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連絡先の交換
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「あのさ! 徹くん早速なんだけどれん――いったぁぁあ!」
何か言おうとした愛華の言葉は青木さんのバシッという強めの鋭いツッコミによって途切れた。
「ちょっと! 急に頭叩かないでよ! あれ本気だったでしょ⁈」
「本気な訳ないでしょ。少し叩いただけじゃない。それに今のはあんたが悪いわよ。……何あの話の入りは」
「何ってそれが聞きたいのにどうして悪いの?」
「どう考えてもおかしいでしょ。もっと色々な話をした上で切り出しなさいよ」
俺と話をする感じだったのに二人は俺に聞こえない声で話し始めた。しかし最初の青木さんの言葉だけは聞こえた。
『本気な訳ないでしょ。少し叩いただけじゃない』
あのツッコミは俺でも本気でやったなと思うくらいに強かったのにそれを少し叩いただけだって…… やっぱり素直に言うこと聞いておいて正解だったな。
「夏休みの予定とか聞いてからにしなさい。いい? 全くどこに急に連絡先聞くバカがいるのよ」
話は終わったらしいが俺の方に体を向き直した愛華さんの表情はとても硬く緊張しているように見え、青木さんに怒られたのか、もう失敗はできないといったような感じにも思えた。
「また変な顔してるよ?」
そんな愛華さんに俺は初めて顔見られた時と同じような言葉をかける。
「え? あ! また変な顔って言ったなー!」
「だってそんな険しい顔してるから」
「してません! 至って普通ですー!」
そう言ってベーっと舌を出す愛華さんの表情はすでにほぐれていた。
「わかった、わかった。それでさっきは何て言おうとしてたの?」
「あー、あれは何でもないの! 気にしないで! それより明日から夏休みだね」
「そうだね。嬉しい限りだ」
「夏休みは何するかもう決まってるの?」
「んー今のところは何も決まってないけど、今年はできるだけ出かけたいなとは思ってる」
普段聞いてあげられないわがままをたくさん聞いて、それを叶えてあげたい。できるだけ咲と一緒にいて、色々な所に連れて行ってたくさんのものを見せてあげたい。
「そうなんだ! 徹くんって極力家から出たくない人なのかなって思ってた」
「それは勝手なイメージだな。また見た目で判断したな?」
「うっ。それにめんどくさがりっぽいし、ずっと寝てそうだから引きこもりでしょ?」
「見た目で判断したのは否定しないんだな。めんどくさがりなのは認めるけど俺は引きこもりじゃない」
「そっか! どこに出かけようと思ってるの?」
「そうだな――」
咲を連れて行くとしたらまだ行ったことのない場所で喜びそうなところがいいよな……
「海とかかな。あっ! 花火大会もいいな」
「え? それって、その、誰かとで、デートするの……?」
「いや? 彼女なんていないからデートじゃないよ」
「へ、へぇ」
今日の愛華さんはどこかおかしい。明らかに動揺し始めたと思ったら突然平然を装い澄まし顔をしている。愛華さんの隣に座っている青木さんはやれやれといった表情をしている。
「何か今日変じゃないか?」
「そんなことないよ! 全然変じゃない!」
「それならいいんだけど」
変じゃないと言いながら愛華さんの表情は最初のように険しいものに変わっていた。そしてゆっくり深呼吸した後に俺の目を見て口を開いた。
「あのさ! もしよかったら夏休み一緒に出かけない?」
なるほど、最初からこれが目的だったのか。そして青木さんが突っ込んだのも前置きがなく急に話を切り出したからか。
話は分かったが、果たして俺に愛華さんと出かける時間があるだろうか。誘ってくれたのは嬉しく思うが俺の中で優先すべきは咲だからなぁ。
「うーん、申し訳ないが絶対に愛華さんと出かけられるという保証はできない」
「そっか……」
それから少しの間愛華さんは黙り込んでしまい、二人の間で沈黙が続いたがその沈黙を破ったのは青木さんだった。
「夏休みの予定がまだ分からなくて、その上まだ夏休みがはじまってもないのに今から断るっていうのはどうなの?」
「それはそうですけど、今からこの日と決めてももしかしたらその日に予定が入るかもしれないんですよ」
「それは愛華との約束が先なんだから愛華を優先すべきでしょ?」
「普通はそうだと思いますし、そうするのが道理だと思います。けど俺にはそれができません」
「あなたってクズなの?」
「そう思ってもらって構いませんよ」
愛華さんの言う通り青木さんはいい人なんだな。クズなのとストレートに、それも初対面の本人に直接聞いてくるのには驚いたが。
しかし流石にこれじゃ愛華さんに悪いか。
「愛華さん。すみません。今は何とも言えないのでもし良ければ連絡先交換しませんか? それなら夏休み中に予定を――」
「いいの⁈ ほんとにいいの⁈」
「え? あ、はい」
「やった……! ふふふ~ん♪」
なんだ急に。っというか連絡先交換するだけでこんなに機嫌が良くなるのか? 俺なりにどうしたらいいか結構考えたんだけどそれが全部無駄になったような気分だ。
しかしまぁこれで愛華さんが元気になったならいっか。
この後LINKでお互いに友達登録をして連絡先交換を済ませて別れた。
ちなみに青木さんとも連絡先を交換させられたのは言うまでもない。
何か言おうとした愛華の言葉は青木さんのバシッという強めの鋭いツッコミによって途切れた。
「ちょっと! 急に頭叩かないでよ! あれ本気だったでしょ⁈」
「本気な訳ないでしょ。少し叩いただけじゃない。それに今のはあんたが悪いわよ。……何あの話の入りは」
「何ってそれが聞きたいのにどうして悪いの?」
「どう考えてもおかしいでしょ。もっと色々な話をした上で切り出しなさいよ」
俺と話をする感じだったのに二人は俺に聞こえない声で話し始めた。しかし最初の青木さんの言葉だけは聞こえた。
『本気な訳ないでしょ。少し叩いただけじゃない』
あのツッコミは俺でも本気でやったなと思うくらいに強かったのにそれを少し叩いただけだって…… やっぱり素直に言うこと聞いておいて正解だったな。
「夏休みの予定とか聞いてからにしなさい。いい? 全くどこに急に連絡先聞くバカがいるのよ」
話は終わったらしいが俺の方に体を向き直した愛華さんの表情はとても硬く緊張しているように見え、青木さんに怒られたのか、もう失敗はできないといったような感じにも思えた。
「また変な顔してるよ?」
そんな愛華さんに俺は初めて顔見られた時と同じような言葉をかける。
「え? あ! また変な顔って言ったなー!」
「だってそんな険しい顔してるから」
「してません! 至って普通ですー!」
そう言ってベーっと舌を出す愛華さんの表情はすでにほぐれていた。
「わかった、わかった。それでさっきは何て言おうとしてたの?」
「あー、あれは何でもないの! 気にしないで! それより明日から夏休みだね」
「そうだね。嬉しい限りだ」
「夏休みは何するかもう決まってるの?」
「んー今のところは何も決まってないけど、今年はできるだけ出かけたいなとは思ってる」
普段聞いてあげられないわがままをたくさん聞いて、それを叶えてあげたい。できるだけ咲と一緒にいて、色々な所に連れて行ってたくさんのものを見せてあげたい。
「そうなんだ! 徹くんって極力家から出たくない人なのかなって思ってた」
「それは勝手なイメージだな。また見た目で判断したな?」
「うっ。それにめんどくさがりっぽいし、ずっと寝てそうだから引きこもりでしょ?」
「見た目で判断したのは否定しないんだな。めんどくさがりなのは認めるけど俺は引きこもりじゃない」
「そっか! どこに出かけようと思ってるの?」
「そうだな――」
咲を連れて行くとしたらまだ行ったことのない場所で喜びそうなところがいいよな……
「海とかかな。あっ! 花火大会もいいな」
「え? それって、その、誰かとで、デートするの……?」
「いや? 彼女なんていないからデートじゃないよ」
「へ、へぇ」
今日の愛華さんはどこかおかしい。明らかに動揺し始めたと思ったら突然平然を装い澄まし顔をしている。愛華さんの隣に座っている青木さんはやれやれといった表情をしている。
「何か今日変じゃないか?」
「そんなことないよ! 全然変じゃない!」
「それならいいんだけど」
変じゃないと言いながら愛華さんの表情は最初のように険しいものに変わっていた。そしてゆっくり深呼吸した後に俺の目を見て口を開いた。
「あのさ! もしよかったら夏休み一緒に出かけない?」
なるほど、最初からこれが目的だったのか。そして青木さんが突っ込んだのも前置きがなく急に話を切り出したからか。
話は分かったが、果たして俺に愛華さんと出かける時間があるだろうか。誘ってくれたのは嬉しく思うが俺の中で優先すべきは咲だからなぁ。
「うーん、申し訳ないが絶対に愛華さんと出かけられるという保証はできない」
「そっか……」
それから少しの間愛華さんは黙り込んでしまい、二人の間で沈黙が続いたがその沈黙を破ったのは青木さんだった。
「夏休みの予定がまだ分からなくて、その上まだ夏休みがはじまってもないのに今から断るっていうのはどうなの?」
「それはそうですけど、今からこの日と決めてももしかしたらその日に予定が入るかもしれないんですよ」
「それは愛華との約束が先なんだから愛華を優先すべきでしょ?」
「普通はそうだと思いますし、そうするのが道理だと思います。けど俺にはそれができません」
「あなたってクズなの?」
「そう思ってもらって構いませんよ」
愛華さんの言う通り青木さんはいい人なんだな。クズなのとストレートに、それも初対面の本人に直接聞いてくるのには驚いたが。
しかし流石にこれじゃ愛華さんに悪いか。
「愛華さん。すみません。今は何とも言えないのでもし良ければ連絡先交換しませんか? それなら夏休み中に予定を――」
「いいの⁈ ほんとにいいの⁈」
「え? あ、はい」
「やった……! ふふふ~ん♪」
なんだ急に。っというか連絡先交換するだけでこんなに機嫌が良くなるのか? 俺なりにどうしたらいいか結構考えたんだけどそれが全部無駄になったような気分だ。
しかしまぁこれで愛華さんが元気になったならいっか。
この後LINKでお互いに友達登録をして連絡先交換を済ませて別れた。
ちなみに青木さんとも連絡先を交換させられたのは言うまでもない。
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