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偶然と必然の再会
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先生との話を終えた後、俺は机の中に本を忘れたことに気づき教室へと戻った。すでに上条は帰ったようだが、まだ男子が一人だけ残っていた。そしてその男子は俺が教室に入るなりジッとこちらを見ている。
教室に漂うこの気まずさから俺は急ぎ足で自分の席へ向かい、本をバッグに入れた。そして帰ろうと教室のドアの方に体を向けると、教室に残っていた一人が俺の行く手を阻むように立っていた。
「待って! ……その、あのー…… さっきはごめん!」
モジモジしているかと思えば突然勢いよく頭を下げた。俺は文句を言われると思ったのでその予想外の行動に少し驚いた。
「いいよ。別に気にしてないから」
「本当にごめん!! 怒るのも分かるし都合が良いのもわかってる。けど悪かった。許してほしい」
俺は普通に答えたつもりだったが、どうやら素っ気なく怒っているように感じたのか男は慌ててもう一度謝ってきた。
「俺は怒ってないし、君の謝罪は受け入れるよ。だからもう気にしなくていい」
クラスの半分以上が何も害していない俺の悪口を言っていて、そのことを一切悪いと思っていないそいつらを俺はクソ野郎だと認識していた。その中でこいつは一人俺に悪かったと謝ってきた。こいつはいい奴なんじゃないかと思った。
しかしこの男は先生が呼んだ名前のうちどれかだけど、俺は全く覚えてないので少し申し訳なくも思った。
「ありがとう。俺もう二度とこういうことしないから」
そう言うと走って教室を出て行った。俺は別に急いでいるわけじゃないので走ることなく教室を出て靴箱へ向かった。
今日はまだお昼前で咲のお迎えは14時である。普段よりも早く迎えに行って家でおやつを食べさせてあげられるので、咲のおやつは何にしようかと考えながら靴箱を出て歩いていると、突然あっ! という大きな声が聞こえた。そしてその直後に先ほどの大きな声を上回る大きな声で名前を呼ばれた。
「徹くん!」
その声で誰だかは分かったが、声のした方へ振り向くとその声の主はすでにこちらに向かって走ってきていた。
「ひ、久しぶりだね!!」
「そうだね。愛華さんは何でここに? 調理科の校舎はあっちでしょ?」
「え? あ、ああ! 生徒会長に用事があってこっちに来てたの!」
いつもより早口な気がする。何をそんなに慌てる必要があるんだ?
「そっか。まさか偶然会うなんてな」
「そう! 偶然なの! 偶然!」
「やたら偶然を押してくるな。それでそちらの方は?」
俺は愛華さんの横にいる女子について尋ねた。大体見当はついているが。
「あっ! こちらはね――」
「初めまして。愛華の幼なじみの青木乃々花です」
乃々花さんは愛華さんの言葉を遮ってペコっと頭を下げ自己紹介をした。今も俺を見定めるようにジロジロ見てくるその目といい、気の強さが伺えた。
「初めまして乃々花さん。東野徹です」
「青木って呼んでくれる?」
「わかりました。青木さん」
睨むようにして言われたので俺はすぐに訂正した。やはり青木さん気が強い。愛華さんと真逆の性格をしてそうだ。
「それじゃあ俺は帰るのでまた」
夏休みが始まるということで多くの生徒がすでに帰宅しているが、それでも愛華さんと話しているところを誰かに見られるのは少しでも避けたい。俺はこの場を離れるために歩き出そうとしたがすぐに引き止められた。
「愛華とは久しぶりに会ったんでしょ? 少し話していきなさいよ」
「はい」
何かこの人怖いな。逆らってもいいことなさそうなのでここは素直に従っておく。
「立ち話もなんだからあそこに座ろう!」
俺は愛華さんに導かれるまま、靴箱近くの段差に腰をかけた。
教室に漂うこの気まずさから俺は急ぎ足で自分の席へ向かい、本をバッグに入れた。そして帰ろうと教室のドアの方に体を向けると、教室に残っていた一人が俺の行く手を阻むように立っていた。
「待って! ……その、あのー…… さっきはごめん!」
モジモジしているかと思えば突然勢いよく頭を下げた。俺は文句を言われると思ったのでその予想外の行動に少し驚いた。
「いいよ。別に気にしてないから」
「本当にごめん!! 怒るのも分かるし都合が良いのもわかってる。けど悪かった。許してほしい」
俺は普通に答えたつもりだったが、どうやら素っ気なく怒っているように感じたのか男は慌ててもう一度謝ってきた。
「俺は怒ってないし、君の謝罪は受け入れるよ。だからもう気にしなくていい」
クラスの半分以上が何も害していない俺の悪口を言っていて、そのことを一切悪いと思っていないそいつらを俺はクソ野郎だと認識していた。その中でこいつは一人俺に悪かったと謝ってきた。こいつはいい奴なんじゃないかと思った。
しかしこの男は先生が呼んだ名前のうちどれかだけど、俺は全く覚えてないので少し申し訳なくも思った。
「ありがとう。俺もう二度とこういうことしないから」
そう言うと走って教室を出て行った。俺は別に急いでいるわけじゃないので走ることなく教室を出て靴箱へ向かった。
今日はまだお昼前で咲のお迎えは14時である。普段よりも早く迎えに行って家でおやつを食べさせてあげられるので、咲のおやつは何にしようかと考えながら靴箱を出て歩いていると、突然あっ! という大きな声が聞こえた。そしてその直後に先ほどの大きな声を上回る大きな声で名前を呼ばれた。
「徹くん!」
その声で誰だかは分かったが、声のした方へ振り向くとその声の主はすでにこちらに向かって走ってきていた。
「ひ、久しぶりだね!!」
「そうだね。愛華さんは何でここに? 調理科の校舎はあっちでしょ?」
「え? あ、ああ! 生徒会長に用事があってこっちに来てたの!」
いつもより早口な気がする。何をそんなに慌てる必要があるんだ?
「そっか。まさか偶然会うなんてな」
「そう! 偶然なの! 偶然!」
「やたら偶然を押してくるな。それでそちらの方は?」
俺は愛華さんの横にいる女子について尋ねた。大体見当はついているが。
「あっ! こちらはね――」
「初めまして。愛華の幼なじみの青木乃々花です」
乃々花さんは愛華さんの言葉を遮ってペコっと頭を下げ自己紹介をした。今も俺を見定めるようにジロジロ見てくるその目といい、気の強さが伺えた。
「初めまして乃々花さん。東野徹です」
「青木って呼んでくれる?」
「わかりました。青木さん」
睨むようにして言われたので俺はすぐに訂正した。やはり青木さん気が強い。愛華さんと真逆の性格をしてそうだ。
「それじゃあ俺は帰るのでまた」
夏休みが始まるということで多くの生徒がすでに帰宅しているが、それでも愛華さんと話しているところを誰かに見られるのは少しでも避けたい。俺はこの場を離れるために歩き出そうとしたがすぐに引き止められた。
「愛華とは久しぶりに会ったんでしょ? 少し話していきなさいよ」
「はい」
何かこの人怖いな。逆らってもいいことなさそうなのでここは素直に従っておく。
「立ち話もなんだからあそこに座ろう!」
俺は愛華さんに導かれるまま、靴箱近くの段差に腰をかけた。
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