(完)私の恋人を奪う人妻の姉

青空一夏

文字の大きさ
3 / 24

イザベラの夫のアーシャさんに、ばったり会ったジェネシス

しおりを挟む
「よし、話は決まった。早速、ジェネシスは明日、ワトソン家に私達と行こう。お前が謝って、イザベラとの離婚を確定させて、ジェネシスが代わりに嫁ぐということで丸く収めよう。あぁ、めでたいな! 今夜は家族揃って、外食でもしようか?」

「まぁーー! 賛成ですわぁ。私は、町一番のレストラン『極上のステーキ専門店』がいいわぁーー。あそこのお肉は最高ですわぁ」

 イザベラは、血が滴るようなステーキが大好きだ。いそいそと外出の支度をする両親と姉を、冷めた目で見つめた。

「ジェネシスはお留守番していてね! 家族が揃ってお出かけしたら、防犯上、良くないわ」

 お母様は、私に当然のようにおっしゃった。アーロンも残ろうとすると、イザベラがその腕に自分の腕をからめた。

「あら、ダーリン! 貴方は私と一緒よ? この家のお婿さんになってもらうのだから、もう家族じゃないの?」

 そう言われて嬉しそうに頷く裏切り者は、もう私の顔は見ようとはしない。

 これが、私の家族だ。私は、きっと橋の下に捨てられていた捨て子なのではないかしら? そう思うことが、たびたびあった。もし、そうならば、まだましだ。納得もいくし、諦めもつくけれど。

「残念ながら、ジェネシスは私が産んだ子よ? なんで、こんなに可愛くないのかしらぁ?」

 お母様は、幼い頃に質問した私に、大きなため息をついたのだった。

 お母様は、平民の出身で、美貌で男爵夫人になれた人だ。美人コンテストを総なめにしたということが自慢で、お父様はそんなお母様とイザベラを溺愛している。

 私は、なにか食べる物を台所から探すが、ろくなものはなかった。お母様は着飾ってばかりでお料理はしない人だからね。考えたら、ここに私がいる必要ってないわよね? 

 自分の家に戻ろう。病院の近くに借りた部屋はこじんまりしていたが居心地は実家の1000倍もいい。ここには、もう二度と帰ってくるもんか! 

 私は、実家の自分の部屋から必要なものをまとめようとした。だが、持って行く物など、なにもないことに気づき苦笑した。ここにいた思い出なんていらない。ここは、もう私の家ではないのだから。

 とぼとぼと、一人で駅まで歩いた。夕暮れの薄紅色の空が、美しいほど私の心は悲しい。私は夕暮れは大嫌いだ。いつも、家族から理不尽な扱いをうけた後に見る夕焼けは悲しくて辛いものだったから。

 汽車を待っていると、背後から声をかけてくる紳士がいた。

「やぁ。お久しぶり! イザベラの妹のジェネシスじゃないか? いつから、ここに? イザベラが数日前に理由もわからずに出て行ってしまってね。 迎えに来たのだけれど、イザベラはマイロ家にいるのだろう?」

 私は、義理の兄のアーシャさんに正直に言った。多分、アーシャさんには理解できないだろうな。

「今のイザベラは、私の彼との結婚祝いに血の滴るステーキを頬張っているところですよ」 
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

処理中です...