75 / 95
七章
七章ノ壱『薬学院入院試験』1
しおりを挟む
ホウデンシコウは、結局数年間カイナとカロナの傍にいた。
カイナもカロナも今では頼りになる男手として、色々と彼を頼った。
「長らくここで暮らしてきたが、中々に吾輩にとって心地の良い場となってしまった。だが、もうそろそろロウのところへ近況を報告に行かなくてはだな。カロナ、薬学院……受かるとよいな」
「うん!」
カロナは八歳になり、今年ようやく薬学院の入院試験を受ける時が来た。
そして時を同じくして、ホウデンシコウがロウの元へと向かう決意をし、カロナの薬学院へ入る前にロウに伝えてカイナの元へ必ず帰ることを約束する。だが、カイナは別に一人でも大丈夫だから、としっかりロウにカロナのことを話すことだけを何度も願っていた。
「いい、ホウデンシコウ、ロウにはちゃんと私の事も話してね」
「分かっておる、カイナはもう吾輩にべた惚れだと言っておくさ!はははははは!」
空へと飛びあがるホウデンシコウに手を振るカイナとカロナは、それを見送ると二人だけの日々がまた訪れる。ただ、それはカロナが薬学院へ入院するとなると、再びカイナは一人きりになるだけ。
カイナはカロナが薬学院を受けると言うと、それに反対はしなかったが、ある約束をカロナとすることにした。
「いいカロナ、人の前で狼の姿になってはだめよ」
「どうして?」
「カロナが狼になると驚いて怖がらせてしまうかもしれないから、だから、ハルヤもカロナの前以外では狼に成ったりしないでしょ?」
「うん、ハルヤも師匠とユイナさんに狼に成っちゃだめって言われてた」
「でも、カロナが大切な人、狼の姿になってでも助けたい人が現れた時には、あなたの好きなように行動しなさい」
「大切な人って……友だちとか?」
「それはあなたが決めることよ、学院にいられなくなっても、ジュカクで暮らせなくなっても構わない、そう思える人のためにならね」
これは何度もカイナがカロナに話してきたことだが、狼の姿をさらしても構わない場合に関しては、初めてカロナにカイナは話した。
ホウデンシコウと過ごした日々の中で、カロナは自身の加護の力を制御できるようになっていて、ただ、人を傷つけるためには使ってはいけない、そう彼と約束していた。
「お母さん、一人で寂しくない?」
「ん~気が早いな~カロナ~もう受かった気でいるの?油断したらだめだぞ~」
カイナはそう言ったが、カロナ自身は受からないなどありえないと思っていて、四年間学院で過ごすと分かっているからだろうか、カイナのことを心配せずにはいられないのだ。
「そうだカロナ、今日は早く寝ないとね、明日にはダブハのところへ行かないとだから」
「はい」
その日、カロナは夢を見た、自分が一人で泣いている夢を、そして、カイナがそんな自分を心配して駆け付けてくれると、そこに黒い影がカイナを覆って、泣いているカロナはカイナがその黒い影の中から光に包まれ、大きな白い影がカイナとカロナを抱き上げる夢を見た。
「お父さん!」
バッと布団から起きたカロナは、もう何度も寝起きしているダブハとユイナとハルヤの家の客間という名のカロナの部屋で目を覚ました。
店の入り口から囲炉裏のある居間、その左手のフスマを開けると長い廊下が奥へと伸びている。居間とダブハの私室、ユイナとハルヤの寝室、勉強部屋、その奥がカロナのいる部屋で、その前にはトイレと風呂場がある。
廊下に出たカロナは一人トイレに入って、しばらくして出てくるとユイナが部屋から出てくる。
「おはようカロナ、すぐに朝食の用意するから待っててね」
「おはようございますユイナさん」
部屋へ戻り、鏡台に向かって髪を整えたカロナは、後ろにかかっている入院試験用の正装を手に取る。
それを身に着けたカロナは居間へと向かって行く。居間では起きたばかりのハルヤがいて、カロナの服装を見て目を見開いて傍へと寄ってくる。
「いいな~いいな~!私も受けたいよ~カロナちゃんと同じ学年に入りたいよ!」
「ダメよハルヤ、ちゃんとした規則なんだから」
カロナはハルヤの手を掴んで、満面の笑みで言う。
「私が先に学院で師匠の弟子として一番になるから!だから、ハルヤちゃんは来年の一番を取って二年連続一番を取って師匠に褒めてもらおうね!」
ハルヤは一瞬真顔になって、両手を上げると鼻息を荒くして同意する。
「うん!お父さんが凄い先生だって!一番を取って証明する!カロナちゃん!頑張れ!」
「うん!頑張る!」
朝食を終えたカロナはダブハと二人でジュカク州州都、ケイカに向かい数百人の中で三人が受かるとされる薬学院の入院試験を受けることになる。
ケイカにはマト中、いや、他国からも何名かの少年少女が集まり、飛び抜けた薬学を学ぼうとしていた。
カロナはダブハの手を握って、一瞬自身の力加減を気にする。
「どうかしたかい?緊張するかさすがに――」
「……はい」
二人は街に入ると、ケイカの東に位置する薬学院の敷地へと向かう。そこには、長い行列のがあり、最後尾に二人が並ぼうとすると、一人の教諭がダブハに声をかけた。
「あなたは!当学院客員教諭のダブハ氏ではありませんか!」
「……あ、確かに僕はダブハですが――」
「もしかして、あなたが教育しているという特待生ですか?その子が」
ダブハはカロナを一瞥すると、確かにこの子が僕が教えている子ですよ、そう答えた。
「やはり!並ばなくても構いませんよ、こちらで私が直接」
「いやいや、規則通り、僕もカロナも並んで申請しますよ」
教諭が慌てて対応する中で、カロナの耳に周囲の話す言葉が入ってくる。
カイナもカロナも今では頼りになる男手として、色々と彼を頼った。
「長らくここで暮らしてきたが、中々に吾輩にとって心地の良い場となってしまった。だが、もうそろそろロウのところへ近況を報告に行かなくてはだな。カロナ、薬学院……受かるとよいな」
「うん!」
カロナは八歳になり、今年ようやく薬学院の入院試験を受ける時が来た。
そして時を同じくして、ホウデンシコウがロウの元へと向かう決意をし、カロナの薬学院へ入る前にロウに伝えてカイナの元へ必ず帰ることを約束する。だが、カイナは別に一人でも大丈夫だから、としっかりロウにカロナのことを話すことだけを何度も願っていた。
「いい、ホウデンシコウ、ロウにはちゃんと私の事も話してね」
「分かっておる、カイナはもう吾輩にべた惚れだと言っておくさ!はははははは!」
空へと飛びあがるホウデンシコウに手を振るカイナとカロナは、それを見送ると二人だけの日々がまた訪れる。ただ、それはカロナが薬学院へ入院するとなると、再びカイナは一人きりになるだけ。
カイナはカロナが薬学院を受けると言うと、それに反対はしなかったが、ある約束をカロナとすることにした。
「いいカロナ、人の前で狼の姿になってはだめよ」
「どうして?」
「カロナが狼になると驚いて怖がらせてしまうかもしれないから、だから、ハルヤもカロナの前以外では狼に成ったりしないでしょ?」
「うん、ハルヤも師匠とユイナさんに狼に成っちゃだめって言われてた」
「でも、カロナが大切な人、狼の姿になってでも助けたい人が現れた時には、あなたの好きなように行動しなさい」
「大切な人って……友だちとか?」
「それはあなたが決めることよ、学院にいられなくなっても、ジュカクで暮らせなくなっても構わない、そう思える人のためにならね」
これは何度もカイナがカロナに話してきたことだが、狼の姿をさらしても構わない場合に関しては、初めてカロナにカイナは話した。
ホウデンシコウと過ごした日々の中で、カロナは自身の加護の力を制御できるようになっていて、ただ、人を傷つけるためには使ってはいけない、そう彼と約束していた。
「お母さん、一人で寂しくない?」
「ん~気が早いな~カロナ~もう受かった気でいるの?油断したらだめだぞ~」
カイナはそう言ったが、カロナ自身は受からないなどありえないと思っていて、四年間学院で過ごすと分かっているからだろうか、カイナのことを心配せずにはいられないのだ。
「そうだカロナ、今日は早く寝ないとね、明日にはダブハのところへ行かないとだから」
「はい」
その日、カロナは夢を見た、自分が一人で泣いている夢を、そして、カイナがそんな自分を心配して駆け付けてくれると、そこに黒い影がカイナを覆って、泣いているカロナはカイナがその黒い影の中から光に包まれ、大きな白い影がカイナとカロナを抱き上げる夢を見た。
「お父さん!」
バッと布団から起きたカロナは、もう何度も寝起きしているダブハとユイナとハルヤの家の客間という名のカロナの部屋で目を覚ました。
店の入り口から囲炉裏のある居間、その左手のフスマを開けると長い廊下が奥へと伸びている。居間とダブハの私室、ユイナとハルヤの寝室、勉強部屋、その奥がカロナのいる部屋で、その前にはトイレと風呂場がある。
廊下に出たカロナは一人トイレに入って、しばらくして出てくるとユイナが部屋から出てくる。
「おはようカロナ、すぐに朝食の用意するから待っててね」
「おはようございますユイナさん」
部屋へ戻り、鏡台に向かって髪を整えたカロナは、後ろにかかっている入院試験用の正装を手に取る。
それを身に着けたカロナは居間へと向かって行く。居間では起きたばかりのハルヤがいて、カロナの服装を見て目を見開いて傍へと寄ってくる。
「いいな~いいな~!私も受けたいよ~カロナちゃんと同じ学年に入りたいよ!」
「ダメよハルヤ、ちゃんとした規則なんだから」
カロナはハルヤの手を掴んで、満面の笑みで言う。
「私が先に学院で師匠の弟子として一番になるから!だから、ハルヤちゃんは来年の一番を取って二年連続一番を取って師匠に褒めてもらおうね!」
ハルヤは一瞬真顔になって、両手を上げると鼻息を荒くして同意する。
「うん!お父さんが凄い先生だって!一番を取って証明する!カロナちゃん!頑張れ!」
「うん!頑張る!」
朝食を終えたカロナはダブハと二人でジュカク州州都、ケイカに向かい数百人の中で三人が受かるとされる薬学院の入院試験を受けることになる。
ケイカにはマト中、いや、他国からも何名かの少年少女が集まり、飛び抜けた薬学を学ぼうとしていた。
カロナはダブハの手を握って、一瞬自身の力加減を気にする。
「どうかしたかい?緊張するかさすがに――」
「……はい」
二人は街に入ると、ケイカの東に位置する薬学院の敷地へと向かう。そこには、長い行列のがあり、最後尾に二人が並ぼうとすると、一人の教諭がダブハに声をかけた。
「あなたは!当学院客員教諭のダブハ氏ではありませんか!」
「……あ、確かに僕はダブハですが――」
「もしかして、あなたが教育しているという特待生ですか?その子が」
ダブハはカロナを一瞥すると、確かにこの子が僕が教えている子ですよ、そう答えた。
「やはり!並ばなくても構いませんよ、こちらで私が直接」
「いやいや、規則通り、僕もカロナも並んで申請しますよ」
教諭が慌てて対応する中で、カロナの耳に周囲の話す言葉が入ってくる。
0
あなたにおすすめの小説
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結】お父様の再婚相手は美人様
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
シャルルの父親が子連れと再婚した!
二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。
でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる