幼い妹をもつぼっち、実は世界一。

雀の涙

文字の大きさ
39 / 41

キャンプへ

しおりを挟む
「ほら、もうそろそろお迎えが来るわよ! 早くしなさい」

 キャンプが楽しみでしょうがない、子どものようにはしゃぐ母にそう急かされて私は眠い目を擦りながらようやく動き出す。
 起きるのが遅いと言われたけど考えてみてよ。朝の五時ですよ? 私からすれば頑張って早く起きた方よ。普段こんな時間に起きることなんてないんだから。
 私はパッと着替えてすでに外で待っている家族の所へ荷物を持って行く。

「ののちゃん少しお化粧する時間くらいちゃんと取りなさいよ」

「家族旅行なんだし別にいいでしょ? それに私そんなに化粧しないし」

「いつ誰に会うかなんて分からないわよ? それに誰かが見てるかもしれないじゃない」

「誰も私のことなんか見ないわよ」 

「あら~。ののちゃん可愛いのに」

「親バカも程々にね」

 化粧なんて面倒くさいことしたくない。彼氏がいるわけじゃないし、化粧したところで誰かに見せる意味がない。母はこんなこと言っているが私は誰かに可愛いって言われたことなんてない。

 母とそんな中身のない会話していると迎えの車が家の前にやってきた。白のハイエースワゴン。何これ、ロケ車じゃん。

「おはようございます! 二日間お世話になります」

「おはようございます! いえいえ! 楽しみましょうね」

「斉藤さん、僕途中運転変わりますよ!」

「そんな全然大丈夫ですよ! 任せといてください」

「あの、二日間よろしくお願いします」

「あら! 乃々花ちゃん! 可愛いわね~」

「おう! そんなに堅くならないで大丈夫だからな!」

 親同士、そして私も挨拶し終わったところで車に乗り込む。うちの両親はチャイルドシートを二つ席に設置していた。うちには幼い弟一人しかいないのに。ちなみにその弟は母に抱かれてまだ寝ている。

「ねぇなんで二つ?」

「ああ、後もう二人乗るんだが一人はうちのちびと同じ歳なんだよ。チャイルドシート捨てちゃったみたいだから貸してあげるんだ」

 どうやら今回は三組の家族でキャンプをするみたいね。これは堅くならないでという方が難しいな。
 車に乗ると一番前の席に設置されたチャイルドシートに座って寝ている女の子がいた。めちゃくちゃ可愛い。妹ほしいなぁ。ってかこの子もうちのとあまり変わらないくらいなのかな?

 そうして車に乗って十分くらいして次の家に着いた。車内から外を見ると高身長のイケメンが幼い女の子を抱っこして待っていた。少し化粧しておけばよかったと思ってしまった自分が情けない。モデルだとか芸能人だと言われても納得するほどのイケメンだし、今外で斉藤さん夫婦と挨拶している最中に見せた笑顔なんて大抵の女なら一発で惚れると思う。私が少し緊張して待っていると母から声がかけられる。

「なーに緊張してるの~? まぁ徹君イケメンだもんねぇ」

「うるさ——え?」

 徹君? 今徹君って言った⁈ 徹君ってまさか愛華のじゃないよね……? いや、確かあのくらい身長はあったような気がするし、そもそも私の知り合いで徹って名前の人その人しかいないし。でももしかしたら違うって可能性も……

 夏休み前に会った時のことを思い出そうとしたが、その前に驚いた声が私の耳に届いた。

「……え、青木さん⁈」

 それは答えだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 


「よいしょっと」

 俺はあらゆる準備を終えて咲を抱っこする。今は朝の五時過ぎ、咲が起きるには辛い時間だ。それに加えて昨夜はキャンプだと楽しみすぎて寝る時間がいつもより遅かったからな。
 二人分の荷物を持って玄関を出る。今日から二日間は斉藤さん家と恵さん家にお世話になるので、俺にできることがあれば積極的にしていきたいと思っている。まぁ一番は咲にキャンプを楽しんでもらえるように頑張ることだ。
 外に出て少ししたところで斉藤さん家の車が家の前に止まった。さすがハイエースワゴン、十人乗りの車はやっぱりでかいな。

「おはようございます。二日間よろしくお願いします」

「おはよう! やっぱ咲ちゃんも寝てるよな。あかりも大輝君も寝てるよ」

「おはよ~! 二日間楽しもうね!」

 雄二さんと文香さんに挨拶をしたところで車へ乗り込む。恵さんとはこの間会ったけど旦那さんには会ったことがないのでちゃんと挨拶をしないとな。あ、そういえば大輝君の苗字って何だろう。まぁ聞けばいっか。俺は挨拶すべく、車のドアを開けて車内を見渡すと恵さん、恵さんの旦那さん、そして一番後ろの席には意外な人が座っていた。

「……え、青木さん⁈」

「…………」

 何も答えない青木さんに恵さんが尋ねる。

「あら? ののちゃん徹君とお友達なの?」

「……友達っていうか高校の後輩ってだけよ」

 小さな声でボソボソと答える青木さん。恵さんが俺にどうなの? というような視線を送ってくるのでそれに答える。

「青木さんの言う通りです。最近知り合ったばかりで」

「ふ~ん」

 恵さんは何か企むようなニヤニヤ顔をした。

 俺は少し不機嫌そうな青木さんを横目に咲をチャイルドシートに座らせるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...