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おまけ
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ガブリエルside
弟が恋人を連れて結婚の挨拶に戻ってくると、ある夜父がそう話してくれた。
ラファエルは父様に似て、茶色の髪、瞳をして、顔立ちも可愛い。
ただ表立って言えなかった。母が怒るから。
母は、金髪、碧眼が貴族である証拠と言わんばかりである。自分が産んだのに、その色味を引き継がなかったラファエルを毛嫌いしていた。
私がラファエルを庇うと、母は父や兄、私に隠れてラファエルを折檻した。そのことを知ってから、私は母に同調することしかできなかった。
何度も心の中で謝った。
父と母は政略結婚だった。父は男爵の3代目になるので、ここらで子爵家から嫁を娶り、家に箔をつけたかった。母は、子爵家にも関わらず、金遣いが荒かった。
前子爵と前男爵の思いが一致しての政略結婚だった。
我が家の財産はほぼ母の散財に使われた。
兄が結婚して、兄嫁の持参金でなんとか立て直したけど、散財するのが一人増えただけだった。
父と兄が一生懸命に金策をしているのを知っていたが、私が手伝えることも、母たちを諫めることもできなかった。
ラファエルが戻ってくる日、母が私の結婚相手を見つけるために、お茶会に連れ出した。
『弟の恋人を盗った兄』として、受け入れ先は見つかっていない。
この先も見つかる訳がないのを知っている。
母はそんなこともわかっていない。
楽しくないお茶会に出て、母は用事があるからと別々に帰ることになった。
帰り掛けに、噂を面白おかしく流す知人に捕まった。
母がさっきのお茶会でラファエルが恋人を連れて帰ってくると言っていたから、話を聞きたいのだろう。
料理店に入り、父から聞いた人物とは真逆な人物像を話した。ラファエルには幸せになってもらいたいけど、ラファエルをバカにする人が多いから。だから、ラファエルの恋人に興味を持たないでもらいたかった。
でも、まさかラファエルたちが偶然居合わせるなんて思ってもいなかったわけで。
夜、ラファエルと話をしたくて、兄に頼んで応接室に呼んでもらった。
兄とベル様も同席してもらった。
「ごめん、ラファエルごめんなさい。」
と私が謝罪した。これまでの酷い態度や言葉も全部。
ただ母から守りたかっただけだった。
泣きながら、今までのことを話した。
学園で恋人を盗ったのも、実は彼には悪い仲間がいて、仲間と恋人を共有しあうと言う噂を聞いていたから。
私なら上手く躱せても、ラファエルの素直な性格なら、毒牙にかかっただろうから。
ラファエルはちゃんと話を聞いてくれた。
「私はラファエルの兄だから守りたかったのに、ラファエルを傷付けてばかりだった。許さなくてもいい。…ただ、母がいなくなるなら、謝れるのが今しかないと思って。」
「ガブリエル、僕知ってましたよ。酷い言葉を投げつけた後、苦しい表情をしているのを。それに背中の傷に覚えなかったのは、僕が忘れたかったから、忘れてしまったんですね。母様の折檻でしたか。」
「あの時ラファエルが血を流して、死んでしまうのではないかと思って。母が怖くて、…それ以上にラファエルが喪う方がもっと怖くて。」
私は、当時の感情を思い出したのか、ガタガタ震える。自分自身を抱きしめて、震えを止めようするけど、なかなか止まらない。
兄が私の背中を摩る。
向かいに座っていたラファエルも私の手を取り、温めてくれた。
「ガブリエル、やり方は間違いだらけでした。父様や兄様に相談できたはずです。あ、でも、四六時中母様はガブリエルにべったりだったので、難しかったかな。……話してくれてありがとう。誤解したまま過ごすところでした。」
「私は、まだ、ラファエルの、兄で、いて、いいか?」
「泣き過ぎです。兄様、ハンカチ、いやタオルください。」
兄がタオルを取りに出て、すぐに戻ってきた。
ラファエルがタオルを受け取り、私の涙を拭いてくれた。
「はい、兄でいてください。但し、今まで遊んでいた分は父様の手伝いをして挽回してください。父様、兄様に認められるくらいにならなければ、謝罪は受け入れません。ガブリエルの嫌いな努力を沢山してください。」
「わがっだ。」
「兄様、カルシオンが証人ですからね。約束を違えないように頑張ってください。」
「うん。」
王都に戻ったラファエルはすぐに結婚したようだ。同日に両親の離縁した日だと分かった時は父と兄3人で笑った。
あれから毎日父の側で仕事をする。覚えることややることが沢山だ。
兄嫁もあれから少しずつ変わって、散財はなくなってきた。ラファエルにダメ人間製造機とは呼ばれたくないのだろう。
母は、実家に戻り、離れに閉じ込められているらしい。
子爵家も代替わりをして、母の弟の子供が継いでいる。今更出戻ってきた叔父の扱いには困っているそうだ。
ラファエルが幸せなら私はそれでいい。
あんな怖い思いは二度としたくない。
私がラファエルに兄として誇ってもらえるように、今日も頑張っていこう。
ーーーーーーーーーー
ここまで読んでいただきありがとうございます。
おまけです。番外編に入れ忘れました。
弟が恋人を連れて結婚の挨拶に戻ってくると、ある夜父がそう話してくれた。
ラファエルは父様に似て、茶色の髪、瞳をして、顔立ちも可愛い。
ただ表立って言えなかった。母が怒るから。
母は、金髪、碧眼が貴族である証拠と言わんばかりである。自分が産んだのに、その色味を引き継がなかったラファエルを毛嫌いしていた。
私がラファエルを庇うと、母は父や兄、私に隠れてラファエルを折檻した。そのことを知ってから、私は母に同調することしかできなかった。
何度も心の中で謝った。
父と母は政略結婚だった。父は男爵の3代目になるので、ここらで子爵家から嫁を娶り、家に箔をつけたかった。母は、子爵家にも関わらず、金遣いが荒かった。
前子爵と前男爵の思いが一致しての政略結婚だった。
我が家の財産はほぼ母の散財に使われた。
兄が結婚して、兄嫁の持参金でなんとか立て直したけど、散財するのが一人増えただけだった。
父と兄が一生懸命に金策をしているのを知っていたが、私が手伝えることも、母たちを諫めることもできなかった。
ラファエルが戻ってくる日、母が私の結婚相手を見つけるために、お茶会に連れ出した。
『弟の恋人を盗った兄』として、受け入れ先は見つかっていない。
この先も見つかる訳がないのを知っている。
母はそんなこともわかっていない。
楽しくないお茶会に出て、母は用事があるからと別々に帰ることになった。
帰り掛けに、噂を面白おかしく流す知人に捕まった。
母がさっきのお茶会でラファエルが恋人を連れて帰ってくると言っていたから、話を聞きたいのだろう。
料理店に入り、父から聞いた人物とは真逆な人物像を話した。ラファエルには幸せになってもらいたいけど、ラファエルをバカにする人が多いから。だから、ラファエルの恋人に興味を持たないでもらいたかった。
でも、まさかラファエルたちが偶然居合わせるなんて思ってもいなかったわけで。
夜、ラファエルと話をしたくて、兄に頼んで応接室に呼んでもらった。
兄とベル様も同席してもらった。
「ごめん、ラファエルごめんなさい。」
と私が謝罪した。これまでの酷い態度や言葉も全部。
ただ母から守りたかっただけだった。
泣きながら、今までのことを話した。
学園で恋人を盗ったのも、実は彼には悪い仲間がいて、仲間と恋人を共有しあうと言う噂を聞いていたから。
私なら上手く躱せても、ラファエルの素直な性格なら、毒牙にかかっただろうから。
ラファエルはちゃんと話を聞いてくれた。
「私はラファエルの兄だから守りたかったのに、ラファエルを傷付けてばかりだった。許さなくてもいい。…ただ、母がいなくなるなら、謝れるのが今しかないと思って。」
「ガブリエル、僕知ってましたよ。酷い言葉を投げつけた後、苦しい表情をしているのを。それに背中の傷に覚えなかったのは、僕が忘れたかったから、忘れてしまったんですね。母様の折檻でしたか。」
「あの時ラファエルが血を流して、死んでしまうのではないかと思って。母が怖くて、…それ以上にラファエルが喪う方がもっと怖くて。」
私は、当時の感情を思い出したのか、ガタガタ震える。自分自身を抱きしめて、震えを止めようするけど、なかなか止まらない。
兄が私の背中を摩る。
向かいに座っていたラファエルも私の手を取り、温めてくれた。
「ガブリエル、やり方は間違いだらけでした。父様や兄様に相談できたはずです。あ、でも、四六時中母様はガブリエルにべったりだったので、難しかったかな。……話してくれてありがとう。誤解したまま過ごすところでした。」
「私は、まだ、ラファエルの、兄で、いて、いいか?」
「泣き過ぎです。兄様、ハンカチ、いやタオルください。」
兄がタオルを取りに出て、すぐに戻ってきた。
ラファエルがタオルを受け取り、私の涙を拭いてくれた。
「はい、兄でいてください。但し、今まで遊んでいた分は父様の手伝いをして挽回してください。父様、兄様に認められるくらいにならなければ、謝罪は受け入れません。ガブリエルの嫌いな努力を沢山してください。」
「わがっだ。」
「兄様、カルシオンが証人ですからね。約束を違えないように頑張ってください。」
「うん。」
王都に戻ったラファエルはすぐに結婚したようだ。同日に両親の離縁した日だと分かった時は父と兄3人で笑った。
あれから毎日父の側で仕事をする。覚えることややることが沢山だ。
兄嫁もあれから少しずつ変わって、散財はなくなってきた。ラファエルにダメ人間製造機とは呼ばれたくないのだろう。
母は、実家に戻り、離れに閉じ込められているらしい。
子爵家も代替わりをして、母の弟の子供が継いでいる。今更出戻ってきた叔父の扱いには困っているそうだ。
ラファエルが幸せなら私はそれでいい。
あんな怖い思いは二度としたくない。
私がラファエルに兄として誇ってもらえるように、今日も頑張っていこう。
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ここまで読んでいただきありがとうございます。
おまけです。番外編に入れ忘れました。
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