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続編
1 スタンフォード元王太子殿下の末路 ※R18
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※死の表現あり。流血シーンあり。一応R18にしときました。えっと、荒んだ感じの展開になります。
(スタンフォード元王太子殿下視点)
王太子からいきなり平民になり少しばかりのお金を持たされマリーと市井に放り投げ出された。まずは住むアパートを借りて仕事も探さなければならない。
(くっそ! 疲れることはしたくないぞ)
職業を紹介してくれる相談所に行き話しをする。
「どのような仕事を探しているのですか?」
「もちろん楽でたくさんの給料がもらえる仕事が良い」
「資格はなにを持っていますか? 今まではなにをしてきましたか? できることを言ってください」
「資格は無い。今までは書類に印を押していた。俺に出来ることは・・・・・・なんだろう?」
俺の答えに相談所の男は呆れかえった。俺はこの時に自分がおよそなにもしてこなかったことに気づいた。なんの特技も資格もない俺は、誰でもできる仕事を低賃金でしなければならないんだ。
ありつけた仕事は肉屋の裏方だ。店の奥で食肉を切り分ける仕事は獣臭く血の匂いでむせかえっていた。やりたがる者がいない人気のない職場だからすぐに雇ってもらえたのだ。
しかし、この職場に3日ほど通っただけでもう挫折した。食用肉の塊・・・・・・つまりは獣の死体だ。それに囲まれてずっと肉を切り刻み続ける。気分の良い仕事とは言えない。
今まで温室育ちで血なまぐさい世界とは無縁だった。華やかな王宮で生活していた俺が耐えられるはずもなかった。
四日目には職場に行かなくなり、五日目にはアパートで酒に溺れていた。やっと見つけたアパートは路地裏の天井から雨が漏れるようなボロ物件で、夜になるとゴキブリがうごめいた。
「なんで仕事に行かないのよ? これじゃぁ、生活できないわ」
マリーがおかしなことに俺を責めた。
(なんでこいつに怒られなきゃならない?)
「考えたらお前のせいでこうなったのになんで俺が辛い思いをするんだ? お前が俺の代わりに働きに行けよ。腹が大きくてもできることがあるだろう? 妊婦専用の娼館もあると聞いたよ。どうせ誰の子供かわからないんだ。汚れた仕事がお前にはお似合いなんだよ」
マリーの身体を流産しない程度に殴って悪態をつく。むしゃくしゃした気分がマリーを殴るとスカッとした。もちろん服で隠れる部分しか殴らないし、顔もぶたない。こいつを商品として男達に売り飛ばしてやるんだ。
「俺があのままアラナと一緒にいればきっと国王になれたのに・・・・・・お前のせいで何もかもが台無しだよ」
「私のせいじゃないでしょう? あんたが国王陛下の血を引いてないからじゃない? 自分こそ誰の子供かわからないくせに」
(こんなクソ女にバカにされるなんて我慢ならない!)
「こっの、クソ女め! 俺を貶しやがって! お前さえ俺を誘惑しなきゃぁ平民になんかならなかったんだ! 明日は娼館に行って手続きをしてやろう。それとも道行く男を誘う立ちんぼの方が稼げるかな? せいぜい働いて俺を養え。だって、俺が輝かしい人生から転落したのは全てお前のせいなんだから。腹の子は奴隷商人にでも売り飛ばせば良い。どうせ俺の子じゃないんだろ?」
(そうさ。このマリーをボロボロになるまで働かせれば良い。阿婆擦れの裏切り者なんてどうなっても構うもんか)
あれだけ好きで大事に思っていた女だったけれど、父上とも通じ合っていたと聞いた瞬間に一気に冷めた。可愛さ余って憎さ百倍、思いっきり不幸のどん底に落として泣き叫べば良い!
酒に酔って窓辺で涼しい風に吹かれ良い気分で笑っていたら、マリーがゆっくりと起き上がりこちらに近づいてきた。
「あんたなんかの言いなりになんかならない! あんたなんかの思うとおりになるもんですか」
思い詰めた表情で果物ナイフを持ち、俺の腹に突き立て大きく開け放たれた窓から俺を突き落とそうとした。
「クソ女、お前も道連れだよ」
俺はマリーの手首をしっかりと握りしめて固い石畳の通りに落ちていく。短い時間のはずなのに、走馬灯のように駆け巡る記憶。一瞬、想像を絶する痛みが襲い、自分の身体から生暖かい血液がさらに流れ出すのを感じた。
どこもかしこも痛くて、このまま死ぬことに恐怖を感じる。少し離れた場所にはあり得ない角度に首が曲がったマリーの血まみれの姿が見えた。
(マリーは即死か。運がいいな。俺もいい加減死なせてくれよ。痛いよ・・・・・・痛い)
己の血にまみれながら苦痛で思い出したのはアラナの言葉だ。
「真実の愛っていいですわね。どうぞお幸せに!」
あいつはそう言ったんだ。呪いのようなセリフ・・・・・・きっとアラナにはこうなることがわかっていたんだと思う。あいつはマリーが浮気女だと暴露して俺にこの女と添い遂げろ、と言った。
(できるわけないだろう? ずっと俺を裏切り、父上とさえ寝ていた女だ。真実の愛なんてどこにもない。しかも自分だけ楽に即死しやがって)
薄れゆく意識の中で、最期に感じたのは顔にかかった生ぬるい液体だった。俺の顔にガマガエルがションベンをかけて、跳ねながら去って行ったんだ。
(チキショー。死ぬ瞬間にカエルにまでコケにされるなんて・・・・・・)
そして俺の世界は幕を閉じた・・・・・・
(スタンフォード元王太子殿下視点)
王太子からいきなり平民になり少しばかりのお金を持たされマリーと市井に放り投げ出された。まずは住むアパートを借りて仕事も探さなければならない。
(くっそ! 疲れることはしたくないぞ)
職業を紹介してくれる相談所に行き話しをする。
「どのような仕事を探しているのですか?」
「もちろん楽でたくさんの給料がもらえる仕事が良い」
「資格はなにを持っていますか? 今まではなにをしてきましたか? できることを言ってください」
「資格は無い。今までは書類に印を押していた。俺に出来ることは・・・・・・なんだろう?」
俺の答えに相談所の男は呆れかえった。俺はこの時に自分がおよそなにもしてこなかったことに気づいた。なんの特技も資格もない俺は、誰でもできる仕事を低賃金でしなければならないんだ。
ありつけた仕事は肉屋の裏方だ。店の奥で食肉を切り分ける仕事は獣臭く血の匂いでむせかえっていた。やりたがる者がいない人気のない職場だからすぐに雇ってもらえたのだ。
しかし、この職場に3日ほど通っただけでもう挫折した。食用肉の塊・・・・・・つまりは獣の死体だ。それに囲まれてずっと肉を切り刻み続ける。気分の良い仕事とは言えない。
今まで温室育ちで血なまぐさい世界とは無縁だった。華やかな王宮で生活していた俺が耐えられるはずもなかった。
四日目には職場に行かなくなり、五日目にはアパートで酒に溺れていた。やっと見つけたアパートは路地裏の天井から雨が漏れるようなボロ物件で、夜になるとゴキブリがうごめいた。
「なんで仕事に行かないのよ? これじゃぁ、生活できないわ」
マリーがおかしなことに俺を責めた。
(なんでこいつに怒られなきゃならない?)
「考えたらお前のせいでこうなったのになんで俺が辛い思いをするんだ? お前が俺の代わりに働きに行けよ。腹が大きくてもできることがあるだろう? 妊婦専用の娼館もあると聞いたよ。どうせ誰の子供かわからないんだ。汚れた仕事がお前にはお似合いなんだよ」
マリーの身体を流産しない程度に殴って悪態をつく。むしゃくしゃした気分がマリーを殴るとスカッとした。もちろん服で隠れる部分しか殴らないし、顔もぶたない。こいつを商品として男達に売り飛ばしてやるんだ。
「俺があのままアラナと一緒にいればきっと国王になれたのに・・・・・・お前のせいで何もかもが台無しだよ」
「私のせいじゃないでしょう? あんたが国王陛下の血を引いてないからじゃない? 自分こそ誰の子供かわからないくせに」
(こんなクソ女にバカにされるなんて我慢ならない!)
「こっの、クソ女め! 俺を貶しやがって! お前さえ俺を誘惑しなきゃぁ平民になんかならなかったんだ! 明日は娼館に行って手続きをしてやろう。それとも道行く男を誘う立ちんぼの方が稼げるかな? せいぜい働いて俺を養え。だって、俺が輝かしい人生から転落したのは全てお前のせいなんだから。腹の子は奴隷商人にでも売り飛ばせば良い。どうせ俺の子じゃないんだろ?」
(そうさ。このマリーをボロボロになるまで働かせれば良い。阿婆擦れの裏切り者なんてどうなっても構うもんか)
あれだけ好きで大事に思っていた女だったけれど、父上とも通じ合っていたと聞いた瞬間に一気に冷めた。可愛さ余って憎さ百倍、思いっきり不幸のどん底に落として泣き叫べば良い!
酒に酔って窓辺で涼しい風に吹かれ良い気分で笑っていたら、マリーがゆっくりと起き上がりこちらに近づいてきた。
「あんたなんかの言いなりになんかならない! あんたなんかの思うとおりになるもんですか」
思い詰めた表情で果物ナイフを持ち、俺の腹に突き立て大きく開け放たれた窓から俺を突き落とそうとした。
「クソ女、お前も道連れだよ」
俺はマリーの手首をしっかりと握りしめて固い石畳の通りに落ちていく。短い時間のはずなのに、走馬灯のように駆け巡る記憶。一瞬、想像を絶する痛みが襲い、自分の身体から生暖かい血液がさらに流れ出すのを感じた。
どこもかしこも痛くて、このまま死ぬことに恐怖を感じる。少し離れた場所にはあり得ない角度に首が曲がったマリーの血まみれの姿が見えた。
(マリーは即死か。運がいいな。俺もいい加減死なせてくれよ。痛いよ・・・・・・痛い)
己の血にまみれながら苦痛で思い出したのはアラナの言葉だ。
「真実の愛っていいですわね。どうぞお幸せに!」
あいつはそう言ったんだ。呪いのようなセリフ・・・・・・きっとアラナにはこうなることがわかっていたんだと思う。あいつはマリーが浮気女だと暴露して俺にこの女と添い遂げろ、と言った。
(できるわけないだろう? ずっと俺を裏切り、父上とさえ寝ていた女だ。真実の愛なんてどこにもない。しかも自分だけ楽に即死しやがって)
薄れゆく意識の中で、最期に感じたのは顔にかかった生ぬるい液体だった。俺の顔にガマガエルがションベンをかけて、跳ねながら去って行ったんだ。
(チキショー。死ぬ瞬間にカエルにまでコケにされるなんて・・・・・・)
そして俺の世界は幕を閉じた・・・・・・
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