ってもらえる。この国一番の妖艶な女、極上の美女が妻だなんて!
「ねぇ、今住んでいる家は狭いと思わないかい? あれはわたしの収入にあわせた家だった。でもあなたならきっと・・・・・・もっと大きな屋敷を買えるよね?」
「あぁ、屋敷ね。もうすでに持っていますので、これ以上は必要ありませんわ」
「持っている? だったらそこにわたしも住まわせてよ」
「あら、私の夫からツバメになるおつもりですか? 年齢は私が1歳しか上ではないはずですが」
「1歳でも歳下は年下だよね? なんでも言うことを聞くから」
妻は艶やかに微笑み、この日の酒は最高においしかった。翌日、上司に辞表を提出。意気揚々と自宅に戻ると妻がいない。彼女の持ち物も全て消えていた。
ここは”パピヨン”の最上階、オーナーの住まいにもなっている空間だ。娼館の最上階にマダムパピヨンの住まいがあるなんて知らなかった。というか、このような高給娼館は貴族でなければ来られないから、私が知ることができるはずもない。
「なんのご用かしら?」
マダムパピヨンはわたしを蔑んだ瞳で見つめる。
「夫に向かってその言い方は酷いよ。仕事を辞めてきたんだよ」
「なぜ仕事を辞めたのですか?」
「だって、わたしの妻はマダムパピヨンだろう? 働くならここで働くよ。女の子の管理とか・・・・・・男だって必要だよね?」
「女の子の管理? ・・・・・・あぁ、ちょうどいいお仕事があるわね。ヘルプのヘルプがちょうどいなくなったところですわ。ふふふ、旦那様。せいぜい頑張ってくださいね」
ヘルプと呼ばれるそこそこ可愛い女達が、10人ほど大きな部屋に集まり愚痴っていた。
「あんの糞じじぃ、私に『なんちゃって拷問』したいって、本気でムチで叩いてきたのよ! あり得ない。見てよ、この傷。ヘルプをわざわざ指名してきたのよ。でもそのご褒美は馴染みの高級娼婦のものだって。むかつくから、そこのおじさん! 私にムチで叩かれなさいよ」
ヘルプの一人が小さなムチを持ち、わたしに向かって叫んだ。
「ひっ! 痛い! 痛い」
ムチはそれなりに本格的で、背中から血がしたたりひりひりと痛み出す。
「私なんて足の裏を1時間も舐めさせられたわ。ちょっと、おじさん! あたしの足を揉んだら2時間は足を舐めなさいよ。あ、その前に足の裏に汚れをたくさんつけてやるわ」
「・・・・・・」
「私なんてまた入れ歯いりワインを飲まされたよ。頭きちゃう。吐き出したものを食べろとか、しまいには爪をはがされそうになったのよ? 『奴隷ごっこ』しないか? ですって。なんでこんな高給娼館にそんなクズ客がいるの?」
「客は高級娼婦には絶対こんなことしないからね。娼婦によって使い分けているんだよ。ストレス解消用娼婦があたしらで、丁寧に優しく扱われるのが高級娼婦。どこに行っても、不公平はあるんだよ」
「だからガス抜きに、ヘルプのヘルプがいるのよ。この人にはなにをしてもいいって、マダムパピヨンがおっしゃっていたわ」
「え? なにをしてもいいの? へぇーー、私達より下がいるなんて愉快ね? ん? ちょっと待って、あんたはもしかしてランス文官?」
「え? 君は・・・・・・オフェリー?」
わたしはどうやら一番怒らせてはいけない女を妻にして、完璧に怒らせたことを悟ったのだ。オフェリーと私がここにいるということは決して偶然なわけがないから。
「ヘルプのヘルプって、3ヶ月ごとに用意されるんだって」
「なんで?」
「ふふふ。多分、なにをしてもいいおもちゃって、3ヶ月しか元気でいられないのよ」
その言葉にぞっとして慌てて逃げようとしても、10人の可愛い若い女達に行く手を阻まれた。
「うふ。逃がさないわよぉーー。私達のサンドバッグだもん」
オフェリーの目はすでに焦点があっていない。心が闇落ちしているのがわかる。つまり、正気ではないのだ。
(終わった・・・・・・マダムパピヨンならわたしの失踪などいくらでも誤魔化せる。死体だっていくらでも処理できるよ。妻がマダムパピヨンってわかっていたら、こんなバカ女なんかと浮気しなかったのに・・・・・・た、助けて・・・・・・)
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