可愛くない私に価値はないのでしょう?

青空一夏

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連載

44 レミントン先生視点

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※この小説の一人称ですが、男性は”わたし”で女性は”私”と使い分けております。

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※レミントン先生視点です。



 ここは全校生徒の保護者達が一斉に集まった講堂だ。私と他二人の教師が試験問題を生徒に漏らしていたことは、すでに保護者達には知れ渡っていた。

「教師として最低ですわよ! 恥知らずめ」

「伝統あるポールスランド伯爵家の学園に泥を塗りやがって。土下座しろぉーー」

「レミントン先生は、ジュエルさんが1年生の頃から試験問題を漏洩させていたというではありませんか? 他の生徒達に罪悪感は感じなかったのかしら? 図太い神経ですわよね」

「あれで6年生のクラスの担当教員として、道徳まで教えていたんだとさ。呆れたよっ」

 保護者達が憎々しげに私を睨んでいた。このような講堂で罪を問いただすなんておかしいわよ。学園長室に呼び出して厳重注意ぐらいで終わる話ではないの?


 

 コンスタンティン様が記録石を掲げ、そこから私とジュエルさんの映像と音声が再生された。記録石はこのように音声と映像を記録し、同時に再生することができるとても便利なものだ。けれどとんでもなく高価なので、一般庶民は見たこともない。

「すごい! まるで目の前で実際に話しているように見えますわね。なんて便利なものでしょう」

「弟を取締役にさせたくてカンニングの手助けをするなんて教師失格ですわ! あり得ません」

 保護者達はその魔法のような映像を見ながら、感嘆と怒りの声をあげた。

「こんばんわぁーー。エイキン大商会から今日お届け物でぇす♫」

 続けて、私の家に贈り物が頻繁に届く様子が映し出され、配達人の元気な声が講堂に響き渡る。弾むような明るい声が今はとても腹立たしく聞こえる。

(私の家を見張っていたわけ? 気持ち悪い。まるで私が犯罪者みたいじゃない)

 さらに保護者達に配られたのは、私の弟がエイキン大商会に取締役として存在することを証明する、商業登記簿謄本の写しだった。

「このような映像を流されたら、もう私はあの家には住めませんわ。それに弟の名前まで晒すなんて酷いです。確かに私がやったことは悪いことかもしれませんが、プライバシーの侵害だと思います。これじゃぁ犯罪者じゃないですか?」

「レミントン先生。あぁ、あなたのような方に先生という称号は似合いませんね。言い直しましょう。レミントンさん、これは試験問題漏洩事件で犯罪ですよ。学園の権威を失墜させ、名誉を著しく傷つけました」

「じっ、実のところ、私はこのようなことを本当はしたくなかったんです。ですが、しないと弟をクビにすると脅されたのです。私は被害者ですよ」

 私はポールスランド伯爵夫人になんとか同情していただこうと必死になった。この方はとてもお優しい方のはずだから、同情を引けば許してくれるかもしれない。

「おい、嘘をつくな! レミントン先生から話しを持ちかけてきたのだろう?『お嬢さんの成績を私ならトップにして差し上げられます』とすり寄ってきたのはあんただろう?」

「どこにそんな証拠があるのですか? 私と弟は脅されてこのようなことをしました」

「見苦しいですよ。どちらから言い出したかなど、今更どうでも良いことです。しでかした事件の罪の重さは変わりません」

 エイキン商会長と激しく言い争っていると、コンスタンティン様が私達を窘めた。

「レミントン君は、脅されて試験問題を漏洩したと言うわりには、商会からの贈り物は喜んで受け取っていたのだろう? 説得力は皆無だ。よって、君の教師資格を剥奪することをここに宣言する! 今後、どの領地においても教壇に立つことはできない」

「少し厳しすぎやしませんか? 私は教師の仕事しかできないのですよ」

「レミントン君は教師の仕事だけはするべきではない類いの人間だよ。君は学園に対して損害賠償金も払わなければならない」

「嘘・・・・・・厳しすぎるわ。だってポールスランド伯爵家の方々は慈悲深いはずなのに」

「このようなことをする犯罪者に慈悲深い領主などいないね」

 ポールスランド伯爵閣下は私の教師資格を奪って、少しの情けもかけてくださらなかった。

(酷いじゃない。これでも6年間もこのポールスランド学園にいたのに。私なりにクラスの皆を指導したのだから、もう少し緩い罰にしてくれても良いはずだ)

 それから夕方まで、私は散々保護者達から罵倒され、ひたすら頭を下げ続けた。


 





 その日付で懲戒解雇になり、教師の資格も剥奪された。学園への損害賠償金は5000万ダラだった。かなりの痛手だけれど、今までの蓄えがあるから大丈夫だと思う。

 家の床下にはエイキン大商会からもらった多くの謝礼金と一緒に、コツコツと貯めていたお給金が詰まった壺がある。エイキン大商会からの贈り物は、宝石やアーネット子爵領産の高級シルクやリネンで、ほぼ6年分床下に隠してあった。

(ふん! 教師の資格なんて剥奪されても当分はへっちゃらだわ)



 
「この世は私の為にあるぅ~~♫」

 入浴を済ませワインを片手に、お気に入りの歌を歌いながら自宅の床下を開けた。

「きゃぁーー!!」 

 床下から出てきたのは大量のネズミだった。

「なっ、なによぉーー。これぇーー!」

 札束は全てかじられ原型を留めていないし、高級生地には全て穴があき、ネズミの毛だらけ糞だらけだ。

「あっ、宝石は大丈夫だ、ちゃんとあるわ。これだけでもきっと相当の価値だもの。10年は遊んで暮らせるわよね」

 けれど宝石を持ち込んだ質屋のオーナーには、どれも精巧に作られたイミテーションだと言われ鼻で笑われた。

(あんのぉ、ごうつくばりエイキン商会長め! 偽物ばかりを贈ってきてたのね! 悔しいぃーー)


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