そのダンジョンの冒険者はダイバーと呼ばれている。

tobu_neko_kawaii

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ダイバー編

三話 新たな家族

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 世界は残酷だ。

「あの子の両親、ダイバーだったらしいんだけど、この前タワーの中で遺体が見つかったらしいわ」

 両親はダイバーだった。

 少女の家はごくごく一般的な家柄で、朝起きると父と母は決まって『行ってきます』と言って出かけるのが日常だった。

 少女は当然のように、『行ってらっしゃい』と返す。

 そして、夕方前には二人して、『ただいま』と言って帰ってくるから、少女は『お帰り』と言って迎えるのが日常だった。

「タルタロスだそうだ、あの子の両親を襲ったのは」

 その日もいつも通りだった。だけど……夕方になっても夜になっても父も母も帰ってはこなかった。日常なら『ただいま』と言う両親を『お帰り』と迎えることがまだできていない。

 翌日になってようやく家の玄関を叩く音が聞こえて、少女は口にする日常はまったく別の相手に対して虚しく響いた。

 見覚えのあるローブ姿は父の服装に似ていて、同じギルドの人だとすぐに分かった。

「キミの両親の遺体がダンジョン内で見つかった、遺体はこちらで火葬しておいた」

 両親の遺体は酷いものだった、モンスターに食い散らかされてしまって、人としての形を保っていなかったらしい。つまり、それを見せまいと火葬されたわけだ。

 少女の母はノラのダイバーだった。ギルドには特に所属せず、父の入っていたギルドが火葬をしてくれたが、渡された灰に何の感情も湧かないのは当然で。

 少女は父と母以外の血縁者がなく、その日まで3人で生きてきた。

「家賃は半年分貰ってるけど、それ以降はまた払ってもらわないといけないから、そのつもりでいてね。可哀想だと思うけど――」

 少女は仕事を探した。

 だけど、十二歳で女の彼女ができる仕事はこの街には無かった。

 ただただ時間だけが過ぎて、毎日の食事を取るために両親の蓄えを使い、日々の仕事探しはうまくはいかなかった。

 そんなある日、妙な男が仕事があると彼女に話しかけてきた。ようやく仕事につけると喜んだのも束の間、店に着いて待っている時だった。

 現れた女は肌の露出した下着姿で彼女に言う。

「アンタ新人かい?ガキでも男は喜んで腰を振ってくるわ。どんな仕事かって?男に体を売る仕事だよ」

 少女は逃げ出した。彼女には足りなかった覚悟が。

 そして半年という時間と、両親の蓄えが無くなるのはほぼ同時期だった。

「悪いけど、こっちも生活がかかってるんだ……」

 家を無くした少女は衣類や家具を売ったお金で数日を過ごし、とうとうそれも無くなって路上でただただ街を眺めていた。

 体の異臭も空腹も、すでに耐えられる限度を超えた時に声をかける男が現れた。

「家族はいないのかい?」

 少女は横倒しにした体を起して、その男に言葉をかけていた。

「お腹空いたの、お金が無いの、家も無いの、家族もいないの……何も無いの、私の体をあげるから……ご飯を下さい、お金をください、住む場所をください」

 少女は覚悟していた、彼女に出せるのは体だけそれ以外もうなにもない。この男に全てを差し出せば、きっとお腹いっぱいご飯が食べられる。家で暮らして、また『ただいま』と声をかけられる。そうすれば、いつものように『お帰り』を言える日常が戻ってくる。

 男は少女の体をそっと抱きかかえると、その額に額を当てて言った。

「帰る家が無いのかい……ならボクの家に来るといい」

 空腹で虚ろな意識の中、男の話を聞いていた。

「ボクはねノラのダイバーなんだ、父を亡くしてから家族のために戦って、母と妹二人を養っていた……けど、母が、母が死んだんだ。こんな無力なボクだけど、キミは救ってみせるからね、大丈夫、ほら、もう大丈夫だから泣かないで」

 男は眼からはポロポロと涙を流してそう言った。

 少女は男の服を強く握った。自身の日常を取り戻せると確信しながら、男の体温を感じながら、涙を流していた。

 そうして、男の家に着くと小さい女の子が二人で出迎えてくれた。

「お帰りなさい!お兄ちゃん!……あれ?その人は誰?」
「お兄ちゃん、どうしたの?その人」

 二人に男が説明する言葉は、「新しい家族だよ」だけで。

 暖かいご飯が並べられた机で、「さ、お食べよ」という言葉に甘え、一人前を平らげた少女は、そのあと少女たちと三人でお風呂に入り、ようやく人に戻った。

「そうか、ご両親が」

 少女は自分の事を話した。

 男は朦朧としていた時は、とても年上に見えたが、実際にまじまじと見ると、まだ、自身とあまり変わらない歳のように思えた。

「でも安心して、キミの両親の敵はボクが討ったから」

 最初は信じていなかった、だけど、数日後にタルタロスを討伐した栗色の髪の少年ダイバーの噂を聞くと、少女はようやくそれを信じた。

「キミさえ良ければ家族になってくれないかい」

 少女が人に戻った日、彼はそう言って手を伸ばした。

「ボクはカイネルだ、カイネル・レイナルド」

「わ、私は、アリア、アリア・バレンティナ」

「なら、今日からキミは、アリア・レイナルドだね」

 そう言ったカイネルの笑みを、アリアは頬を赤く染めて見つめていた。


「アリアお姉ちゃん!アリアお姉ちゃん!」
「なに!なに?どうしたのネテル?」

 台所で食器を洗っていたアリアは、ネテルの大声に驚いてそう返事する。

 ネテルがアリアの元へやってくると、栗色の髪に小さな櫛を絡ませてやってきたのだ。

「見て!髪に絡まった!」

 満面の笑みでそういう彼女に、アリアは呆れると同時に笑みを浮かべて言う。

「あぁもう、大変なことになっちゃっているね」

 カイネル譲りの底抜けの明るさを持つネテルに、アリアはいつも心で安らぎを得ていた。

「あの……アリア姉さん」
「ん?どうしたのメイネ」

 メイネは顔を半分だけ覗かせてアリアをジッと見ている。まさかと思いアリアが手招きすると、メイネも恐る恐る前に出てきて、その栗色の髪にしっかりと絡みついた櫛を露にした。

「あ~これはまた、凄いね」
「ごめんなさい、姉さん」

 まだ十一歳のメイネも八歳のネテルも、櫛を使い出したのは近々の話で、カイネルはそう言うことに疎く、アリアが一緒に住むようになってから、シラミで頭を掻いていた二人を気にして櫛を買ったのだ。

「待って、ほら、解けた」
「凄い!あっという間だよ!」
「そうだねネテル、姉さん、ありがとう」

 姉さん、二人にそう呼ばれるようになったアリアは、嬉し過ぎて、思わずギュッと二人を抱き締めた。

「ほら、私が髪を梳いてあげるからね」

 一人ずつ順番に櫛で梳いたあと、自身の紺色の髪も櫛で梳いていく。

 それが終わると、再び台所で食器を洗い、それが終わると洗濯、そして買い物へ向かう。

 レイナルド家は財政的に安定しているが、アリアが来るまでは日々でき合いの料理で過していた。しかし、今は彼女が家事特に食事面を担当している。

「あの、これください」
「あいよ」

 買い出しもするし、値切りもする。

 買い物を終えると足早に家に帰りネテルが彼女を迎える。

「お帰りなさい!アリアお姉ちゃん!」
「ただいま!ネテル」

 ネテルはまだ幼いから、家で過ごしているが、メイネは少し前から学校へ通っていて、メイドになるための勉強をしている。

 カイネルはもうずっとタワーから帰って来てない。

 アリアがレイナルド家に来た頃には、何日か顔を見せることもあったが、最近は一切顔を出さなくなっていた。

 ただ、帰ってきていないわけではなく、朝起きるとアリアの頭の隣に、真新しい服が置かれていたり、メイネとネテルの頭の隣にも真新しい服が置かれていたりする。

 そういう日は、決まって地下にあるカイネルの部屋に行くと、中から物音がして扉を叩くと返事が返ってくる。

「はい、どうぞ」
「入ります、兄さん」

 そうして扉を開けると、そこには空間に浮かぶ文字や手書きの地形が目に飛び込んでくる。

「兄さんお帰りなさい」
「ただいまアリア、それで?」

「……いえ、用とかではなく、兄さんの顔が見たいなって」

 アリアの言葉にカイネルは座っているベットの上で、口元に笑みを浮かべると言う。

「アリアだけだよ、こうしてボクの顔を見に来るのは」

 確かに、メイネもネテルも一度もこの部屋で見かけたことはない。

「ふ、二人は兄さんがいないことが当たり前なんですよ、私はまだ兄さんのことあまり知らないし」

 アリアはカイネルが手に持つ魔法の紙と言われるものに注目して、質問をしようと考えついだが、彼女はそこから何を聞こうかを決められないままでいた。

「これはね、宇宙人が残したもので、中にキカイってのが入っていて、立体的な紙として指で色々書き足せるんだよ」
「……なるほどです」

 この時アリアは、カイネルの言葉をあまり理解できていないままで、そっと身を乗り出す。

 ただ、その身に着けている服は首元が緩くて、カイネルは思わず頬を染めてアリアに言う。

「ア、アリア、その服でそんな姿勢にすると、胸が……」

 膨らみたての胸がハッキリとカイネルの視線に入り、アリアは思わずキャッと言う。

「キャッ!ごめんなさい!兄さん」
「いやいや、謝るのはボクだよ、そうだね、母さんのお下がりじゃなくてちゃんとした寝間着を買ってあげないと」

「いいえ、これがいいんです、ただ、これからは少し気を付けます……兄さん、私の胸を見ると男としてどうですか?」

 そんな質問をされたカイネルは思わず、「ど、ど、どうって言われても……」と戸惑いを見せた。

「アリアは女の子なんだから、そ、そういうのは気を付けた方がいいかな」
「はい、気を付けますね」

 と言いつつ、さっきと同じような格好で、彼女は魔法の紙を覗き込んだ。

「……凄いですね、インクも無しに、どうやって……それに空中に浮かんでいるこれ……どうやってるんでしょう」
「さ、さぁ、宇宙人たちの技術はとてもボクらには理解もできないよ」

 そう言うとカイネルは、その手元を動かして空中に浮いた地図を消した。

「ところで、今週末、みんなで買い物にでも行かないかい?」
「え?大丈夫なんですか?その、お仕事とか」

「うん、今は大丈夫、一日だけのんびりしようかなって思ってるんだ」
「嬉しいです!メイネとネテルもきっと喜びますよ!」

「そうだね、二人も喜んでくれるといいかな」

 そうしてカイネルはアリアと話し終わると、再び外へと出かけて行く。

「行ってらっしゃい、兄さん」
「ああ、行ってくるよアリア」

 二人がまだ寝ている時間に帰ってきて、そのまま起きる前に出かけるカイネルを見送ると、アリアは少し早いが、朝食の準備をし始めた。

 朝食ができた頃には、メイネとネテルが起きてきて、アリアに言われずとも、一人で顔を洗い髪の毛を梳かす。

「おはようメイネ、ネテル」
「姉さんおはよう」

「おはよんちょすお姉ちゃん」
「……よんちょす」

 恥ずかしそうにそう返すアリアは、カイネルとの週末の買い物の話をする。

「今週末、兄さんが一緒に買い物に行こうって言ってたけど」
「私!お洋服準備してくる!」

「あ、ねぇネテル、週末だよ?」

 部屋に急いで戻るネテルにアリアがそう言うと、メイネもそっと部屋に戻って行く。

「私も準備してきます」
「メイネまで……」

 いつもは朝食に飛びつく二人が、カイネルの事になるとそれを優先する。

「やっぱり寂しいよね、だからお買い物も楽しみなんだ」

 そう呟いたアリアは、部屋でカイネルに買ってもらった服を着ている二人を見て、自身もしまっておいた真新しい服を引き出しから取り出して、丸い姿見の前で体に当てて見る。

「兄さんと買い物か……」

 微笑むアリアも、久しぶりのカイネルとの休日を楽しみにしていた。


 週末、約束通りカイネルは帰ってきた。

「兄さん今日はどこに行くんです?」
「そうだね、面接かな?」

「め、面接ですか?」

 カイネルの言葉に困惑するアリア。

「メイネ、ネテル?」
「準備できたよお兄ちゃん!」

「似合ってます?兄さん」

 二人は真新しい服をカイネルに見せてクルリと一回転する。

「とても似合ってるよメイネはやっぱり白が似合うね、ネテルは水色が似合ってる」

 二人は嬉しそうに照れて、アリアはそれが羨ましくて自身の身に着けた薄い緑色のワンピースが似合っているのか、カイネルに感想を聞く。

「兄さん……これ、似合ってますか?」
「……似合ってる……でも、ちょっと胸の部分がきつかったかな?」

 確かに、少し胸の辺りに余裕がないとはアリア自身も思っていて、姿見の前で横を向くと思わず声を無くす。

「これ、ち、ち」

 乳首がくっきりと浮かび上がって、思わずアリアは胸元を両手で覆った。

「ど、どうしよう、恥ずかしいよ~」
「中に布を一枚巻いてみるかい?」

 そうカイネルに言われたアリアは、すぐに自室のタンスから布を一枚選んで胸元に挟み込んだ。

「これで気にならないよね?」

 そうしてもう一度カイネルの前に立って似合ってるかを聞こうとするアリアは、徐に胸に触ってくるカイネルに一瞬言葉を失った。

「……に、兄さん?」
「やっぱり女の子は成長が早いんだなぁ~、また新しい服が必要だねアリア」

 嬉しいけど、もう少し女として見て欲しいアリアは、少しだけ不満そうに返事をする。

「そうですね……でも、また胸が成長したらどうします?」
「……ならまた買う必要があるね」

 そんなカイネルとアリアのやり取りを見ていたネテルは、メイネの胸を触って、「小っちゃいね」と言う。

「いいの、私もネテルも育ち盛りまでまだもう少しかかるの」

 実際、二人の母であるマリアは、ある程度の大きさはあった。ただ、アリアと比べると、やはり自身の胸の小ささは気になってしまうメイネは、不安そうに胸元を触ってみた。

 そうして出かける四人は、カイネルを挟んで右にメイネがいて、左にネテルがいる。

 アリアはネテルの左で彼女の手を握っている。

 久しぶりの休み、兄と手を繋ぎたい妹たちを優先させるのはお姉ちゃんとして当然の行動。

 ただ、兄の妹として、偽物であっても兄の妹として。

「着いたよ」

 カイネルがそう言うとアリアは、その場所を視界に入れる。

「ここ、どこですか?」

 白い石造りの建物で、看板にはコトーデ王国領事館と書かれていた。

「領事館?」
「そう、コトーデ王国の外交官がいる場所で、今日はここで面接なんだよ」

「面接?」
「メイネの王宮付きメイド学校の入学面接と、ネテルの初級学年入学面接だよ」

 カイネル満面の笑みに対して、メイネは一気に表情が強張る。

「大丈夫、何とかなる」
「……はい、大丈夫、何とかなる」

 カイネルの言葉を繰り返したメイネは、不思議と体から力が抜ける気がした。

「大丈夫!ネテルも大丈夫だよ!」

 最初から元気なネテルは、全く動揺していない様子で、アリアも少しホッとする。

「あの、兄さん、どうして私も?」
「アリアには、二人の母代わりとして、ボクは父代わりとして面接に参加するんだよ」

「母代わりですか……」

 まだ二人の姉になって数ヶ月、不安に思うのも無理はない状況だが、その言葉を口にすると不思議と気が楽になる。

「大丈夫、何とかなる」
「そう、大丈夫だよアリア」

 そうして四人は領事館へと入って行った。


「紹介状をお持ちでしょうか?」
「はい、これでいいですか?」

 カイネルが持ち出した紙に目を通す領事館の職員は、確認を終えると受付の右側の扉へと案内する。

「こちらで少々お待ちください」
「はい」

 そうしてしばらく待つと、中年の男が現れて挨拶をし始める。

「カイネル・レイナルド様、その妹のメイネ・レイナルド様とネテル・レイナルド様……え~ともうお一方は?」
「二人の姉で、ボクの妹のアリア・レイナルドです、彼女は義理の妹で、メイドにはなれないそうですよね?」

 そうカイネルが言うと、男は迷うことなく言う。

「そうですね、保護者様との血縁の無い場合、ご入学はお断りさせていただいてます。王宮付きのメイドとは王家の皆さま方の身辺を世話する者です、つまり、暗殺者等を除外する為の処置です」

「はい、理解してます、だから、今日アリアがここにいるのは、二人の姉として母代わりにとボクが呼びました」
「招致しました」

 そこからは淡々と定文を読むように質問がカイネルとメイネとネテルへ繰り返されて、時々アリアが言葉を付け足す。

「兄さんがいない時、ネテルは掃除もしますし、トイレの掃除もします」

「そうですか……トイレ掃除はしないでいただきたいものです。王宮のトイレは兵士がする決まりですので、その習慣は必要ありません、必要のない習慣はできるだけ覚えないようにしてください」

「それは……どうしてですか?」

 男は眼鏡を外して、それを拭きながら言う。

「いるんですよ、よかれと思いトイレや湯浴み場の掃除をして、王家の方に汚らしいと辞めさせられるメイドが……私としては、それこそ兵士にさせる仕事ではないのですが、王家としては、王や王族の方の伴侶になる可能性のあるメイドに、トイレ掃除などさせられないということでしょう……まったく、自分の尻も拭いたことがない王家の言いそうな事ですね」

 眼鏡をかけ直した男の愚痴に、カイネルは苦笑いを浮かべた。

 アリアは王族の事はあまり知らないが、この時初めて自身の尻を拭かない事実に驚きを表した。

「メイネ様は既にメイド学校へ通っていることから、編入手続き後に入学可能です。ネテル様は来週から王宮付きメイド学校初級科へ入学して下さい」

「はい、ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました」

 アリアは三人と一緒に頭を下げて、そうして面接は終了した。

 領事館から出たメイネは、「緊張した~」とカイネルの手にしがみ付く。

「ね~お兄ちゃん!入学って何?」
「来週からメイネもネテルも学校の寮で過ごすんだよ、メイドになるために勉強しながら同い年の女の子や男の子とお勉強するんだよ」

 そのカイネルの言葉にゆっくりと真顔になるネテル。

「やだよ……何で?何でお勉強しないといけないの?アリアお姉ちゃんお家で一人になっちゃうよ?」

 その言葉にようやくアリアは察してしまう。

「……だ、大丈夫、私は一人じゃないよ兄さんだっているし」

 そう言いつつも、家で一人で帰りを待つ恐怖は、彼女の中ではトラウマで。

「そう、アリアの言う通りだよ、ボクも前より家で過ごすことができるようになったからね」

 そう言われると今度はそれぞれの反応も変わる。

「え~だったら私も家にいたいよ~」
「私もです、兄さん」

「……二人とも兄さんが困ってるよ」

 その様子に笑みを浮かべるカイネルは、ネテルとメイネの頭を撫でながら言う。

「今日はみんなに紹介したい人がいるんだ」

 面接後のおめかしした姿で兄が紹介したい人、そう言われたアリアは思わず胸騒ぎを感じてしまう。

「そこで一緒にお昼も食べようか」
「……はい」


 タワー周辺の街は、外へ向かう程農民や商人の建物が多くなる。

 逆に言うと、内側タワーへ近づくほどダイバーに関係する建物が多くなる。

「私、こんなタワーの近くに来たの初めて!」

 ネテルの言葉にカイネルもアリアも嬉しそうに笑う。

「見て見てネテル!あそこに大きな角があるよ」
「本当だ!大きいな~」

 その角を指さしたカイネルは、「あれはね」と説明する。

「タワーの43層の二階に生息するアルホーンっていうモンスターの角だよ」
「へ~」

 カイネルの知識に関心するアリアは、少しだけ疑問に思ってしまう。

 どうして兄さんは、43層のモンスターなんか知ってるんだろう。

 そう疑問を持ちながらカイネルの後について行くと、ある建物の前で立ち止まる。

 そこは古い酒場を改装したような建物で、看板には【チカミチ】と書かれていた。

「ここは?」
「道具屋でボクがお世話になっている人が、ボクのカワイイ妹たち三人を食事に招待して手料理を振舞いたい、そう言ってたから、今日はここで食事しようか」

 道具屋の店主がと聞いたアリアたちは、鼻の下を伸ばしたおじさんを想像していた。

 しかし、予想に反して店内で待っていた姿は、赤毛で巨乳で、色気を視覚にうったえてくる姿をした美人なお姉さんだった。

「初めまして~お前らがカイネルの妹たちだね!あたしはベルギット・ベルベットってんだ!よろしく!」

 見た目からその口調にギャップを感じてしまう三人に、カイネルは頭を下げる。

「今日はお招きありがとうございます、ベルギットさん」
「堅苦しいのはよしてくれよ!テメーとあたしの仲じゃないか」

 グッと腕でカイネルを引き寄せると、その胸にカイネルの顔が沈む。

「で、でも、礼儀としては……」
「兄貴面だね~いいね!男前がまた上がったね!」

 強引に奥の部屋へカイネルを連れて行くベルギットに、アリアたちは戸惑いつつ後を追う。
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