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41.ローデンサイド
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ヘンリーとの会話を終えて、部屋を出たところで、ローデンは苦々しく顔を歪ませた。
こんなに不愉快なのは、本当に久しぶりだ。
最近で最も不愉快だったのは、前伯爵でありヘンリーの父親が借金を追い、ヘンリーに成金子爵家との政略結婚を命じた時だ。
しかし、今はそれ以上だった。
衛兵隊が来る。
この美しい邸宅を汚らわしくも踏み荒らそうとする者たち。
そして、この邸宅の何もかもを侮辱する行為を行う者たち。
「ふふふ、……まさかこれほどとはな」
ローデンは、思わず笑い声が口から洩れた。
衛兵隊を動かすという事は、すでに王家との話し合いはすんでいるとみて間違いはない。
ほとんどの上級貴族は、人には言えない後ろ暗い事の一つや二つある。それで、国が回っているのだから、国王とて簡単には手が出せない。
ましてや、犯罪者と確定している訳でもないのに、衛兵隊が来るとは、本気で伯爵家を見限ったとみる方がいい。
ヘンリーはそこまで考えていない。
この邸宅で行われていたことは、世間一般では犯罪と言われる部類でも、貴族にとってはそうではないと思っている。
それは事実だ。
誰も、貴族の邸宅内でおこったことは口には出さない。
出したとしても、それが大事件に繋がることはない。
そういう風にできているのだ。
「親しいご友人の情報は本当にただしいのか」
自分の育てたヘンリーは少しばかり鈍く頭の回転も遅いが、ローデンがやりやすいので別に問題は無かった。
貴族としては見てくれがいいので、そんなに問題になる事は無かったが、こういう時は困りものなのも確かだ。
「ふー、全く最近は忙しい……余計な邪魔ばかり入る」
ふと、立ち止まり、考えてみれば、ここ最近からではない気がした。
前伯爵の時代から、少しずつ上手くいかないことが増えた。
特に、投資が失敗したとき。
あの時は、無能な当主のせいだと思ったが、今考えれば、誰かが故意に陥れたようにも思えた。
「まさか、あれから?」
ローデンは常に冷静であれと、言われて育った。
いついかなる時でも、家門を守るようにと。
ヘンリーはローデンが育てた。
思い入れが人一倍ある自覚はあるが――。
「……腹の子を処分するのは時期尚早だったか――」
まもなく来るであろう、衛兵隊に上手く訴えることが出来れば、家門くらいは守れるかもしれない。
ヘンリーはマリアの腹の子供を自分の子供ではないと切り捨てたが、ローデンはアリアの腹の子はヘンリーの子供で間違いないだろうと思っていた。
そこは疑ってはいない。
あれだけ寵愛して、この邸宅からほとんど外に出ないマリアが、他で男と楽しんでいるなど考えられないからだ。
あばずれだとは思うが、そこまで愚かでもない。
「さて、どうやって処分するか」
一応、最低限は掃除をしておかなければならない。
間に合わなくとも、あとはヘンリーの責めにすれば、大切なヘンリーがすべての責任者となってくれる筈だ。
「子供は、数人いますしね」
あれだけ好き勝手に女を抱けば、少なからず子供ができる。
マリアの腹の子だけでない私生児は、それこそ数人存在していた。
はじめは殺そうとも思ったが、何人かは生かしている。
まさに、自分の判断を褒めたいところだ。
「教育を施し、一から始めればいいだけだ」
ヘンリーに代わる子供を育てる。
認めたくはないが、教育が間違っていた。
「そのために、今から動かなければならないな」
ローデンは執事だ。
主人のため、いや家門のために生きている。
たとえ、当主を失っても、この一族の事を誰よりも知っているローデンが生き残れば、再興することは出来る。
逆に言えば、当主が生き残っても、ローデンがいなくなれば、きっと落ちぶれて消えていく。
「はあ、私ももっと優秀な子供を作るべきか……」
一番優秀だと思っていた子供が、実は一番反抗的で感情的な無能だったので追い出した。
その後何人も子供を持ち、この邸宅の下働きなどをさせてはいたが、下男止まりで目をかけるほどの存在にはなり得なかった。
「さて、少し細工を施しておこう。簡単にばれてしまってはおもしくはない」
ローデンが階下への階段を降り始めた時、普段静かな邸宅が、騒々しさが伝わってきた。
何事かと思い、階下の出来事を眺めるとローデンがぐっとこぶしを握った。
「仕事が早いことだ」
そこにはすでに邸宅に押し掛けた衛兵隊がずらりと並んでいた。
こんなに不愉快なのは、本当に久しぶりだ。
最近で最も不愉快だったのは、前伯爵でありヘンリーの父親が借金を追い、ヘンリーに成金子爵家との政略結婚を命じた時だ。
しかし、今はそれ以上だった。
衛兵隊が来る。
この美しい邸宅を汚らわしくも踏み荒らそうとする者たち。
そして、この邸宅の何もかもを侮辱する行為を行う者たち。
「ふふふ、……まさかこれほどとはな」
ローデンは、思わず笑い声が口から洩れた。
衛兵隊を動かすという事は、すでに王家との話し合いはすんでいるとみて間違いはない。
ほとんどの上級貴族は、人には言えない後ろ暗い事の一つや二つある。それで、国が回っているのだから、国王とて簡単には手が出せない。
ましてや、犯罪者と確定している訳でもないのに、衛兵隊が来るとは、本気で伯爵家を見限ったとみる方がいい。
ヘンリーはそこまで考えていない。
この邸宅で行われていたことは、世間一般では犯罪と言われる部類でも、貴族にとってはそうではないと思っている。
それは事実だ。
誰も、貴族の邸宅内でおこったことは口には出さない。
出したとしても、それが大事件に繋がることはない。
そういう風にできているのだ。
「親しいご友人の情報は本当にただしいのか」
自分の育てたヘンリーは少しばかり鈍く頭の回転も遅いが、ローデンがやりやすいので別に問題は無かった。
貴族としては見てくれがいいので、そんなに問題になる事は無かったが、こういう時は困りものなのも確かだ。
「ふー、全く最近は忙しい……余計な邪魔ばかり入る」
ふと、立ち止まり、考えてみれば、ここ最近からではない気がした。
前伯爵の時代から、少しずつ上手くいかないことが増えた。
特に、投資が失敗したとき。
あの時は、無能な当主のせいだと思ったが、今考えれば、誰かが故意に陥れたようにも思えた。
「まさか、あれから?」
ローデンは常に冷静であれと、言われて育った。
いついかなる時でも、家門を守るようにと。
ヘンリーはローデンが育てた。
思い入れが人一倍ある自覚はあるが――。
「……腹の子を処分するのは時期尚早だったか――」
まもなく来るであろう、衛兵隊に上手く訴えることが出来れば、家門くらいは守れるかもしれない。
ヘンリーはマリアの腹の子供を自分の子供ではないと切り捨てたが、ローデンはアリアの腹の子はヘンリーの子供で間違いないだろうと思っていた。
そこは疑ってはいない。
あれだけ寵愛して、この邸宅からほとんど外に出ないマリアが、他で男と楽しんでいるなど考えられないからだ。
あばずれだとは思うが、そこまで愚かでもない。
「さて、どうやって処分するか」
一応、最低限は掃除をしておかなければならない。
間に合わなくとも、あとはヘンリーの責めにすれば、大切なヘンリーがすべての責任者となってくれる筈だ。
「子供は、数人いますしね」
あれだけ好き勝手に女を抱けば、少なからず子供ができる。
マリアの腹の子だけでない私生児は、それこそ数人存在していた。
はじめは殺そうとも思ったが、何人かは生かしている。
まさに、自分の判断を褒めたいところだ。
「教育を施し、一から始めればいいだけだ」
ヘンリーに代わる子供を育てる。
認めたくはないが、教育が間違っていた。
「そのために、今から動かなければならないな」
ローデンは執事だ。
主人のため、いや家門のために生きている。
たとえ、当主を失っても、この一族の事を誰よりも知っているローデンが生き残れば、再興することは出来る。
逆に言えば、当主が生き残っても、ローデンがいなくなれば、きっと落ちぶれて消えていく。
「はあ、私ももっと優秀な子供を作るべきか……」
一番優秀だと思っていた子供が、実は一番反抗的で感情的な無能だったので追い出した。
その後何人も子供を持ち、この邸宅の下働きなどをさせてはいたが、下男止まりで目をかけるほどの存在にはなり得なかった。
「さて、少し細工を施しておこう。簡単にばれてしまってはおもしくはない」
ローデンが階下への階段を降り始めた時、普段静かな邸宅が、騒々しさが伝わってきた。
何事かと思い、階下の出来事を眺めるとローデンがぐっとこぶしを握った。
「仕事が早いことだ」
そこにはすでに邸宅に押し掛けた衛兵隊がずらりと並んでいた。
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