年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ

文字の大きさ
18 / 20

18.質問と再びの提案2

しおりを挟む
「わたくし、自分の家に利益のある結婚をしたいと思っています。今後も我が子爵家の継続を考えているのですが、そうすると……その婿養子にという話になるんですが、ルドヴィック様はそれはよろしいのですか?」
「もちろん。むしろ、そのつもりです。もし今後爵位を賜るときもあなたの家と統合しようと思っています」
「そ、それは……周囲がなんというか」
「私が決めたことに口出しできるのは、私と伴侶だけです。大丈夫です、たとえ国主といえども、渡した爵位の扱いに口出す権利はありませんので」

 国主――つまり国王も黙らせると。

「ご実家の御父上は、もっと立派な家の者と結婚してほしいのではないかとも思いまして」
「私は三男で、すでに実家を出ています。両親にとやかく言われる筋合いはありませんが――きっとあなたは気にするのでしょうね。ご両親は良い方たちだから」
「仮に、わたくしがこの求婚を受け入れたとしても、ミルドレット侯爵様が反対したら、我が子爵家では太刀打ちできないと思いました。きっと潰されるだろうと」
「そんな事にはなりません。我が家は恋愛結婚主義なので。政略結婚するよりも、よっぽど歓迎されます。一応貴族は平民と結婚する際には議会と国王の承認が必要ですが、よっぽどのことが無い限り、通ります。つまり、事実上恋愛結婚なら平民とであろうと歓迎されるという事です」

 にこにこと説明するルドヴィックに、やっぱり少し疑いたくなるヴィクトリア。
 平民でも問題ないとは言っているが、彼の家の人間はほとんど政略結婚なのではないかと思うほどの相手と結婚している。
 ただし、どの夫婦も仲が良好なのもまた事実だった。

「もし、お疑いなら今から私の実家に行きますか? きっと歓迎されますよ」
「いえ、それはまたの機会で」

 訪問の窺いも立てていないのに、格上の家に突然赴くのは礼儀に反する。
 たとえ、それがルドヴィック――友人の実家で会っても。
 むしろ、実家であるからこそ行きたくない。なぜか、行ってはいけない気配がした。
 ルドヴィックは未だに疑いの晴れないヴィクトリアにそれなら、と一つ提案をしてきた。

「ヴィクトリア嬢、これは提案なのですが……友人から婚約者になってみませんか?」
「それは一体?」
「婚約者らしく会わないかという提案です」

 なんだかおかしい方向に話が進む。

「友人と婚約者は全く違います。それは、ヴィクトリア嬢もわかりますよね?」

 それくらいは言われなくても分かっているが、だからなんどというのだろうかと首を捻るヴィクトリア。

「ですから、婚約者として過ごしてみて、私の気持ちを分かってほしいなと思いまして。やはり一目惚れというのは言葉で説明できない類のものですし、行動で証明するしかないと思いました。結婚の話はひとまず置いておいて、私をもっと近くで知ってみませんか? それで無理だと思った時求婚を断って下さい。今のまま断られても、私は納得できません」

 真剣にこちらを見つめるルドヴィックに罪悪感がわいた。
 気持ちを疑われるというのは気持ちのいいものではない。
 しかし、それはそれで問題ありすぎる。

「ああ、もちろん。何かありました、責任は取ります。むしろ取らせてください」
「いえ、あの。ルドヴィック様をお待たせするのはあまりよろしくないかと」
「私は急いでいませんので、ゆっくりお互い知っていきましょう。もちろん、結婚してからゆっくり知っていくというのもいいですが」
「結婚前の方が好ましいです」

 どちらにしますかとにこりと微笑まれ、当然結婚前に決まっていると選ぶ。
 そこではたと、止まった。
 そもそもなんで、結婚前か結婚後かの選択になるのだろうかと。

「では、今から婚約者として振る舞っていいという事でよろしいですか?」
「求婚を受け入れていないのに婚約者というのはちょっと問題があるかと思います」
「では、恋人にしましょう。どちらでも私はいいですよ? 婚約者として振る舞うか恋人として振る舞うか。どちらも似たようなものです。ちなみに、どちらもなしというのは駄目です。私に対して罪悪感があるのなら、提案を受け入れて下さい。疑われたままというのは気持ちがいいものではありません」
「それはその通りですが……」

 押しが強い。
 ヴィクトリアだって、商人の娘。押しの強い相手との交渉だってやってきたが、今目の前にいるのが私的な相手という事もあって、なかなか強気になれないでいた。
 しかも、いわゆる恋愛的なものにはめっぽう知識がないので、どういえば角が立たないのかというのが分からない。

「では、今から恋人として振る舞っていいですよね? それとも婚約者? ああ、恋人だったけど婚約者になったという設定にしましょう。その方がおいしいですから」

 何がどうおいしいのだろうか。
 ヴィクトリアに断る隙を与えない様に、ルドヴィックは話をまとめにかかった。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

離婚します!~王妃の地位を捨てて、苦しむ人達を助けてたら……?!~

琴葉悠
恋愛
エイリーンは聖女にしてローグ王国王妃。 だったが、夫であるボーフォートが自分がいない間に女性といちゃついている事実に耐えきれず、また異世界からきた若い女ともいちゃついていると言うことを聞き、離婚を宣言、紙を書いて一人荒廃しているという国「真祖の国」へと向かう。 実際荒廃している「真祖の国」を目の当たりにして決意をする。

王子に買われた妹と隣国に売られた私

京月
恋愛
スペード王国の公爵家の娘であるリリア・ジョーカーは三歳下の妹ユリ・ジョーカーと私の婚約者であり幼馴染でもあるサリウス・スペードといつも一緒に遊んでいた。 サリウスはリリアに好意があり大きくなったらリリアと結婚すると言っており、ユリもいつも姉さま大好きとリリアを慕っていた。 リリアが十八歳になったある日スペード王国で反乱がおきその首謀者として父と母が処刑されてしまう。姉妹は王様のいる玉座の間で手を後ろに縛られたまま床に頭をつけ王様からそして処刑を言い渡された。 それに異議を唱えながら玉座の間に入って来たのはサリウスだった。 サリウスは王様に向かい上奏する。 「父上、どうか"ユリ・ジョーカー"の処刑を取りやめにし俺に身柄をくださいませんか」 リリアはユリが不敵に笑っているのが見えた。

地味令嬢と嘲笑された私ですが、第二王子に見初められて王妃候補になったので、元婚約者はどうぞお幸せに

有賀冬馬
恋愛
「君とは釣り合わない」――そう言って、騎士団長の婚約者はわたしを捨てた。 選んだのは、美しくて派手な侯爵令嬢。社交界でも人気者の彼女に、わたしは敵うはずがない……はずだった。 けれどその直後、わたしが道で偶然助られた男性は、なんと第二王子!? 「君は特別だよ。誰よりもね」 優しく微笑む王子に、わたしの人生は一変する。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります 番外編<悪女の娘>

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私の母は実母を陥れた悪女でした <モンタナ事件から18年後の世界の物語> 私の名前はアンジェリカ・レスタ― 18歳。判事の父と秘書を務める母ライザは何故か悪女と呼ばれている。その謎を探るために、時折どこかへ出かける母の秘密を探る為に、たどり着いた私は衝撃の事実を目の当たりにする事に―! ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

冷徹公爵閣下は、書庫の片隅で私に求婚なさった ~理由不明の政略結婚のはずが、なぜか溺愛されています~

白桃
恋愛
「お前を私の妻にする」――王宮書庫で働く地味な子爵令嬢エレノアは、ある日突然、<氷龍公爵>と恐れられる冷徹なヴァレリウス公爵から理由も告げられず求婚された。政略結婚だと割り切り、孤独と不安を抱えて嫁いだ先は、まるで氷の城のような公爵邸。しかし、彼女が唯一安らぎを見出したのは、埃まみれの広大な書庫だった。ひたすら書物と向き合う彼女の姿が、感情がないはずの公爵の心を少しずつ溶かし始め…? 全7話です。

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

婚約者に好きな人がいると言われ、スパダリ幼馴染にのりかえることにした

みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染みバラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められる。 疑いをはらそうと説明しても、信じようとしない婚約者に怒りを感じ、『幼馴染みのイザークが婚約者なら良かったのに』と、口をすべらせてしまう。 そこからさらにこじれ… アンリエッタと婚約者の問題は、幼馴染みのイザークまで巻き込むさわぎとなり―――――― 🌸お話につごうの良い、ゆるゆる設定です。どうかご容赦を(・´з`・)

処理中です...