62 / 64
連載
続編 フィントン男爵夫人の末路
しおりを挟む
※本編59話の続きとしての展開になります。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
私達は国王陛下から犯罪奴隷10年の刑とされた。夫とは引き離され大農園で朝から暗くなるまで働かされるが、与えられる食物はわずかだ。野菜の切れ端が少しだけ浮いた薄いスープと固いパンしか食べられないし、休憩時間はほぼないに等しい。
ここは綿花農園で炎天下のなか、綿をひたすら手で摘む作業に目眩が起こる。ふらつき倒れそうになるとムチで背中を打たれた。
「こんな食事だと身体が動きません。仕事の効率だって悪くなります」
奴隷監督に意見をした男は穴倉に三日ほど閉じ込められ、ムチを打たれ続け瀕死の状態で出てきた。それを見て他の奴隷達は誰も口答えができなくなる。
「奴隷はいくらでもいるんだからお前達は家畜以下なのだよ」
農場主に雇われている奴隷監督はムチを片手に持ちながら勝ち誇ったような笑みを浮かべた。食べ物も最小限で生きていられるだけのギリギリの生活が続く。一日中お腹がすいているし、体力がないのでふらふらだ。
奴隷部屋に寝具はない。冷たく固い床に重なり合うようにして横になる。一日中働かされて泥のように眠る場所がこれでは、私達の身体はどんどん弱っていく。生きるか死ぬかのぎりぎりのところで生かされている道具が私達なのだ。
(なんで私がこんなことにならないといけないのよ。なにも悪い事なんてしてないのに)
不満ばかりが噴き出す。初めの頃はリネータのせいでこのような目に遭っていることに憤りしか感じなかった。けれど同年代の奴隷キャンディスが、娘の為に毎晩祈るのを聞いて少しづつ気持ちが変わっていった。
「育て方を間違ったのです。あの子のせいではありません。甘やかしすぎました」
キャンディスの言葉に、私もリネータへの接し方を思い返す。確かになんでも欲しい物を与え続け、叱った記憶もあまりなかった。当時の私の関心ごとはドレスに宝石と着飾ることばかりで、リネータの教育を真剣に考えていなかったと思う。自分の愚かさに唇を噛みしめる。
リネータも犯罪奴隷に堕とされてきっと苦労をしているはずだ。その責任は堅実な女性に育てあげることを怠った私の責任でもあった。
10年の犯罪奴隷生活を終え、私とキャンデスは修道院を訪ね、自ら修道女となった。神に祈り院内の畑を耕し家畜の世話をし、質素な生活ではあるが心が豊かに潤っていくのがわかる。奴隷としての生活を経験した私達にこの生活は天国だった。
質素ではあるが野菜と肉の入ったスープは味がしたし、パンは柔らかく焼きたてを食べられる。もちろん自分達で自給自足なので楽ではないが、人権を無視した過酷な労働はないしムチで打たれるわけでもない。心の汚れを落とし正しく誠実に生きる喜びを感じ穏やかな日々を過ごす。
そこからさらに歳月が経ち、修道院でたくさんの本を読み多くのことを学んだ私は修道院長になっていた。多くの悩みを抱える女性達の相談を修道院でうけるようになり、救いを求めて全国から女性達が来るようになった。
リネータが危害を加えようとしたアーネット子爵令嬢のグレイス様は、今ではポールスランド伯爵夫人となっていた。その方に心からの謝罪のお手紙を送ると、リネータも市井で頑張っているという嬉しい情報と私の身体を気遣う優しいお返事がいただけた。
お忍びでリネータの食堂を訪れ、遠目に元気な様子を確かめた。地道に確実に幸せな道を歩んでいることに胸をなでおろし神に感謝する。
リネータの食堂の近くの池に数匹いたガマガエルがこちらを見た気がした。
「ゲロゲロゲロ」
カエルの鳴き声に見送られて修道院に帰っていく私の顔は晴れやかだった。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
私達は国王陛下から犯罪奴隷10年の刑とされた。夫とは引き離され大農園で朝から暗くなるまで働かされるが、与えられる食物はわずかだ。野菜の切れ端が少しだけ浮いた薄いスープと固いパンしか食べられないし、休憩時間はほぼないに等しい。
ここは綿花農園で炎天下のなか、綿をひたすら手で摘む作業に目眩が起こる。ふらつき倒れそうになるとムチで背中を打たれた。
「こんな食事だと身体が動きません。仕事の効率だって悪くなります」
奴隷監督に意見をした男は穴倉に三日ほど閉じ込められ、ムチを打たれ続け瀕死の状態で出てきた。それを見て他の奴隷達は誰も口答えができなくなる。
「奴隷はいくらでもいるんだからお前達は家畜以下なのだよ」
農場主に雇われている奴隷監督はムチを片手に持ちながら勝ち誇ったような笑みを浮かべた。食べ物も最小限で生きていられるだけのギリギリの生活が続く。一日中お腹がすいているし、体力がないのでふらふらだ。
奴隷部屋に寝具はない。冷たく固い床に重なり合うようにして横になる。一日中働かされて泥のように眠る場所がこれでは、私達の身体はどんどん弱っていく。生きるか死ぬかのぎりぎりのところで生かされている道具が私達なのだ。
(なんで私がこんなことにならないといけないのよ。なにも悪い事なんてしてないのに)
不満ばかりが噴き出す。初めの頃はリネータのせいでこのような目に遭っていることに憤りしか感じなかった。けれど同年代の奴隷キャンディスが、娘の為に毎晩祈るのを聞いて少しづつ気持ちが変わっていった。
「育て方を間違ったのです。あの子のせいではありません。甘やかしすぎました」
キャンディスの言葉に、私もリネータへの接し方を思い返す。確かになんでも欲しい物を与え続け、叱った記憶もあまりなかった。当時の私の関心ごとはドレスに宝石と着飾ることばかりで、リネータの教育を真剣に考えていなかったと思う。自分の愚かさに唇を噛みしめる。
リネータも犯罪奴隷に堕とされてきっと苦労をしているはずだ。その責任は堅実な女性に育てあげることを怠った私の責任でもあった。
10年の犯罪奴隷生活を終え、私とキャンデスは修道院を訪ね、自ら修道女となった。神に祈り院内の畑を耕し家畜の世話をし、質素な生活ではあるが心が豊かに潤っていくのがわかる。奴隷としての生活を経験した私達にこの生活は天国だった。
質素ではあるが野菜と肉の入ったスープは味がしたし、パンは柔らかく焼きたてを食べられる。もちろん自分達で自給自足なので楽ではないが、人権を無視した過酷な労働はないしムチで打たれるわけでもない。心の汚れを落とし正しく誠実に生きる喜びを感じ穏やかな日々を過ごす。
そこからさらに歳月が経ち、修道院でたくさんの本を読み多くのことを学んだ私は修道院長になっていた。多くの悩みを抱える女性達の相談を修道院でうけるようになり、救いを求めて全国から女性達が来るようになった。
リネータが危害を加えようとしたアーネット子爵令嬢のグレイス様は、今ではポールスランド伯爵夫人となっていた。その方に心からの謝罪のお手紙を送ると、リネータも市井で頑張っているという嬉しい情報と私の身体を気遣う優しいお返事がいただけた。
お忍びでリネータの食堂を訪れ、遠目に元気な様子を確かめた。地道に確実に幸せな道を歩んでいることに胸をなでおろし神に感謝する。
リネータの食堂の近くの池に数匹いたガマガエルがこちらを見た気がした。
「ゲロゲロゲロ」
カエルの鳴き声に見送られて修道院に帰っていく私の顔は晴れやかだった。
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。